Thesis or Dissertation 作業を対価とする滞在システムを利用する訪日外国人とホスト及び地域との関わり方に関する研究 : 日本におけるWWOOFの事例を中心にして

岡田, 愛

pp.1 - 176 , 2017-03-25
Description
本研究は、作業を対価とする旅行者滞在システム(以下、作業対価型滞在システム)を活用し、「観光」と「労働」が融合したボランティアツーリズムを享受する訪日外国人と、彼らを受け入れるホストや地域に着目し、こうした訪日外国人が訪問地域の課題解決にある役割を果たせるかを論じるものである。近年、日本では観光を用いた地域活性化が盛んに試みられている。特に地方地域において、農業体験やボランティアツーリズムなどのように地域コミュニティと密に接する観光は、多様な外部アクターを受入れる窓口となっており、地域課題解決の糸口としての価値が見出されている(中村、松本、敷田: 2008)。しかし多くの実践において、外部アクターは国内都市部の住民に留まり、近年増加している訪日外国人をも射程に入れた具体的な施策や研究は少なく、地方部の観光を望む訪日外国人と訪日外国人に地域の課題解決の担い手としての役割を期待する地方住民の両者のニーズをすり合わせた新たな観光やこれを支えるシステムが期待されている。こうした背景から、本研究では、ボランティアツーリズムの一つである作業対価型滞在システムに着目する。しかし、従来の研究では、こうしたシステムの利用者であるゲスト(旅行者)やホストの属性やその両者の関係性を論じたものはあるが、地域との関わりや課題解決に関する影響について言及したものはない。そこで本研究では、訪日外国人利用がゲストの7割を占め、日本国内ホストの登録数が最も多い作業対価型滞在システムであるWWOOFを対象に、以下の3点を明らかにすることを目的とする。以下を通して、作業対価型滞在システムを活用して地域課題解決を進める可能性や要点について提言する。1)全国のWWOOFホスト自身の「本業」と「地域に資する活動(=地域活動)および、WWOOF利用者(ゲストとホスト)と訪問地域との関わりの有無やその概要について把握する。2)WWOOFを活用するゲスト(以下、WWOOFer)の地域への関わり方を明らかにする。3)地域とWWOOFerの関わりが多様な先進事例にみる活動内容や展開とその要因を明らかにする。本論文は、以下5章で構成される。第1章では、研究の背景と目的、既往研究の整理と論文の構成、調査方法を記した。第2章では、日本におけるWWOOF利用者による地域活動の全体像を把握することを目的とした。第一に、WWOOF受入れを表明している171のホストのホームページ及びプログ等のレビューを行った。結果、ホストは単に外部者との交流享受や、「本業」である自己ビジネスの助けを得るためではなく、地域への国際交流機会の提供といった地域活動にまで幅を広げるホストが確認された。第二に、過去にWWOOFを利用した訪日外国人と、同171のホストを対象にWebアンケートを行った。前者の訪日WWOOFerは、訪問先での体験や地域との関わりの内容について尋ねた。訪日外国人(有効回答数41件)は、約90%が地域住民との交流を期待しており、交流を持ったWWOOFerの約90%が交流内容に満足していた。また地域住民との交流には、ホストの介在が大きな役割を果たしていることがわかった。後者のホストへのアンケート(有効回答数53件)に関しては、約95%が地域活動への関心を持ち、WWOOFerをホストが参加/開催する地域活動にまで応用している層が約70%いることが確認された。さらにWWOOFerの持つバックグラウンドやスキルを強みに、積極的に自己ビジネスおよび地域活動に応用しているホストの存在も約10%存在していた。以上のことから、WWOOF活用に関して、①自己ビジネスマンパワー型、②自己ビジネススキル活用型、③地域活動マンパワー型、④地域活動スキル型の4種類あることがわかった。そこで3章では、WWOOFerと地域住民との交流がより多様にあると考えられる、地域活動にWWOOFを活用している類型③、④に着目し、WWOOFerの活動詳細と、WWOOFerが地域に関わる形を明らかにすることを目的とした。③、④類型のホストがおり、同時期に複数WWOOFerの受入れをしている岐阜県下呂市馬瀬地域の2つのホストの元で、筆者自らWWOOFerとして参与観察(各約2週間)とヒアリング調査を行った。参加型の家づくりや庭づくりのプロジェクトを実施し、不定期にワークショップやアートイベントを開催するホストAさんの元では、WWOOFerは同窓会や地域祭りなど地域のイベントがある際に同行し地域住民と交流をもっていた。またAさんがイベントを開催する際には、WWOOFerは同イベント参加者もしくはイベントスタッフとして、参加する地域住民やイベント運営を補助する地域住民と交流をもっていた。WWOOFerの持つバックグラウンドやスキルを積極的にビジネスと地域活動に活用するB夫妻の元では、WWOOFerは、Aさんの事例同様に、地域イベントへの連れ出し、イベント運営を通して、地域住民との交流をもっていた。加えて、ホストB夫妻が地域の要望や地域住民の持つ課題を把握し、課題に見合うスキルや関心をもつWWOOFerを地域住民に派遣していた。その結果、支援作業を受けた地域住民は、WWOOFerを顔の見える個人として認識し、中には新たな国際交流事業を共同して企画する地域住民も確認された。更に地域住民は支援作業への返礼として、ホストやWWOOFerに対して、野菜や米などの食料及び宿泊地の提供をしており、地域がホストのWWOOF受入をゆるやかに支援する基盤が構築されていた。またWWOOFerがホストとの信頼関係を築き、ホストを通じて友人を持つことで同地域にリピートする事実も確認された。更にWWOOFerが常に滞在していることで、地域内に外国人と交流できるグローバルな空間が生み出され、一部の地域内外住民がホストの場に集っていることが分かった。第4章では、WWOOFerの地域への多様な入り方を実践している先進事例として、B夫妻が発信するWeb上の情報から、現状にいたる訪日外国人の活用展開経緯を明らかにし、各展開時にホストおよび地域や訪日外国人に求められる要素について考察した。活用の展開経緯として、1)「交流享受段階」、2)「交流共有段階」、3)「自己ビジネス活用段階」、4)「地域需要マッチング段階」、5)「地域新規事業開拓段階」の5つ展開を経ていた。ホストは訪日外国人と信頼関係を築き、興味関心やスキルを把握することと同時に、段階が上がるにつれ地域住民の課題や把握し、両者のマッチングを図ることが求められていた。マッチングの恩恵を受ける地域では、ホストに過度な負担を強いることを避け、地域住民自らも無理のない範囲でサポートをするために、物々交換の習慣が地域に浸透し、活発に行われていることが重要であると考えられる。また訪日外国人には、作業を通して地域活動に積極的に関わっていく柔軟性や意思が求められていると推測した。第5章では、総括として、訪日外国人と地域との関わりの面から、作業対価型滞在システムを利用する訪日外国人が訪問地域の課題解決に役割を果たせるかを論じ、以下の3つの要点を示した。それは、①地域活動における作業対価型滞在システムでは、ホストが訪日外国人と地域住民の間に介在し、両者のニーズやスキル・特性を把握し、適したところへ橋渡しをすることが重要となること、②金銭を介さないため地域住民は、橋渡しや作業に対する返礼や訪日外国人の受入サポートを容易に行うことができること、③作業対価型滞在システムそのものは、地域に直接の経済交流を生み出すことはないが、ホストの橋渡し、訪日外国人の作業、地域住民のサポートのサイクルが大きく稼働することで、インバウンド関連事業の萌芽見られ、新たに経済交流また文化交流が創造される可能性があること、である。
首都大学東京, 2017-03-25, 修士(観光科学)
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