学位論文 コミュニティサイクルの散策利用特性の分析 : ロンドン Cycle Hire Statistics の利用OD時刻情報からの推計

大越, 優介

2016-03-25
内容記述
自転車は,環境面と健康面から,近年注目が高まっている.中でもコミュニティサイクルは,住民・観光客間わず多くの人が気軽に利用でき,まちづくりとの親和性が高いことから,世界中の都市で導入がすすめられている.観光におけるコミュニティサイクルの活用可能性を把握するに当たり,特に散策的な利用の現状を把握する必要がある.本研究では,利用ODと時刻のみが分かるオープンデータから,散策利用特性を把握することを試みる.散策利用の特性を把握できれば,散策によく使われる経路の景観整備などの都市・交通計画に示唆を与えることが可能である.本研究はロンドンを分析対象として,ロンドン交通局が公開するコミュニティサイクルの利用ODと時刻のオープンデータ「Cycle Hire Statistics」を用いて,主要観光地をふくむ移動と移動距離に対して長時間の利用を行う散策的な利用を抽出し,その発生状況の特性について把握することで,観光利用のポテンシャルに関する知見を得ることを目的とする.具体的には,目的地までの単純移動としての利用よりも長く,利用・返却のサイクルが通勤時とは異なる休日等での長時間利用層に着目し,散策利用の抽出及び特徴把握を行う.本論文は以下の全5章で構成される.第1章では研究の背景と目的,既存研究の整理と論文の構成,分析方法をまとめた.第2章では,ロンドンの自転車利用・政策の状況と「Cycle Hire Statistics」の特徴及び関連施策を整理・把握した.第3章では,「Cycle Hire Statistics」の利用データから高頻度利用ODを抽出し,平日ピーク時と土日・平日オフピーク時それぞれの利用時間の分布を比較した.まず大区画(平日ピークと土日・平日オフピーク,現在のロンドンの行政区域,有名観光地からの500m圏内)を設定し,次に小区画(ロンドン市の統計区域を用い,地理的な分析とともに,経年変化や季節変化といった時間的な変化)に着目して分析した.その後,区画別の利用OD時刻情報から長時間かつ短距離移動を抽出した.そこから土日・平日オフピークに利用の比率が高い区画を抽出し,散策利用の可能性が高い利用の特性を把握した.第3章の分析から,利用が多い区画ペアが中心部・西部間の移動と北部問の移動に多く,特に平日ピーク時はオフィス街(ウォータールー),土日・オフピーク時は中心地・商業街(メイフェア,ソーホー,大英博物館)に集中することがわかった.また,平日ピーク時は短時間利用が多く,土日・オフピーク時は長時間利用が多い傾向があった.実質移動速度では土日・平日オフピークの方が平日ピークよりも遅い傾向にある.季節での利用傾向としてどの年次でも高利用の季節と長時間の季節は夏→春→秋→冬の順番であった.この結果から土日・平日オフピークは平日ピーク時と比べ,長時間短距離での低速移動をしており,この移動には散策利用が含まれる可能性が高い.第4章では,特に小区画単位での利用状況について,平日ピーク時,土日・平日オフピーク時の利用時間分布からクラスター分析によるグルーピングを行い,その中でも距離に比して時間利用が多いグループについて,その特性を把握した.第4章の分析から,クラスター分析からコミュニティサイクルの利用は4パターンに分けられた.1) 中心部での10分以下の利用 (1,224/2,2010D)(推測: 外出先での二次交通利用クラスター) 2) 30分以下の利用 (126/2,2010D)(推測: 初乗り料金のみで利用できる範囲での利用をする自宅から目的地までの交通利用クラスター) 3) 1時間以上の利用 (608/2,2010D) (推測: 長時間短距離の低速利用が多いため散策利用の可能性が高いクラスター) 4) 住宅地から中心地への10分以下の利用 (243/2,2010D)(推測: 通勤・通学の交通利用クラスター)その中でも散策利用の可能性が高い利用(長時間短距離の低速移動)は貸出・返却が同一の区画(特に中心部,オフィス街,北部住宅地)で,1時間以上利用するパターンが特に多かった.区画で散策利用発生場所を分類すると中心地からオフィス街やマーケットを含む中心地内が多く,キングスクロス駅といった国際線のある大規模駅を含む中心地の北部と北部の住宅地間での利用が多いことも把握できた.また,散策利用の可能性が高い(長時間短距離の低速移動)クラスターから,その中のODペア(docking station同士)は,オフィス・学校と商業・観光地といった外出先での移動の際に散策利用が発生している可能性が高く,その過半数が駅を発着のいずれかとしている利用であった.このことから散策利用は自宅からよりも,外出先での行き帰りのいずれかの場合に寄り道をするケースが多い可能性が高いと推測される.第5章では,これらの分析結果を整理することで,散策利用特性を把握した.その結果,散策利用の可能性が高い利用は,土日・平日オフピーク時は平日ピーク時と比べ長時間利用が増え,同区間利用が約2倍になり,実質移動速度は遅くなると判断できる.同区画利用(特に中心部,オフィス街,北部住宅地)が特に多く,駅と北部の住宅地問での利用も多いという空間的特性も把握した.本研究から,コミュニティサイクルの利用時刻OD情報からでは散策利用と断定する抽出は行えなかったが,オフピーク時の長時間短距離の低速利用に着目することで,その可能性が高い利用特性について把握した.本研究を通して,散策利用は1時間以上の利用かつ同区画を発着として発生しているケースが多く,散策利用は出発地周辺で完結しているか,出発地点周辺へ戻ってくるかのどちらかである可能性が高いことが分かった.また,季節面では夏に散策利用が増加する可能性が高く,散策利用発生エリアは大型公園のような場所か中心地内での利用である可能性が高いことから,郊外より都市部での観光利用にポテンシャルを持っていると考えられる.
首都大学東京, 2016-03-25, 修士(都市科学)
本文を読む

https://tokyo-metro-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=3471&item_no=1&attribute_id=18&file_no=1

このアイテムのアクセス数:  回

その他の情報