Thesis or Dissertation 2種類の積層造形法により作製したTi-6Al-4Vの強度と微視組織

櫻井, 勇也

pp.1 - 112 , 2017-03-25
Description
航空宇宙材料用途を代表に様々な産業で広く利用されるTiは,地殻中の存在量が0.33-0.63at.%と全元素中10番目に大きく,レアメタル(希少金属)と呼ばれる金属元素の中で最大である.その歴史の浅さと高い原料価格にも関わらず,TiおよびTi合金は各種分野で欠かすことのできない役割を今日では果たしている.航空機におけるTi合金使用量は増加傾向にあり,米国Boeing社に最新鋭旅客機であるB-787ではTi合金の構成重量比は15%に達している.Ti合金の持つ鋼の60%程度の密度と鋼より大きな比強度は,CFRP(炭素繊維複合材料)と並んで,近年の航空機の燃費向上をもたらした主な理由である.しかし,Tiは難切削材であり,また溶接性や金型への充満性も悪いこと等から,複雑形状の実現は困難だとされてきた.Tiが持つこのような欠点を解決するために,付加製造による積層造形技術が近年注目されている.従来の除去加工・塑性加工では実現できなかった自由で合理的な設計の実現を可能とし,それは部品の更なる軽量化に直結するため,航空宇宙分野での適用が特に試みられている.付加製造技術を用いることで,複雑形状の実現や軽量化の他にも,歩留まりの悪い切削工程を省略することによる部品製造時の歩留まり向上を期待できること等から,付加製造備品の本格的な利用拡大が今後見込まれる.一般に金属用3Dプリンターと呼ばれる装置は,粉末床溶融結合方式を用いた付加製造装置として定義される.ASTMF2792では付加製造法を7つに分類しており,その中でも粉末床結合方式は,補助用構造材(サポート材)が不要であること,層的に積み重ねるため極めて優れた設計自由度を持つこと,適切なパラメーター設定により高密度を得られるという特徴がある.粉末床結合方式では,均等の厚さで金属粉末を敷きレーザーを照射することで選択的に粉末を溶融・結合させる.3次元CADシステムを用いて作成した3次元モデルを元にしたスライスデータに従って,レーザーないし電子ビームを走査し,層を積み重ねることで立体物を造形する.粉末床結合方式による付加製造法は現在2種類が実用化されていて,熱源としてレーザーを用いる選択的レーザー溶融法(selective laser melting: SLM)と,電子ビームを用いる電子ビーム溶融法(electron beam melting: EBM)とがある.SLMとEBMという2つの方式のどちらがより優れた方式なのかという問いに対し,未だ明確な回答は得られていない.今までの研究からは,双方それぞれに固有のアドバンテージとディスアドバンテージがあり,単純に優劣を判断することができないというのが現状である.SLMで懸念される酸素と窒素のコンタミネーションは,過去の文献によれば,物性に影響を及ぼすほどには大きなものではない.その前提に基づくと,SLM材とEBM材との間に機械的特性の違いが存在する場合,その主因は微視組織の違いである可能性が考えられる.そのため本研究では,代表的なTi合金であるTi-6Al-4VをSLM法とEBM法によって作製した時の組織を比較し相違を明らかにした上で,積層材と従来の圧延焼鈍材において,組織の違いが機械的特性の違いにおよぼす影響を明らかにすることを目的とする.本論文は全6章構成である.第1章は緒言とし,航空宇宙産業におけるTi合金と積層造形技術の現状,Ti-6Al-4V積層材の過去の研究を取り上げた上で,研究目的について記した.第2章は本研究に関連した理論を,Ti-6Al-4V,積層造形技術,走査型電子顕微鏡技術について主に解説した.第3章は実験方法であり,試験片および組織観察用試料の作成手順,試験装置と実験条件について記述した.Ti合金の鏡面仕上げには特別の技術を必要とするため,組織観察用試料の作成方法について特に詳細に記した.強度試験としては室温での引張試験の他に,高温での特性を調べるために450℃引張試験と450℃-400MPaクリープ試験を実施した.比較材として従来の製造法である圧延焼鈍材を用意した.第4章は実験結果である.SLMとEBM積層まま材の微視組織を比較し,両者は針状α相から成る組織をともに呈していたが,針状α相の粒径や旧β粒の形態,α-Widmanstatten組織の有無において違いが見られた.室温引張試験においては,SLM積層まま材がEBM積層まま材を約10%上回る強度を示し,450℃では強度差はさらに広がった.450℃-400MPaクリープ試験では,SLMとEBMとの間にクリープ特性の顕著な差は見られなかったこと,また,溶体化時効熱処理によっては両者ともにクリープ特性が大きく変化しなかったことが明らかとなった.第5章は考察である.IN718など他材料の積層造形材では顕著に見られる異方性がTi-6Al-4V積層材では見られなかったこと,SLMとEBM積層まま材の微視組織の違いが冷却速度の違いに起因するものであること,比較材である圧延焼鈍材やEBM積層まま材と比べてSLM積層まま材の強度が高かった理由について考察を行った.第6章は結言とし,本研究によって得られた結果および知見をまとめた.さらに,本論文を作成するにあたって用いた参考文献および謝辞を記した.
首都大学東京, 2017-03-25, 修士(工学)
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