学位論文 磁性ゼオライトと高勾配磁気分離による水質浄化と有価資源回収の研究

菅原, 剛

pp.1 - 132 , 2017-03-25
内容記述
近年の世界人口の増加や急速な生活様式の変化による水環境の悪化により、世界では約9億人が安全な飲料水を確保できていないとされ、深刻な水資源不足が懸念されている。また、適切な水処理施設がないために毎年300万~400万人が死亡している。日本近隣の東南アジア途上国でもアンモニア態窒素や水銀等を含む工場排水による河川や湖沼、内湾への水質汚染が問題視され、安全な水資源の確保は急務である。一方、途上国や新興国の急激な産業発達に伴う資源不足も問題となっている。特に経済性が高く幅広い分野で用いられるレアメタルは、将来に渡っての供給が不安視されている。現在31鉱種のレアメタルの多くがリサイクルされず捨てられるため、資源不足に拍車がかかっている。これらの問題を総合的に打開すべく、本研究において新たな提案を行う。それが、新開発の磁性ゼオライト(Magnetic Zeolite=MZL)と高勾配磁気分離を組み合わせた水質浄化と有価資源回収システムである。ゼオライトは天然にも存在する鉱物で、吸着剤・イオン交換剤・脱臭剤として広く使用され、近年では様々な用途への応用が期待されている材料である。この新処理システムを用いることで、既存の施設より規模の縮小や安価で環境に配慮した浄水処理や、水環境中の微量な有価資源の回収が可能になると考えられる。本研究ではこの新処理システムを、化学的及び物理的観点から検討・評価を行なう。化学的にはMZLを新開発し、有害物質であるアンモニア態窒素や水銀及び銅の除去を試みる。さらにストロンチウムやリチウムをはじめとする有価資源の回収においては、資源が豊富に溶け込んでいる海水の濃度に見立てた吸着性能評価を行う。一方、物理的には、開発したMZLと超電導マグネットを用いた高勾配磁気分離による磁気分離実験を行うことで、溶液からのMZLの固液分離性能を向上させるための検討を行う。本論文は6章から構成されている。第1章では序論として、現在の水処理や有価資源回収における状況について説明し、本研究の意義や目的に関して述べる。また、ゼオライトの従来の知見を概括し、吸着対象としている物質についての性質や概要に関する説明を纏めた。その後、現状の浄水処理システムについて列挙した。第2章では、磁気分離の特徴や原理に関して述べる。本研究では高勾配磁気分離法を採用して実験に取り組んだ為、磁気シーディング方法や他の分離方法との比較を行った。第3章では、作製したMZLの物性及び作製方法を記述している。物性の評価方法の原理について述べ、ゼオライトへの磁性付与メカニズムやMZLの作製方法についても記述した。XRD測定では構造解析を、SQUIDでは質量磁化12[emu/g]を測定した。また、SEMによる磁性ゼオライト表面形状観察や、STEMにより磁性ゼオライトの内部構造元素等を推測するためのEDXによる元素マッピングを行ない、X線回折による試料の結晶構造解析を行うことでゼオライト内部に微細に分布したナノサイズのマグネタイトが生成されていることを確認した。第4章では、MZLの磁気分離性能を評価するために、印加磁場、流速、磁性吸着剤の磁化から磁気分離理論式に基づいて、限界流速と粒子軌道を解析し、実際に磁気分離実験を行うことで磁性吸着剤として磁気分離が可能かを判断した。ここでは、吸着剤の粒径サイズに着目し、MZLの作製行程に加圧とアニール処理を加えることで粒径を大きくし、磁気分離性能の大幅な向上を実現した。その結果、印加磁場2[T]で流速0.3[m/s]の際、磁気分離実験においては98.9%以上の回収率を達成した。第5章では、MZLのそれぞれの陽イオンに対する吸着性能評価を行った。評価方法としては、主にMZLの投入量依存性と吸着等温線測定より効果的に吸着ができたかを判断した。その結果、アニール温度上昇により磁気分離性能は向上するが、陽イオン吸着率は下がることから両者にはトレードオフの関係性があることが判った。また、全ての陽イオンにおいて5分以内で吸着量が飽和することから、高速処理が見込めることが確認できた。特にストロンチウム・ルビジウムイオンに対し効果的な吸着が可能で、ストロンチウム溶液濃度7.8[mg/L]にMZL投入量1000[mg/L]で99%以上の吸着率を、同様にルビジウム溶液濃度0.12[mg/L]ではMZL投入量250[mg/L]で100%の吸着を行うことができた。そして、吸着等温線測定より前者に対する飽和吸着量は20.08[mg/g-MZL]、後者では飽和吸着量65.79[mg/g-MZL]と高濃度でも高い吸着性能を維持できることが推測された。さらに、MZLのイオン交換の特徴を生かし、NaCl溶液に使用済みのMZLを浸すことで有価資源の脱着と再生使用の可能性を探った。その結果、アンモニア態窒素及びルビジウムにおいて10回の再生利用が可能であることが判った。第6章では、第5章までに得た結果についての考察を行い、MZLと高勾配磁気分離を組み合わせた磁気分離システムを検討することで新たな提案を行った。これを適用すれば、浄水処理に至っては従来の急速濾過方式よりも7.2倍速く、緩速濾過方式に至っては216倍もの高速大量処理が可能になることを示した。第7章では、本研究の総括と今後の課題について記述した。以上の研究結果より、この新磁気分離システムにおける水質浄化及び有価資源回収の適用可能性を示唆することができた。
首都大学東京, 2017-03-25, 修士(工学)
本文を読む

https://tokyo-metro-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=6474&item_no=1&attribute_id=18&file_no=1

このアイテムのアクセス数:  回

その他の情報