学位論文 静的エラストグラフィにおける緩衝層歪み均一化効果の実験的検証

芳賀, 良

pp.1 - 41 , 2017-03-25
内容記述
超音波画像診断は検査の非侵襲性や検査の容易さなどから医療分野において広く利用されている。エラストグラフィは現在広く用いられている超音波断層法を発展させた組織画像法であり、組織の弾性情報を画像化することができる。組織の弾性情報は、組織間の音響インピーダンスの差を利用する一般的なエコー検査では発見し難い腫瘍組織の検出にきわめて有力な情報であるため、エラストグラフィの発展に対する期待は高い。エラストグラフィは探触子自体で組織を圧縮する静的エラストグラフィと探触子以外の加振装置を用いて組織を振動させる動的エラストグラフィの2種類に分類される。静的エラストグラフィは加振装置が不要なため動的エラストグラフィよりも検査装置が低価格であるという長所を持つ。静的エラストグラフィは主に乳癌の検査に利用されているが、近年、肝臓がんや肩こりの診断などへの応用も進んでおり、更なる発展が期待されている。静的エラストグラフィの原理は、圧縮によって組織に歪みを生じさせ、その歪みを圧縮前後の超音波の反射(エコー)の変位から算出し、弾性情報として画像表示するというものである。圧縮を加えた際に生じる歪みの大きさは組織の弾性率と比例するため、歪みの大きさを明度として画像化することで弾性情報の画像化がなされる。それゆえ、静的エラストグラフィにおいては均一な圧縮によって歪みを生じさせる必要がある。しかし、圧縮機器との接合面に凹凸や曲面を持つ組織では、圧縮による付与歪みが不均一となる。この付与歪みの不均一性が測定誤差に繋がることが静的エラストグラフィの短所として指摘されている。本研究室の先行研究では、付与歪みの不均一性を改善するために圧縮機器と組織の間に緩衝層を挿入する方法を提案した。緩衝層は生体組織に近い硬さを持つ軟質材料片で、圧縮時に上部が圧縮機器、下部が組織に形状的に整合することで圧縮を均一な状態に近づけ、付与歪みを均一化することができる。先行研究では、まずシミュレーションにおいて緩衝層の有効性を示した。さらに圧縮機器の幅が組織ファントムの幅よりも大きいという条件下において、組織ファントムを対象とした歪み分布算出実験を行い、緩衝層の有効性を実験的に示した。また緩衝層の厚さ、ヤング率という緩衝層パラメータが歪み均一化効果に与える影響の調査を行った。しかし、実験装置や試料の都合上、適切な実験条件での実験が困難であったため、実験データ数が少なく緩衝層パラメータと歪み均一化効果の関係を十分に示すことはできなかった。また、実際のエラストグラフィ診断を想定する上では、圧縮機器の幅が組織ファントムの幅よりも大きいという条件は適切でないことが課題であった。本研究では、先行研究よりも緩衝層パラメータの設定値及び実験の試行回数を増やすことで、緩衝層パラメータと歪み均一化効果を信頼性及び再現性高く示す。また、実際のエラストグラフィ診断に近い条件である、圧縮機器の幅が組織ファントムの幅よりも小さいという条件での緩衝層の有効性及び緩衝層パラメータの影響についても示す。本論文は、第1章から第7章で構成される。第1章は序論であり、本研究の背景および目的について述べ、本研究の位置付けを示す。第2章では、エラストグラフィの概要及び本研究で着目した静的エラストグラフィの測定原理について述べる。第3章では、実験に用いる緩衝層及び組織内部エコー取得装置について述べる。第4章では、取得したデータの演算処理を行う歪み算出プログラムについて述べる。第5章では、緩衝層パラメータの影響調査のための組織ファントムを対象とした歪み分布算出実験の方法について述べる。第6章では、実験結果及び考察について述べる。第7章は結論である。本研究で得られた知見を総括するとともに、今後の研究課題について述べる。
首都大学東京, 2017-03-25, 修士(工学)
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