学位論文 住み替えと増改築に着目した自らの住環境を変更しやすい都市の研究

安留, 佳佑

pp.1 - 73 , 2016-03-25
内容記述
日本は平成17年から人口の自然増減数が減少傾向に転じ、国立社会保障・人口問題研究所の『日本の将来推計人口』 (平成24年1月推計)によると2048年には1億人を下回ると見込まれている。これに伴い、住宅問題として空き家率の上昇や郊外団地の高齢化などが生じ、拡大した都市をこれからどのようにコンパクトにまとめていくかが早急に解決すべき課題となっている。人口、世帯の減少に伴い住宅の生産数はこれから減少していくと考えられるが、世帯構成はライフステージの段階によって変化し続けるため、一定の住宅需要はこれからも発生し続ける。これまでの我が国では増え続ける人口のために行われた大量な住宅供給がこの住宅需要を外生的に解消してきた。これは、新規建設された住宅が経時的に低所得者層に住み替えられていく現象を経済学的見地からとらえたフィルタリング理論に沿った動きであった。しかし、これから住宅の生産が減少すると予想されるなかで、新規住宅建設に依存した住宅市場のままでは良好な住環境を形成することはできない。このため、既存住宅ストックを活用した住宅市場における循環化、つまり、住み替え、増改築による住宅供給が着目されている。そこで本研究では、住宅需要が発生した世帯の住環境更新手段として住み替え、増改築に着目し、これらの発生要因、また相互の関係性を明らかにすることを目的とする。住宅の需要とそれに適した住宅の供給という2つの条件が満たされたとき、住環境の更新が発生する。前者は世帯側の条件で、世帯構成の変化や就業地の移動が例として挙げられる。後者は住宅側の条件で、例えば世帯に適する広さのような需要に合った住宅が存在する、あるいは新築、増築によって形成することができる必要がある。本研究では世帯側、住宅側双方に着目し、住み替え、増改築の発生要因を多角的に分析する。住み替えについての既往研究として、吉武らは転出率の定義について、ある期間内に発生した転出数から算出する観察値タイプ、居住期間によって転出率を算出する実際値タイプ、また前述2タイプのような取得が困難なデータを用いない転出率の算出手法として居住経過年数分布タイプの計3つの転出率を定義し、実際の住宅地にこれらをあてはめて住み替え傾向を分析した。また宇都らは世帯人員と住宅面積のミスマッチに着目し、広い住宅から狭い住宅へと住み替えを行っている世帯の属性、特徴の把握を、東京都区部で分析を行った。一方、増改築について、藤上らは増築活動を都道府県毎、また東京都区部毎に比較分析を行い、増築による増畳数と持ち家1戸あたりの増畳数の関係から増築活動の活性度合を定量化し、増築活動と新築活動が正の相関を持つことを示した。また堤らは建て替えと増改築の発生要因についてアンケート調査を用いて分析し、建て替えと増改築にそれぞれ異なる発生要因があることを明らかにした。上記のように住み替え、増改築に関するそれぞれの要因分析の研究は多く見られるが、住み替えと増改築の関係性についての研究は見当たらない。 研究内容・方法は次のとおりである。調査地域を東京都市区部に設定し、各市区部の比較によって住み替え、増改築の傾向を分析する。住み替えについてのデータは平成22年国勢調査(以下国調)を、増改築については平成25年住宅・土地統計調査(以下住調)を使用した。国調では各市区部の移動人口数を用いる。5年前(平成17年10月1日)の常住地から移動したか否か、また移動した場合は自市区内、県内他市区町村、県外に分類される。本研究では自市区内移動を住み替えの定義として扱う。つまり、住み替え需要が発生したとき、従前居住地から最も近い距離にある需要に適した住宅へ移動するとし、自市区外に移動した場合は従前居住市区域内に適切な住宅がなかったことを意味する。この住み替えの定義の問題点として、各市区域の面積の大小が自市区内移動人口割合に与える影響が挙げられる。面積が多い市区ほど自市区内移動は起こりやすくなると考えられるので、面積の影響を排除した自市区内移動人口割合を算出する必要がある。住調では平成21年1月以降の増改築・改修工事等が行われた件数を用いる。建物躯体の補強や水廻りの改修は建物要因のみによる増改築なので本研究においては増改築の定義からは除外し、世帯要因も含まれていると考えられる「増築・間取りの変更」数を増改築として扱うこととする。 以上の研究方法を実データに適用し、次の成果を得た。まず、算出した指標を地図上で色分けし、住み替え、増改築が起こりやすい地域を示し、住み替え、増改築の発生割合が高い地域を抽出し、また傾向が高い地域が集塊しているか、など地理的な分布を示した。さらに住み替え、増改築それぞれと各市区部の年齢や世帯構成といった世帯に関する都市指標、建物の構造や所有形態といった建物に関する都市指標との相関を単回帰、重回帰分析によって定量化した。上記の分析結果を踏まえて住み替え、増改築の発生要因、関係性について考察した。
首都大学東京, 2016-03-25, 修士(工学)
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