Thesis or Dissertation 天井操作による領域形成に関する考察及び設計提案

川畑, 友紀子

pp.1 - 115 , 2016-03-25
Description
商業建築によってその利便性を発揮した複合建築は近年、公共、福祉、居住の分野に幅を広げ、異種分野の交流を促す新たな複合建築として注目を集めている。多種多様なプログラムの共存、人々の干渉は肯定的に捉えられ、新たな空間形態が模索されている。一方都市には、既に時間や天候、地形といった場の状態に応じて主体的な活動が共存している空間「公園」が存在する。公園は、豊かな自然や開放的な場所性だけでなく多様な活動が共存できる魅力的な場として多くの人々に親しまれており、近年、建築空間においてもこのような公園的状態を目指した空間が要求される傾向にある。壁により機能が区画された従来の建築形態に対し、壁を撤去し、水平方向の自由度を向上させることで公園的状態の実現を目指したが自由度の向上に伴い、これまで壁や柱が担ってきた建築的境界の効力は軽視されるようになり、建築空間は均質化した。本研究では、多様な活動が共存する公園的空間を理想とし、建築空間への翻訳可能性を検証するため、内部空間の上面を構成する「天井」に着目する。人々の活動の状態をひとつの領域として捉え、内部空間の側面を構成する壁や柱ではなく「天井」の操作により、領域を創出する可能性を見い出す。自由度の追求により均質化した空間を問い直し、設計提案において公園のように領域が共存した空間の提案を目指す。領域の共存を可能にする建築的要素として「天井」に着目し、新たな建築空間の可能性を示すことを目的とする。本論は序章、分析・考察を行った3 つの章と、設計提案をまとめた章、総括としての結章からなる。序章では、研究の背景と目的を述べた。第二章では、領域を形成する建築構成要素として「天井」に着目する経緯、構成要素としての可能性を示す。領域を形成する概念「しきり」を取り上げ、活動領域が共存する公園と近年の建築空間における「しきり」の構造を示し、両者の比較を行った。家具に偏向した近年の建築空間における建築構成要素の効力の低下を指摘した上で、古来より重要視されてきた上部構成材に再度着目することを提案する。近代化により広まった機能的合理主義に基づく内外の構築理論の一致を否定し、分離を推奨することで、上部構成材がこれまで担って来た機能を外的要求に応える機能と内的要求に応える機能に分類し、後者を「天井」の新たな機能として設定した。さらに、天井の変遷を整理することで、これまでの副次的な認識を改め主要な建築構成要素としての可能性を示唆した。第三章では、人類学、建築学、社会学、心理学の分野から天井操作による領域形成の有効性を示す。人類学者であるエドワード・T・ホールは、著書「かくれた次元」において対人関係による潜在的な距離感覚により他の侵害を拒む領域の存在を示した。建築家クリストファー・アレグザンダーは、この潜在的な距離感覚と音の関係に着目し、対人関係と天井高の差異の関係を指摘した。領域を要素の集合体として考察した建築家槙文彦は、場の密度が高い場合、集合体は空間の形によってその質が変化することを示した。また社会学、心理学の分野から空間と行為の関係性の整理を行った。ものの形や状態により行為を誘発するアフォーダンス理論から物質の「面」を構成する素材・テクスチャによる行為の誘発効果、仮想境界面の原理から面の構成により仮想領域を知覚する効果の存在を明らかにした。以上の知見から、天井高の差異による心理的効果、天井形状と領域の質の関係性、天井の平面構成と組成による行為の誘発と境界形成の効果の存在を明らかにし、天井操作による領域形成の有効性を示した。第四章では、天井部分に特徴的な操作が見られた39 事例を対象に作品分析を行うことで天井操作を抽出し、手法化する。天井の面的構成を図式化することで8 の類型を得た。天井の平面操作を抽出し、3 つの「領域の境界を操作する手法」、行為の状態と天井高・形状の関係性から5 つの「領域の性質を操作する手法」に整理した。また面的構成と素材の相関性を指摘し、天井操作による効果を助長する手法として3 つの素材の操作に整理した。最後に、天井と屋根の間の剰余空間について考察し<環境装置><空間>への読替え事例を示し、剰余空間の活用手法とした。第五章では、天井による設計手法のケーススタディとしてオフィス空間の設計を行った。情報の共有・発信のために都市的な床が積層されたビルディングタイプである。効率化故本来の意図に反して均質化した空間に対し、天井操作を用い多様な領域を形成することで様々な活動領域が共存できる公園的状態を創出し、空間として提示することで天井操作における領域形成の有用性を示した。結章では、天井操作を主とした本設計提案において様々な活動が発生・緩衝し合うような多様性をもった空間を実現したことの意義を総括し、多用な機能が複合されていくことが予想されるこれからの建築設計において有効な設計手法であることを示した。
首都大学東京, 2016-03-25, 修士(建築学)
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