学位論文 もみ殻磁性活性炭と磁気分離による水質浄化の研究

安齋, 達貴

pp.1 - 121 , 2017-03-25
内容記述
近年,難分解性溶存有機物や有害金属などによる水質汚染が世界的に問題視されている。難分解性溶存有機物は塩素消毒中に発ガン性物質であるトリハロメタンの生成能として作用し,また有害金属による環境汚染も発展途上国を中心に国際的な問題になっており,水道水による健康への影響が懸念されている。日本の水道局ではこれらの物質を,高度浄水処理を含めた浄水処理により除去している。しかし,対象物質に合わせて多くの処理工程を必要とすることや,トリハロメタン生成能の除去率が未だ60%程度に留まっているなどの問題があり,浄水処理技術においても更なる発展が必要である。また,本研究で着目する活性炭には有効な吸着作用があることが知られており,主に木炭,ヤシ殻炭,石炭を原料として作られているが,その他の炭素系廃棄物からも同様に効果的な活性炭を作製できる可能性がある。日本では毎年約207万tものもみ殻が発生しているが,その多くが利用されずに処分されている。もみ殻は75%程度の炭素含有率を持ち,これを原料に活性炭を作製できる可能性がある。さらに,もみ殻は豊富なシリカ成分を含んでおり,これにより従来の活性炭では吸着できない物質の吸着効果も期待できる。そこで,本研究では現状廃棄物であるもみ殻の有効利用法を確立するとともに,新たな浄水処理システムの提案を目的として,もみ殻に担磁処理と熱賦活処理を施すことで,もみ殻磁性活性炭(RH-MAC=Rice Hull Magnetic Activated Carbon)を新規作製し,水中からの有害物質除去及び高勾配磁気分離(HGMS=High Gradient Magnetic Separation)処理による固液分離を行った。本論文は,研究内容と結果に基づいて8章で構成する。第1章では,序論として本研究における背景や目的,及び内容について記述する。これに伴い,現状の高度浄水処理を含めた浄水処理技術や,近年の水質汚染の原因である有害物質として難分解性溶存有機物や鉛,ヒ素などについて説明する。また,RH-MACの原料であるもみ殻の特徴についても記述する。第2章では,高勾配磁気分離技術による固液分離の原理や特徴を説明するとともに,常磁性物質や反磁性物質に強磁性を付与する磁気シーディング法について記述する。第3章では,炭素系廃棄物であるもみ殻から新規開発したRH-MACの作製方法及びその物性評価について記述する。RH-MACは,硝酸鉄を含浸させたもみ殻を窒素及び二酸化炭素雰囲気中で熱賦活処理をすることで作製できる。この際の吸着能力の付与原理と磁性付与原理を説明する。RH-MACの物性評価については,SQUID磁化測定,SEM観察,TEM観察,EDSによる元素マッピング,X線回折による構成化合物の同定,粒度分布測定により行った。各種測定により,RH-MACの磁化は作製時の硝酸鉄濃度により調整可能であり,表面には多数のメソ孔を含む細孔が確認でき,内部にはマグネタイトが均一分布することが判明した。質量磁化は2T磁界中で最大22.9Am^2/kgを達成した。第4章では,RH-MACのフミン酸,鉛,ヒ素,水銀,カドミウムに対する吸着性能の評価について記述する。実験方法は,対象物質が含まれる溶液にRH-MACを添加し撹拌吸着させた後,RH-MACを溶液から磁気分離及び濾過し,溶液中の残留物質濃度を分光光度計またはICP-OESにより測定した。各対象物質に関して吸着等温線をつくり,それぞれLangmuirやFreundlichの吸着等温式へのフィッティングを行った。実験結果より,RH-MACは各物質に対して有効な吸着能力を持ち,フミン酸,鉛,ヒ素の吸着量はRH-MACの磁化とトレードオフの関係にあり,水銀,カドミウムの吸着量はRH-MACの磁化に対する依存度は非常に小さいことがわかった。鉛,ヒ素,水銀,カドミウムにおいて,それぞれ2.19mg/g,2.61mg/g,22.Omgtg,1.67mg/gの最大吸着量が得られた。第5章では,磁気分離実験を行う上で必要な条件を確認するためのシミュレーションについて記述する。シミュレーションにはFEMべ一スのソフトウェアCOMSOL Multiphysicsを用い,磁界,流速,粒子追跡の3次元解析を行った。計算結果から,RH-MACは0.5Tの永久磁石を用いたHGMSでは流速0.1m/s以下,超電導マグネットを用いた2TのHGMSでは1m/sでの高速磁気分離が可能であると推測できた。第6章では,RH-MACの磁気分離実験による評価について記述する。磁気装置には,新開発した永久磁石のマグネットドラムと超電導マグネットを用いた。実験方法は,RH-MACを添加した試料水をポンプで磁気装置へ流入させ,排水中に残留したRH-MACの質量を精密測定することで回収率を求めた。永久磁石による実験結果から,通常の磁気分離より磁性線フィルタを用いたHGMSの方が効率的に回収でき,流量230mL/min.で最大99.4%の回収率を達成した。また,超電導マグネットを用いたHGMSでは磁界2T,流速1m/sで最大99.9%の高い回収率を達成した。また,これらの結果は第5章のシミュレーション結果と半定量的に一致することを確認した。第7章では,浄水処理における磁気分離システムの検討について記載する。吸着実験及び磁気分離実験の結果から,RH-MACとHGMSを組み合わせた浄水処理における,最適な有害物質除去システムの仕様を検討した。第8章では,総括として本研究のまとめ及び今後の課題について記述する。本研究を通した実験結果により,RH-MACとHGMSによる新浄水処理システムの適用可能性が十分に示唆された。
首都大学東京, 2017-03-25, 修士(工学)
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