Thesis or Dissertation スポーツ義足と走幅跳フォームの同時最適化シミュレータの構築

村田, 詩織

pp.1 - 99 , 2017-03-25
Description
近年,スポーツ義足を用いた走幅跳競技は健常者の競技成績に近づいており,注目されている一方で,義足を用いた運動に関する研究は非常に少ない.義足は,試作と実験評価を繰り返し行い,試行錯誤的に設計することが一般的である.また,健常者の走幅跳に関しては,理論的な最適踏切角度の導出,砂場への着地動作最適化等が研究されている.しかし義足での走幅跳の競技成績は,義足と跳躍フォームの両方に依存し,それらは相互作用しているため,各々に閉じた設計では競技パフォーマンス最大化を達成することは難しい.本研究では,身体力学系だけでなく,義足の動力学特性についてもモデル化した動力学シミュレータを構築する.また,片脚大腿切断である対象選手を定め,その選手に適合したスポーツ義足と跳躍フォームを運動パフォーマンスが最大となるよう同時に最適化する動力学シミュレータの構築が本研究の目的である.さらに筋の発揮トルクの上限値を大きくすることによって,トレーニング効果をした場合の予測的な跳躍動作や義足形状での跳躍距離を算出できるようなシミュレータを構築することも目指す.本論文の構成は以下のとおりである.第1章では,上記の研究背景,目的および,順動力学シミュレーションや義足に関する研究状況,健常者の走幅跳に関する研究状況について述べた.第2章では,身体力学モデルと義足モデルの構築,運動方程式について記述を行った.身体力学モデルは義足部分以外を対象選手の体格に合致するよう,剛体リンクで構成した.筋特性としてHill Typeの筋モデルの筋の長さ-張力関係,カ-速度関係を関節角度,関節角速度,関節トルクの関係として身体モデルに導入した.また,義足のモデル化として,まず身体モデルとの統合の容易さから剛体リンク義足モデルを利用したが,剛体リンク義足モデルは各リンクが直線であるため,最適化計算後の義足の形状パラメータから実形状を設計することは困難である.したがって,薄板ばねのたわみと荷重の関係式で表される板ばね義足モデルを利用することとした.その板ばね義足モデルの理論について記述している.加えて,実際の義足の反発係数測定も行ったため,その反発係数測定結果のシミュレーションモデルへの反映について述べた.さらに,運動方程式の構築として,一般的なリンク構造の場合の運動方程式を本モデルに拡張する手法について記述を行った.第3章では,第2章で構築した各モデルを用いたシミュレーション方法について述べた.シミュレーション方法として,跳躍動作を生成するための関節角度ノード点,各筋駆動関節に発生させる関節トルクを計算するPD制御,最適化計算として遺伝的アルゴリズムを用いたため,それらの項目についての詳細と,本研究での最適化計算方法と評価指標について述べた.また,シミュレーションの条件についても記述した.第4章ではシミュレーション結果について記述した.剛体リンク義足モデルを用いた最適化計算は実計測運動を再現可能かのみのシミュレーション結果であるが,板ばね義足モデルを利用した最適化計算は跳躍距離を最大となるように計算を行った.板ばね義足モデルでは,初期姿勢を固定しない場合の最適化,初期姿勢を固定する場合の最適化,初期姿勢と初期義足形状を固定する場合の最適化,またトレーニング効果として,義足側の股関節トルクの上限値を高くした場合,健足側の股関節トルクの上限を高くした場合についてそれぞれ最適化計算結果と関節角度,関節トルク,床反力,義足形状の形状係数,義足形状の初期形状との比較を示した.最適化後の義足形状は,実形状と比較すると曲率が一部分で正負が逆転し,逆方向の曲率を持つという結果が得られた.第5章ではシミュレーション結果の考察について述べた.剛体リンク義足モデルを用いた実計測運動を再現するような最適化計算結果はシミュレーションと実測データとの関節角度差の一致度は必ずしも高くはないが,今回のPD制御のような比較的簡便な方法でも,運動パターンを十分に再現可能であると考えられる.板ばね義足モデルでは,特に義足形状と跳躍フォームを最適化した場合と義足形状を最適化せずに跳躍フォームのみ最適化した場合を比較すると,義足形状もフォームと同時に最適化した方が鉛直方向床反力のピークが離地直前となっており,跳躍距離を伸ばす役割を果たしているのではないかと考えられる結果を得た.第6章では本研究のまとめと,今後の展望について述べた.本研究ではスポーツ義足と走幅跳フォームの同時最適化シミュレータを構築した.今後は本シミュレータでは考慮していない義足の強度を確認するための有限要素解析と義足の製作,試験が別研究で進行しているため,今後最適形状の義足の製作,試験と対象選手の実走試験を行い,実用化に向かいたいと考えている.
首都大学東京, 2017-03-25, 修士(工学)
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