Thesis or Dissertation アイマークレコーダを利用した『歩きスマホ』の視線・行動調査 : 立ち止まらないと使用できないスマートフォンとの比較

大谷, 徳

pp.1 - 140 , 2017-03-25
Description
近年,スマートフォンが急速に普及し,『歩きスマホ』という社会問題が表面化している.このような状況をふまえ,海外では歩行中のスマートフォン操作を全面的に禁止・規制する法律や条例が導入された事例がある.日本国内においても法的な対策への意見や動きが見られ始めている.しかしながら,スマートフォンの普及した社会では,移動におけるモバイル地図の需要が増加している.さらに,多様な情報・条件等を付加できるスマートフォン地図の有用性も一般的に認められている.このため観光振興の観点では,『歩きスマホ』への一律な規制がなされると,人々の観光行動(特に移動)に不利益が生じかねない.また,『歩きスマホ』の一律な禁止が妥当か否かの判断や効果的な対策をするためには,実空間での実験調査や利用用途別の実態調査が不足している.このような状況をふまえ,実空間での歩行実験から,地図利用とメール利用の『歩きスマホ』の実態・特徴の検証を試みた.『歩きスマホ』に関わる事故が周辺情報の認識程度に関係するとされていることから,本研究ではアイマークレコーダを用いて歩行実験を行い,視覚データを収集し,『歩きスマホ』の注視行動を検証した.注視行動としては主に,①注視点の分布,②停留点移動速度(注視から注視への視点の移動速度),③視野領域,④注視項目別目視率の4項目に着目した.また,アイマークレコーダで収集したデータを補足するため,被験者の行動を後ろからビデオ撮影した.さらに,注視行動の実態・特徴をより明確化するため,「歩きスマホ防止アプリ」をダウンロードしたスマートフォン(以下,非歩きスマホ)でも同様の歩行実験を行い,比較した.歩行実験を行うにあたり,アイマークレコーダ解析に用いる注視項目の選定を行った.本研究では実空間における注視対象を,1)前方確認,2)スマートフォン注視,3)安全確認,4)周辺景観注視,5)非固形物注視,という5項目に分類して注視項目として選定した.分析はアイマークレコーダ解析ソフトを利用し,はじめに被験者ごとの地図利用とメール利用の歩きスマホの注視行動をそれぞれグラフとして可視化した.次に出力されたそれぞれの注視データを集計し,地図利用とメール利用の歩きスマホの注視行動を比較した.さらに,非歩きスマホでの注視データを地図利用とメール利用別に集計し,歩きスマホと非歩きスマホの比較をそれぞれの利用用途別に行った.歩行実験から得られた注視データを分析した結果,①注視点の分布は,地図利用の歩きスマホの場合は,注視点が集中している領域が視野映像中の中央上部と中央下部等,最低でも2か所に分かれて分布する傾向,視野映像中の上部に注視時間の短い点が広く分布する傾向がみられた.メール利用の歩きスマホの場合は,注視点が視野映像中の中央下部等の1か所に集中する傾向が見られた.②停留点移動速度は,メール利用の歩きスマホより,わずかに地図利用の歩きスマホの方が速く,また,非歩きスマホの場合と比較した結果,地図・メールどちらの用途も歩きスマホの方が速い傾向が認められた.③視野領域を考察するため,停留点座標(上下左右別に分析)と左右方向の停留点移動量に着目した.その結果,停留点座標は地図利用の歩きスマホ方がメール利用の歩きスマホより左右方向に大きいことが認められ,左右方向の停留点移動量も地図利用の歩きスマホ方がメール利用の歩きスマホより大きいことが認められた.また,非歩きスマホの場合と比較した結果,停留点座標の場合,地図利用の比較では歩きスマホの方が非歩きスマホより上下方向に大きいことが認められた.メール利用の比較では歩きスマホの方が非歩きスマホより下方向に大きかった.左右方向の停留点移動量は地図・メールどちらの用途も歩きスマホの方が大きいことが認められた.④注視項目別目視率を考察するため,注視回数の注視項目別頻度を比較した結果,地図利用の歩きスマホとメール利用の歩きスマホ,地図利用の非歩きスマホでは,前方注視の頻度は同程度だがスマートフォン注視の頻度がメール利用の歩きスマホの方が地図利用の歩きスマホより約2倍多く,代わりに地図利用の方が周辺景観注視と非固形物注視の頻度が多くなっていた.また,地図利用の歩きスマホに比べ,非歩きスマホの方がスマートフォン注視の頻度が少なく,その分周辺景観注視の頻度が多くなっていた.本研究では,地図利用とメール利用の実空間における歩きスマホの実態・特徴として,スマートフォンへの注視が周辺情報の認識に大きな影響を与えていることが明らかとなった.また,地図利用とメール利用の歩きスマホにおいて注視行動に明らかな差異がいくつか認められたことから,利用用途で危険度においても差異があることが推測される.そのため,歩きスマホへの対策や規制をするにあたり,スマートフォンの普及した社会の利便性を保つためにも,歩きスマホの用途別実態調査として注視行動の調査が重要であると示唆される.
首都大学東京, 2017-03-25, 修士(観光科学)
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