Thesis or Dissertation 先を見越した動作プランニングの発達的変化

美野, 裕佳

pp.1 - 70 , 2017-03-25
Description
先を見越して,初期動作を窮屈にしてでも最終動作を快適にすることを意図して行動することを,「End-state効果に基づく行動」という.本研究では,End-state効果に基づく行動がいつ頃の年齢で獲得されるのかについて検討するため,3つの実験を行った.一般に,多くの先行知見では,End-state効果に基づく行動は6~8歳までに獲得されることが示されている.ところが,ナイフ形玩具を用いた課題(つかんでからナイフを差すまでに机と並行した面での回転を伴う課題)によれば(Jongbloed-Perebroom et al.,2013),End-state効果に基づく行動(親指を前方に向けてナイフを差し込む方法; 順手反応)が,6.7歳で20~50%,10歳であっても60%であった.この結果は,表面的に見れば,ナイフ形玩具課題に含まれる動作に,事前の計画が困難な要素があることを示唆する.しかしながら,先行知見では成人のデータを測定していないため,成人であっても順手反応が60%程度である可能性もある.そこで実験1では,先行知見と同様のナイフ形玩具課題を採用し,6~8歳児・9~10歳児・成人(若年者・高齢者)を対象に検討した.参加者グループ間でEnd-state効果に基づく行動の割合(順手反応)を比較した結果,いずれのグループでも60~70%の生起率であり,グループ間で有意差は見られなかった.すなわち,成人であっても順手反応の生起率は100%ではなく,その生起率をもって発達的変化を見ることができないことが明らかになった.そこで,実験2および実験3では,ナイフ形玩具課題で先を見越した行動の発達的変化を検証するにあたり,どのような課題設定にすべきかを検討する実験を行うこととした.発達の度合いを評価する項目を検討するにあたり,これまでに「End-state効果に基づく行動の阻害要因」として報告されている変数(非利き手の使用,履歴効果による干渉)に着目した.これら2つの阻害要因による影響が成人と子供で違いが見られた場合,これらの阻害要因の抵抗性が発達の度合いをみる新たな指標となることが考えられる.そこで,実験2では成人,実験3では6~8歳児・9~10歳児を対象とし「非利き手の使用」「履歴効果による干渉」の影響を検証した.先行知見および実験1では,ナイフの初期位置を6方向(45°に分割)で検討していたものを,24方向(15°に分割)に増やして検討した.その結果,いずれのグループでも,「非利き手の使用」「履歴効果による干渉」に関して動作選択の切り替わりが起こる位置に違いがみられたが,これらの違いに統計的に有意な差は認められなかった.しかしながら,グラフを概観すると,ナイフの初期位置が,ナイフを差す方向から時計回りに15°~135°回転する位置において,成人とそれ以外の対象グループでは動作選択にパターンの違いがみられた.そこで,ナイフ形玩具課題で発達的変化の検討を行う場合,15°~135°をターゲットに検討を行うことが有用であることが示された.さらに,実験2および実験3では24方向のうち4方向において,参加者が“動作全体として快適度が高い”と思うナイフの操作方法を,主観的に評価してもらった.その操作方法をもとに,快適性に基づく行動の割合を算出した結果,成人および9~10歳児は動作全体として快適度が高いと感じる動作を選ぶ傾向があった.これに対して,6~8歳児は,動作全体として快適度が高いと感じる動作を選ぶ傾向が他の2グループに比べて低かった.この結果から,6~8歳児は,動作全体として快適度が高い行動を選択することが出来ていないことを示しており,行動計画が発達の途上にあることを示唆している.実験2および実験3で得られた2つの成果を総括して,9~10歳児では成人の行動選択パターンと違いが見られるものの,成人と同等の行動計画能力が備わっていることが示された.そこで,今後の検討を行う上では,参加対象を6~8歳児に重点をおき,ナイフの初期位置が,差す方向からの回転角度が15。~135。となる位置にターゲットを絞り検討するのが有用であることが考えられる.
首都大学東京, 2017-03-25, 修士(健康科学)
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