学位論文 地面と建築の関係性に関する考察及び設計提案 : 「人工土地」に着目して

茅原, 駿

pp.1 - 93 , 2016-03-25
内容記述
建築の多くは物理的遮断を用い、その土地の自然を排除することで都市生活の快適性を確保している。近年の環境問題に対する取り組みや、先の震災を経た現在、建築は自然に対し、より強固な結界を築き自然との距離をおきつつある。建築は地面の上に建てられるものであり、その地面の上に様々な部材の複合体として形作られる。人工土地という言葉があるが建築が自然の地面以外に別の地面を作り出そうとしている例であり、建築や土木分野で第2の地面を生み出してきた。また屋上緑化は地面の上に建てられた建物の上に土と植物を入れ、緑地は必ずしも自然の土の上のものだけでないことを示している。しかし人工土地は余剰空間の利用の難しさから、屋上緑化では緑地のある場所まで昇って行かなければならないという点により、「地面」に着目した設計要素とは言え、自然の中の地面とは連続しているとは言い難い。本研究では様々なスケールの空間や出来事、活動を連続的に受け入れる「地面」として人工土地に着目し、人工的に造り出された「土地」による可能性を再考する。建築計画、設計、意匠に与える影響を分析し、その有効性と可能性を検証することを目的とする。本論文は、上記の研究の背景と目的をまとめた序、「地面」に着目した建築における人工土地の位置づけを行う第1章、人工土地の通史を整理しその特徴と反省を考察する第2章、以上を元に建築作品の分析を行なう第3章、それらから得た知見を元に設計提案を行なう第4章、以上の総括を行なう章から構成される。第1章では、人工土地について論じる前に「地面」と建築の関係性を説明するため地面を建築テーマとして捉えるということが如何なることなのかを示した。 現代建築を対象とし、地面と建築の関係が強く現れているものを収集し、建築的なかたちに着目し事例を分類、整理、観察することで、建築の「地面」に対する7つの態度を見出した。その結果を「地面」と建築の関係性を連続-不連続、融合-分離という座標で整理し、「地面」に着目した設計要素としての人工土地の位置づけを明確にした。第2章では人工土地をめぐる通史を整理し、近代以降、人工土地概念を展開したル・コルビュジエ、日本の初期モダニズムにおいて人工土地に関する態度を掲げたアントニン・レーモンド、吉阪隆正、大高正人を取りあげ、特徴的な建築作品であるユニテ・ダビタシオン、レーモンド自邸、吉阪自邸、坂出人工土地を中心に考察を行った。人工土地を『都市活動の発展のためにそこに造成しなければならない各種の都市施設やオープンスペースとなる構築物』と定義した上で人工土地を成立させる「テクスチャ」、「機能」、「段階的な建設」、「動線」、「構造」の5つの要素をそれぞれの作品から抽出した。さらに、人工土地と関連する思想である「メタボリズム」、「スケルトンインフィル」の特徴や反省点について考察した。加えて前項までで得られた考察とともに、改めて坂出人工土地を再考する。日本において初めて実現した人工土地である「坂出」の実情、利用状況等を整理し、その空間、活動、またそれらの集積としての空間を分析した。以上、4人の建築家の建築作品とそれらに関連する思想から、人工土地の共通要素とその特徴を明らかにした。第3章では前章で挙げた建築家の言説を参考に、現代における「人工土地」を『一層または複数の基盤から構成され、上部に特定の機能、外部空間を有する建築物』と再定義し、それに類する現代建築35事例について作品分析を行った。「人工土地」を用いる「意図」を1)機能、2)環境、3)眺望に大別し、建築の関係性をもとに、それぞれを建築内外への具体的な効果や関係性を整理し、前章で抽出した共通構成要素を参照しながら考察を行った。その上で事例ごとの簡略化した断面形状をもとに6つに類型化し、「意図」とともに整理することで人工土地を成立させる要素を抽出した。第4章では、第2章での人工土地についての考察や反省、第3章で抽出した手法を基にアーティストインレジデンスを主とした、現代における「人工土地」建築を提案した。敷地内外を分断する従来の建築の建て方に対し、人工的に造り出された「土地」を用いることで道路、敷地、建築の関係性を変化させ、敷地内外の活動が様々なスケールを横断し、成立する空間を創出することで人工土地による有効性を示した。結章では、総括と展望を示した。人工土地の理論とともに、その反省を活かした設計提案を通し、人工土地建築の現代における実践を提示することで限定された土地における自然、動物、人、物がスケールを跨ぎながら入り混ざる建築の在り方を明らかにし、その有効性を示した。
首都大学東京, 2016-03-25, 修士(建築学)
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