Thesis or Dissertation 機能分担に基づく多目的最適化手法

森田, 聖惇

pp.1 - 101 , 2017-03-25
Description
近年,システムは大規模化・複雑化の傾向にあると同時に,コンピュータパワーの増大やシミュレーション・モデリング等の周辺技術の進歩により,実用的な最適化に対する要求が高まっている。伝統的に,最適化問題は単一目的最適化問題として定式化がなされ,唯一の大域的最適解あるいは準最適解を獲得することが求められてきた。一方,近年では実応用の観点から,単なる最適解の獲得を超えた,意思決定の支援となるような情報を提供するための最適化が求められている。周辺技術を活用した最適化は,多くの解の評価や人間の経験に依存しない解の探索が可能であり,意思決定の支援となることが期待される。最適化の実応用では,しばしば複数の目的を同時に考慮した最適化を行うことが要求される。このような問題は多目的最適化問題と呼ばれる。多目的最適化では,一般に複数の目的はトレードオフの関係にあるため,最適解は一意に定まらず,「他の解に劣らない解」の集合として存在する。伝統的に,多目的最適化問題はユーザーの選好情報を利用することで単一目的最適化問題に変換され,唯一の最適解が求められてきた。しかし,最適化への要求の高まりから,唯一の解を求めるのではなく,複数かつ多様な解集合の獲得が求められている。複数かつ多様な解集合は,目的間のトレードオフ情報や決定変数と目的の依存関係など,意思決定者の支援となる多くの情報を含んでいることが期待される。以上の背景から,本論文では発見的近似解法に基づく多目的最適化手法に着目した。発見的近似解法は解情報と評価値情報のみを探索に用いる最適化手法の枠組みであり,シミュレータや実測データを用いた探索が可能である。そのため,急速に発展する最適化の周辺技術を最大限活用できる枠組みとして着目した。また,多くの発見的近似解法は複数の探索点により探索を行う多点探索型手法である。多点探索型の発見的近似解法を多目的最適化へ応用することで,一度の探索で多様な解集合を獲得する方法は,近年大きな注目を集めている。本論文では,既存の発見的近似解法が構造上の自由度を十分に活用できていない点に着目し,「機能分担」をコンセプトとする新たな探索戦略を提案した。既存の多点探索型発見的近似解法の多くは,探索点を区別することなくすべての探索点を一様に扱う点,および唯一の操作を用いて探索を行う点で共通している。しかし,実際には探索点の状態は探索点ごとに異なるとともに,各操作は利点・欠点を有しており,唯一の操作を用いた探索は性能上の限界が想定される。一方で,発見的近似解法は構造上の高い自由度を有している。機能分担に基づく探索戦略は(a)探索点の状態の判断・分類,(b)要求に特化した複数の操作の使用,から構成される。この戦略を活用することで,発見的近似解法の自由度を最大限活用した優れた最適化手法の構築が期待できる。さらに,本論文では機能分担に基づく探索戦略を多目的最適化問題へ応用し,機能分担に基づく多目的最適化手法を提案した。多目的最適化では,優れた意思決定の支援とするために,「収束性」,「多様性」の双方に優れる解集合の獲得が求められる。機能分担に基づく多目的最適化手法は,「収束性の改善」および「多様性の改善」に特化した操作を用いることで,既存の多目的最適化手法が課題とする「収束性」,「多様性」の双方に優れる解集合の獲得を目指す。本論文の要点は以下の通りである。(1)既存の多目的最適化手法の課題点を指摘した。既存の多目的最適化手法を系統的に分類し,各手法の特性を整理した。既存の多目的最適化手法は,解の収束性・多様性の改善のためのアプローチから「優越関係に基づく手法」,「分割に基づく手法」,「Indicatorに基づく手法」の3つの系統に分類できることを指摘した。さらに,3つの系統に属する手法はそれぞれが利点・欠点を有していることを指摘した。この利点・欠点により,既存の多目的最適化手法は特定の条件下で探索性能が悪化することを指摘した。(2)機能分担に基づく探索戦略を構築した。既存の最適化手法が発見的近似解法の構造上の自由度を十分に活用していない点に着目し,(a)探索点を一様に扱う必要はない,(b)探索に用いる操作を1つに限定する必要はない,ことを踏まえた「機能分担」に基づく探索戦略を構築した。機能分担に基づく探索戦略では,探索点の状態を評価することで,探索点を区別する。さらに,探索点の状態に応じて複数の操作を使い分けることで,唯一の操作のみを用いる従来の発見的近似解法に比べて効率的な探索を期待する。(3)機能分担に基づく多目的最適化手法を提案した。多目的最適化では,収束性と多様性の双方に優れる解集合の獲得が求められる。機能分担に基づく多目的最適化手法は,優越関係に基づく手法では優れた多様性の改善が可能である点,および分割に基づく手法では優れた収束性の改善が可能である点に着目する。機能分担に基づく多目的最適化手法は,探索点の状態を評価し,探索点ごとに上記の手法のどちらを適用すべきかを判断する。機能分担に基づく多目的最適化手法では,上記2つの手法の利点を活用することで,収束性・一様性の双方に優れる解集合の獲得を期待する。(4)機能分担に基づく多目的最適化手法の探索性能を検証した。優越関係に基づく代表的な手法であるSPEA2および分割に基づく代表的な手法であるMOEA/Dとの数値実験による比較を行い,機能分担に基づく多目的最適化手法が上記2つの手法の利点を合わせ持つこと,および優れた探索性能を有することを示した。
首都大学東京, 2017-03-25, 修士(工学)
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