学位論文 優良解集合探索問題の提案とFirefly Algorithmに基づく優良解集合探索手法の構築

大隅, 竜太

pp.1 - 82 , 2017-03-25
内容記述
近年,システムの大規模化・複雑化,システムの設計・運用・制御や工業製品の性能に対する要求の高度化などを踏まえた,高い実用性を有する新たな最適化問題および最適化手法の構築が重要な課題となっている。例えば,単一目的最適化の実応用としての最短経路探索問題においては,最短経路を与える最適解のみならず,事故や渋滞などの不測の事態を考慮した複数の代替案の提示を要求される場合がある。しかし,従来の単一目的最適化では,唯一の大域的最適解,あるいは準最適解の探索を目標とするため,複数の代替案を提示することは困難である。また,多目的最適化の実応用では,最適設計における設計者の主観的な評価,例えばデザインの評価など,定式化や客観的評価が困難な目的の考慮が要求される場合がある。しかし,従来の多目的最適化では,客観的評価が可能な目的を主として扱っており,定式化や客観的評価が困難な目的の考慮は難しい。このように最適化の実応用に対する要求の高度化から,従来の最適化では十分な対応が困難な要求が発生している。これらの要求を満足するには,使用者の希求水準を満たす,多様な解集合の獲得が有効な手段であると考える。上記の解集合は,例えば不測の事態における代替案となり,従来の単一目的最適化で考慮することが困難な要求を満たすことが期待される。また,使用者の希求水準を満たす,多様な解集合から,定式化や客観的評価が困難な目的も考慮した解を与えることは,従来の多目的最適化で考慮することが困難な要求を満たすことが期待される。ところで,最適化における希求水準は評価値,解相互の性質の違いは決定変数空間上の距離に基づいて評価できる。多峰性の問題には,評価値が優れ,決定変数空間上の距離が離れた複数の局所的最適解を有するケースの存在が経験的に知られており,前段落で述べた解集合との類似性が高い。このような多峰性の問題は,複雑な実システムのモデリングにおいて現れるが,モデリングに制約を与える最適化アルゴリズムの適用を前提とすると,実システムの複雑さを十分に考慮できない。一方,メタヒューリスティクスは直接探索型の最適化アルゴリズムの枠組みであり,実システムをモデリングする際に与える制約が少ないため,実システムのモデリングと最適化アルゴリズムの連携の観点から,メタヒューリスティクスの適用を前提とすることが重要となる。ここで,単一目的最適化問題を対象とした一般的なメタヒューリスティクスは,唯一の大域的最適解,あるいは準最適解を探索することを目標に開発されているため,複数の優れた解集合を探索することには適していない。一方,メタヒューリスティクスの一手法であり,蛍(Firefly)の求愛行動を模擬したFirefly Algorithm は,探索点群が複数に分かれるため,複数の優れた解集合を探索できる。従って, Firefly Algorithm は優良解集合探索問題に対する基本的な性質を有すると考え,着目した。以上を踏まえ,本論文では,単一目的最適化における多峰性の問題をベースとし,評価値が一定以上優れ,かつ解相互の距離が一定以上離れた局所的最適解の集合である優良解集合の探索を目標とした,(1) 優良解集合探索問題の提案を行った。さらに,メタヒューリスティクスの一手法であり,優良解集合探索問題に対して基本的な性質を有するFirefly Algorithm に着目し,(2) Firefly Algorithm に基づく優良解集合探索手法の構築を行った。本論文の要点は以下の通りである。(1) 優良解集合探索問題の提案最適化において,使用者の希求水準は評価値,解相互の性質の違いは決定変数空間上の距離に基づいて評価できると考える。本論文では,単一目的最適化問題をベースに,評価値が一定以上優れ,かつ解相互の距離が一定以上離れた局所的最適解の集合として優良解集合を数学的に定義し,この優良解集合の探索を目標とする優良解集合探索問題を提案した。優良解集合探索問題は,単一目的最適化問題において,解を集合として求める点で新規性を有し,従来の最適化では考慮が困難な要求を満たすことが期待される点に有用性を有している。(2) Firefly Algorithm に基づく優良解集合探索手法の構築本論文では, Firefly Algorithm が有する蛍の求愛行動を模擬した探索機構が,優良解集合の探索に適していることを明らかにした。さらに,Firefly Algorithm をベースに,(a) 蛍のアナロジーに立脚した優良解集合探索手法,(b) 群情報を活用した優良解集合探索手法を提案した。(a)では,Firefly Algorithm が有する蛍のアナロジーを模擬した機構が優良解集合の探索に有効であることを明らかにし,蛍のアナロジーをより強めた優良解集合探索手法を提案した。(b)では,優良解集合を探索する際に複数の群に分かれるFirefly Algorithm の特徴に着目し,群情報の活用によりFirefly Algorithmが優良解集合を探索する上で重要となるパラメータを調整する手法を提案した。さらに,数値実験により,両手法をオリジナルのFirefly Algorithmと比較することで評価した。提案した優良解集合探索問題に対して,(a)はアナロジーに立脚している点,(b)はクラスタに立脚している点が異なり,両手法とも新規性を有する。また,オリジナルのFirefly Algorithm よりも優良解集合を探索する性能が高い点において両手法とも有用性を有する。
首都大学東京, 2017-03-25, 修士(工学)
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