Thesis or Dissertation 二重ベータ崩壊実験DCBAのための3次元飛跡検出器の開発

伊藤, 隆晃

pp.1 - 90 , 2017-03-25
Description
物質は素粒子であるクォークとレプトンから構成されている。ニュートリノもレプトンの一種である。クォークとレプトンの中で、ニュートリノを除くすべての粒子は電荷を持ち、粒子と反粒子の区別がある「ディラック粒子」であると知られているが、ニュートリノだけは電荷を持たないため、粒子と反粒子の区別のない「マヨラナ粒子」である可能性がある。ニュートリノが「マヨラナ粒子」であることを証明する唯一の方法は二重ベータ崩壊を用いた実験である。二重ベータ崩壊には主として次の2つの崩壊過程が考えられている。一つは通常のベータ崩壊が同一原子核内で2回同時に起こり,電子と反電子ニュートリノを2つずつ放出する過程(2νββ)である。もう一つはニュートリノがマヨラナ粒子である場合にのみ起こるニュートリノの放出を伴わないニュートリノレス二重ベータ崩壊(0νββ)とよばれる過程で、反応前後でレプトン数が異なり、標準理論では禁止されている過程となっている。0νββを観測できれば、ニュートリノはマヨラナ粒子であるといえることになり、物質の起源を紐解く大きな鍵になる。2νββは、2つのベータ線(電子)の運動エネルギー和が連続的に分布するのに対し、0νββは、ベータ線の運動エネルギー和は親原子と娘原子の質量差に一致し、一定の値をとるという明確な違いがあるため、この違いから0νββが検出できる。DCBA(Drift Chamber Beta-ray Analyzer)実験は、0νββの探索を目指して、高エネルギー加速器研究機構の富士実験室で行われている二重ベータ崩壊実験である。DCBA では、二重ベータ崩壊核種を含んだソースプレートの左右にドリフトチェンバーを設置することで、崩壊に伴うベータ線を観測し、2本のベータ線の飛跡を3次元で完全に再構成している。これによって、ガンマ線由来のバックグラウンドを大幅に削減できることに加え、2つのベータ線の運動エネルギー和だけでなく各々のベータ線のエネルギーや2つのベータ線間の角相関を測定できるという特徴がある。現在、エネルギー分解能の向上、線源量の増大を目指して、次世代テスト機としてのDCBA-T3の開発が進行中である。DCBA-T3検出器はエネルギー分解能の向上のために、磁場を0.8kGから2.0kGに強化する。これにより、ベータ線の螺旋軌道半径は1/2に縮小し、ガス分子によるベータ線の多重散乱が少なくなることから、エネルギー分解能の向上が見込まれる。一方で、螺旋軌道半径の縮小はデータ点数の減少につながるが、ドリフトチェンバーのワイヤーピッチを6mmから3mmに変更することでそれをカバーする。さらに、イベントレートを増加させるために面積を現在の4倍に拡大する。そのため、読み出しチャンネル数は1チェンバー当たり4倍になり、新たな読み出しシステムの構築が必要とされている。先行研究において、ドリフトチェンバーの動作確認のために、シンチレーターとDCBAT3用ドリフトチェンバー(以下T3チェンバー)の同期をとって、宇宙線の計数率測定が行われた。この時の実験結果では、計数率は、計算値の1/10程度であり、チェンバーガス中に酸素が混入し、ドリフト電子がアノードワイヤー付近に近づく前に吸収されていたと結論づけられた。その結果を踏まえ、対策として、T3チェンバーをガスコンテナで囲み、チェンバーの気密性を高めたうえで、動作試験を行うこととした。本研究では、円筒型比例計数管(Tube chamber)と組み合わせた新しい読み出しシステムの動作確認試験を行い、T3チェンバーで期待される信号の大きさについて見積もりを行った。また、ガスコンテナを用いて気密化したT3チェンバーと新しい読み出しを組み合わせ、宇宙線を用いたT3チェンバーシステムの評価を行った。
首都大学東京, 2017-03-25, 修士(理学)
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