学位論文 スナゴケを用いた緑化手法の研究と建築設計への応用

大島, 惇平

pp.1 - 63 , 2016-03-25
内容記述
19世紀の産業革命から発展し続けてきた日本において、その産業活動に起因して公害という概念が生まれ、水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそくなど様々な公害病が生まれた。そして21世紀となった今でも地球温暖化やヒートアイランド現象、ごみ問題、大気汚染、水質汚濁など様々な問題を抱えている。その中で人間と自然との関係性が見直され自然を保護し、取り戻そうという取り組みがある。その一例として緑化が挙げられる。環境改善やアメニティの創出、省エネルギーなどの観点から緑化に対する意識が高まり、植樹や植林、園芸、街路樹、屋上緑化、壁面緑化など様々な形で緑化が行われている。その中で、より人の手による管理、仕組みが必要であること、そして建築物と自然との関わりが深いということから建築物緑化、すなわち屋上緑化、壁面緑化に着目した。本研究では自然と人、自然と建築物との関係を考え、建築物緑化に着目した。また、その上で環境の改善、自然環境を取り戻すことを重視する。自然環境は本来、人の手が入ることなく成立するものである。人の手により新たに自然環境を生み出す場合にも植栽が自生する地域、その環境特性を考慮することは、生み出された後に人の手を離れて本来の自然環境として成り立っために不可欠である。緑化をする上で自然環境を取り戻すためには、日本に自生する植物を使用することが重要だと考えた。そして緑化の現状を調査、考察し、その結果を踏まえて今後の日本における緑化のあり方を提案する。本論の序盤では、緑化における現状を調査、考察した。その結果、緑化が義務化されて10年以上がたち、環境改善やアメニティの創出という本来の目的が薄れ、しなければならないから緑化するという意識になっているのではないか。そして緑化にはコストがかかるため施主にとってそれは余分な支出であり、緑化面積を規定内で最小限におさめる。そのため近年では総合的に緑化面積が下降していると考えた。土壌を必要としないコケ植物であるスナゴケに着目し、コケ植物と日本との関わりについて調査した。本論の中盤では、コスト面、さらに無管理下での生育を目指すためにスナゴケを用いた緑化をする上でどのような素材に対して付着するのか、また付着させる方法を検証し、それを生育状況の違いにより検証した。第1にアクリル素材に対する付着・生育、第2に外装材に対する付着・生育、第3に珪藻土を用いた生育という3つの実験を行った。その結果、全実験を通してスナゴケの自然な付着は見られなかった。しかし、珪藻土を接着剤として用いることでスナゴケを付着させ、生育が見られた。その結果コケ植物を塗るように使用して緑化することができ、今までの緑化手法にはない新たな緑化形態を提案する。その他に以下のことが明らかになった。・基盤に付着せずとも生育可能である。・無遮光よりも遮光したものの方が生育状況は良好である。・蒸発散能力が高く、生育状況が良好だと示すときは直近の降雨に拠る影響も考えられる。・水分が足りなくなると乾燥状態に入るというコケ植物の特性により、期間中最長で13日間降雨がなくとも枯れることがなかった。・付着する対象自体の水はけの悪さは冬であれば乾燥しづらくなり、良い効果をもたらすが、夏は根腐りの原因となり、無管理という条件化では注意しなければならない。そのため素材は多孔質なものが向いていると考えられる。・仮根の機能を失ったとしても生育できる。本論の終盤では、実験によって得られた緑化手法を用いることでどのような緑化が可能になるのか具体的な建築物を対象として提案した。今後の展望としては、日照や風といった様々な自然環境や施工する面の形状や角度がコケ植物の生育にどのような影響を及ぼすのかを調査することが求められる。また、実際に様々な素材に対して施工し、コケ植物がその基盤となる素材に対してどのような影響を及ぼすのか調査する必要がある。
Japan faces various environmental problems such as the global warming, heat island phenomenon, garbage problem, atmospheric pollution and water pollution. Therefore a relationship with human being and nature is reviewed and there is an action to protect nature and regain it. Greening is given as an example. I focused on roof greening and wall greening from the relationship between human being and nature and architecture. The natural environments are originally established without the hand of person entering. It is essential to consider the environmental characteristic that planting leaves the hand of person and be as original nature. Therefore I investigate present of greening and suggest the way of greening in the future Japan. As a result of investigation, a drop of consciousness for greening, high cost and taking a load are connected for drop of greening area. Therefore I focused on Racomitrium canescens which is moss which did not need soil for growth. As a result of experiment, I succeeded in attaching Racontitrium ccmesce-us to a base by using diatomaceous earth as adhesive. Few characteristics that other greening method does not have include the following things. We can construct moss like paint. Moss does not need soil. We can construct for an inclined plane or a curved surface. Construct is possible for existing architecture because load is light. Low cost and construct is easy. I suggested what kind of architecture we can construct greening for based on a greening method that an experiment provided for using a photograph. I was able to suggest unprecedented greening method by this research. Furthermore, I was able to show possibility that became more imminent for people in comparison with current greening method. I hope that the method can be refined by case studies about construction for various faces and natural environments in the future.
首都大学東京, 2016-03-25, 修士(芸術工学)
本文を読む

https://tokyo-metro-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=6547&item_no=1&attribute_id=18&file_no=1

このアイテムのアクセス数:  回

その他の情報