学位論文 二軸引張りにおける金属箔材の表面あれと延性破壊挙動のその場観察

廣瀬, 雄太郎

pp.1 - 59 , 2016-03-25
内容記述
医療・電子および情報通信をはじめとする様々な分野において,マイクロデバイスの需要が高まっている.これに伴い,従来のマクロスケールにおける塑性加工をマイクロスケールに適用したマイクロ塑性加工が注目されている.しかしながら,主な被加工材である金属箔材では延性破壊の寸法効果を示すことが問題であり,その解明が急務である.金属箔材の延性破壊挙動に関しては,表面あれの寸法効果を考える必要がある.板厚の減少に伴い板厚に対する表面粗さの相対的割合は増加するため,表面粗さは板厚の不均一さとして表れる.また塑性変形の進行に伴い表面粗さは増大するため板厚の不均一さは増加し,くびれの早期発生といった板材と異なる延性破壊挙動を示すと考えられている.これまで延性破壊挙動に及ぼす表面あれの影響を扱った種々の研究が行われてきた.しかしながら成形限界と肌あれ限界の関係や表面あれ除去による成形限界ひずみの向上といった,表面あれと延性破壊挙動の一部の関係性を示すに留まっている.そのため表面あれ進展を起点にした延性破壊に至るまでの過程を詳細に観察した事例はなく,箔材の延性破壊メカニズムは明らかにされていない.このようなくびれの早期発生から延性破壊に至るまでの過程を観察するには,時々刻々に変形する箔材表面性状のその場観察を行う必要がある.また箔材を対象にした事例は単軸引張状態に限られ,マイクロ塑性加工で多く見られる二軸引張状態における研究はない.そこで本研究では,張出し部のその場観察が可能な二軸張出し試験機を開発し,破壊に至るまでの時々刻々の箔材表面性状の変化を観察した.これにより,金属箔材の延性破壊挙動に及ぼす表面あれの影響を明らかにし,金属箔材の延性破壊メカニズムを解明する.本論文は以下の5章から構成されている.第1章の「緒論」では,金属箔材の延性破壊について,表面あれ進展挙動を考慮する必要性を述べる.さらに延性破壊挙動に及ぼす表面あれの影響を取り扱った過去の研究を踏まえて,本研究で行うその場観察の有用性を述べ,本研究の位置づけと目的を明らかにする.第2章の「表面あれその場観察のための小型二軸張出し試験機の開発」では,二軸引張りにおける金属箔材の表面あれおよび延性破壊挙動のその場観察を目的に開発した試験機について,試験機の概要と性能試験結果について述べる.試験機はISO規格にあるMarciniak法をマイクロスケールに適用して設計された二軸張出し試験機であり,小型かつ軽量に設計されている.このため共焦点レーザ顕微鏡の電動ステージ上に設置が可能であり,二軸引張り変形中の箔材張出し部全域をレーザ顕微鏡によってその場観察することができる.板厚50μmの純アルミニウムおよび純銅箔材を対象に性能試験を行い,Marciniak法が金属箔材に適用可能であること,延性破壊および表面あれ進展挙動がその場観察可能であることを示し,試験機が開発目的を達することを確認した.また,同一の試験片からひずみ分布測定と表面あれ進展の観察を同時に実現可能なことを示した.第3章の「供試材および実験方法」では,実験に用いた供試材,実験方法および評価方法について述べる.供試材およびドライビングプレートは2章で用いたものと同様の板厚50μmをもつ種々の金属箔材を用いた.実験方法では,張出し試験の条件,顕微鏡による観察条件について触れた.評価方法に関しては,顕微鏡で取得した画像を用いて行ったひずみ分布の測定および高さプロファイルの取得法と,試験後の箔材を用いた破断面観察法について述べている.第4章の「実験結果および考察」では,延性破壊と表面あれ進展挙動に関する各々のその場観察結果を通して,延性破壊挙動に及ぼす表面あれの影響を示し,延性破壊メカニズムを考察する.延性破壊挙動については,変形の進行に伴って箔材の一部に帯状に変形が集中し,破壊に至る様子が観察された.さらに破断部では粗面化した表面の比較的凹な部分が変形の集中とともに進展していき,破壊に至ることがわかった.純銅箔の場合,帯状の凹部は変形経路によらず最大主ひずみに対して垂直な方向に生じた.凹部の発生時期を示す成形限界ひずみは板材のHillおよびS-R理論の成形限界に比べどの変形経路でも低かった.このため箔材では板材よりも早期に局所的なひずみの集中が生じていた.また破断面のSEM像にはディンプルが見られなかったことからボイドの成長合体以外のメカニズムによって延性破壊していた.最後に表面あれと延性破壊の関係性を調べるため,成形限界ひずみと肌あれ限界の関係性を示した.どの経路も肌あれ限界が成形限界の下方に位置していた.くびれ幅w=15mmおよびw=7.8mmでは,相関しており凹部の成長開始を基点として破壊に至ったと考えられる.w1.0ではその限りではなかった.第5章の「結論」では,得られた成果を踏まえ,今後の展望と課題について述べている.
首都大学東京, 2016-03-25, 修士(工学)
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