Thesis or Dissertation 「景観百選」選定後の観光等への活用実態と促進方法に関する研究

中村, 結花

pp.1 - 96 , 2017-03-25
Description
日本では、日本三景、近江八景、諸国名所百景のように、「同類のものをいくつかまとめ、上にある数をつけて、特定の内容をさす言い方」(日本国語大辞典)である名数を冠して名所を示してきた歴史がある。西田(2007)によると元々、風景の定数化とは、風景の威厳付けであり、風景の単純明快な解りやすさを与えるものであった。風景の定数化は、古くから地域の特性を浮きあがらせ、広く普及する有効な手段であった。現代においては、風景の選定は様々な目的でなされているが、観光地づくりにとても大きく付与してきた。1990年代以降、環境の視点、景観の視点が色濃くあらわれ、観光の視点は後退している。また、柴田(1998)によると、市民が風景の共有をすることを目的として、全国で市民公募による百選の選定が多数行われているが、ほとんどが一過性なものに陥ってしまっていると述べている。そこで、本研究ではまとまった研究のされていない1945年以降に選定された百選の選定後の活用に着目し、過去に選定された百選について選定目的の変遷と選定後の活用実態を明らかにする。また、募集から選定までの一連の流れを対象とし、観光のコンテンツとして活用するための仕組みを意図した百選の募集方法について実際の選定事業の中で実証実験として試行した。本研究は、全5章で構成される。第1章では、上述のとおり、研究の背景と目的、既往研究の整理と論文の構成、調査方法を記した。第2章では、過去に選定された百選の選定目的の変遷に着目し、その選定目的の趣旨と選定対象となる景観の特徴を把握した。調査の方法は、景観に関する文献、論文のレビューとインターネット検索により、1945年以降に発表された、○○百選、○○百景など、名数がつけられたもので、風景に関する選定を行う百選を抽出し、96個を対象として分析した。その結果、1945年当初は百選の伝統的な役割をふまえた、観光を意識した総合的なものだったが、1980年以降は環境保全や文化資産などの保全のための啓蒙、周知を意図して実施されていることがわかった。また、対象とする景観を種別にみていくと、1980年代には自然景、文化的景観、建築・土木構造物が出現し、1990年代には伝統遺産が出現している。また、2003年の景観法施行以降、景観の捉え方が人々の営み等を含んだ幅広い捉え方へと変化していると考えられる。総合的な(特に景観を区別しない)景観の選定が全くされていないというわけではないが、選定目的の変遷に伴い、対象とする景観も保全を意図したものが色濃くなっていることがわかった。ただし、観光の視点が後退していると断言できないため、次章にて選定後の活用についてみていく。第3章では、百選の募集、選定、選定後の活用に着目する。そこで、2章で対象とした百選のうち、応募要項等のデータが残っていると考えられる、10年以内に選定された31個の百選を対象とし、選定後の活用について、その実態と課題について調べた。その結果、活用されている百選の活用方法としてはマップ等の作成が多く、選定目的は環境保全や文化資産などの保全のための啓蒙、周知と変化しているが、観光の視点が完全になくなったわけではないということがわかった。また、募集要項に景観を選んだ思いやエピソードを記入する欄があるものや、選定時に区分けして選定されたものを、募集・選定において工夫しているとし、31個のうち14個を抽出した。そのうち、12個が実際に活用まで至っていることがわかった。したがって、“選定して終わり”にならないためには、選定後に活用を考えるのではなく、募集や選定の段階で何らかの工夫をすることが重要であるということが考察できる。さらに、募集かつ選定時に工夫し、実際にマップの作成やツアーの実施等、活用されている百選は3つあった。本研究では募集から選定までの一連の流れを対象とするため、この3つに着目した。その中で、当時の担当者と連絡を取ることができた神奈川県藤沢市と栃木県日光市に半構造化インタビューを行った。その結果、選んだ場所を訪れてもらうためには、風景だけではなく、その場所への思いや体験等のストーリー性が必要だという課題と、シティプロモーションへの活用の可能性が明らかになった。しかし、過去にこのような百選は選定されておらず検証が難しい。そこで、第4章では、景観法施行前の平成13年に八王子八十八景を選定している八王子市にて、市制100周年を記念して新たに選定されることとなった八王子景観100選を研究対象とする。研究方法は、百選の募集から選定までの一連の流れを対象とし、観光のコンテンツとして百選と上手く連動させるための仕組みについて、実際の100選事業として実施された八王子景観100選に実証実験として組み込んだ。本研究ではこの一連の流れを活用戦略モデルとする。新たに選定する100選では、八十八景との違いを出すために応募方式に工夫が必要であり、募集要項に近年の新しい景観概念であるシークエンス景、生活景や八王子の代表的な景観を八王子景と名付け、それぞれ応募を誘導する例示を示した。例示を示すことで、景観の名称や景観を選んだ理由にストーリー性を含んだ応募が行われることを意図した。例示の効果は八王子八十八景と比較することで検証した。また、応募コメントから八王子景、シークエンス景、生活景を意識しているものや季節や時間を含むものを抽出した。その結果、八十八景で選定された場所のうち、今回応募のあった場所は14ヶ所であり、八十八景にはない多くの景観が集まった。また、八十八景ではほとんどが視対象だが、100選では“○○からの眺め”のように視点場も多く募集があった。さらに、応募コメントで例示を意識していると考えられるものが半数以上抽出できたことから、活用戦略モデルを元に募集を行った効果があることがわかった。第5章では、総括として活用するための選定プロセスの可能性と課題を考察した。
首都大学東京, 2017-03-25, 修士(観光科学)
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