Thesis or Dissertation BiS_2系超伝導体RE(O,F)BiS_2における超伝導層元素置換効果

廣井, 貴史

pp.1 - 63 , 2016-03-25
Description
1911年にカマリン・オンネスは、水銀の電気抵抗が液体ヘリウム温度(4.2K)で突然消失することを観測し、超伝導現象を発見した。それ以降、数多くの超伝導体が発見され、超伝導体の応用を目指した研究が世界中で行われてきた。現在では超伝導技術を用いた製品が実用化され始めている。たとえば、医療分野で使われるMRIや磁気特性測定装置SQUIDなどである。最近では、超伝導リニアや、超伝導量子コンピューターなど新技術の実用化を目指した研究も活性化している。よって、超伝導体が将来的に様々な分野で技術革新を巻き起こすだろうことは一目瞭然である。一方で、超伝導体の応用にあたって、低温でなければ超伝導状態が発現しないこと(冷却コスト)が大きな障害となる。そのため、より良い超伝導特性を持ち、超伝導転移温度(T_c)が高い新物質を見つけることが重要であり、多くの研究者の目標である。超伝導探索におけるブレイクスルーは、1986年の銅酸化物系超伝導体の発見である。この物質はCuとOから成る超伝導層と、電気的に絶縁体のブロック層とが積層した層状構造をしており、液体窒素の沸点を超える高いT_cを記録し高温超伝導体と呼ばれている。また、ブロック層を換えることで超伝導特性が変化することや、従来型(電子―格子相互作用による超伝導電子対形成機構)とは異なる超伝導機構を持ち、その新奇性から超伝導フィーバーが巻き起こった。さらに、2006年には鉄系超伝導体が発見された。当初のT_cは5.6Kであったが、元素置換やブロック層を換えることなどで55Kまで上昇し、銅酸化物と並び高温超伝導体と呼ばれている。2012年には、我々の研究室においてBiS_2系超伝導体が発見された。この物質は上記の高温超伝導と同様に、BiS_2超伝導層とブロック層とが積層した層状構造を有している。これまでにブロック層の異なるREO_<1-x>F_xBiS_2 (RE: La, Ce, Pr, Nd, Sm)やBi_4O_4S_3、EuFBiS_2などが見つかり、さらに非従来型の超伝導機構を示す実験結果も報告されている。よって、BiS2系超伝導体の物性を詳細に研究することは、新しい高温超伝導体の創出と非従来型超伝導機構解明において重要である。本研究では、BiS_2系超伝導体の中でも類似の結晶構造の超伝導体が多数存在するREO_<1-x>F_xBiS_2に着目し、各サイトの元素置換によって新物質の発見および物性解明を目指した。特に、結晶構造と超伝導特性の相関を系統的に調べることで、超伝導発現のメカニズムの解明とT_cの向上を目指した。第一章では、超伝導体の歴史およびその基本的な性質について概要を記述し、高温超伝導体についてまとめた。そして、本研究の対象物質系であるBiS2系超伝導体の多様な結晶構造について説明した。また、本研究の主軸と成る元素置換効果の説明として、各元素置換によって期待される物性・結晶構造の変化を記述した。第二章では実験方法を述べている。物質の合成方法および物性評価方法と、用いた測定機器・測定原理を記述した。REO_<1-x>F_xBiS_2(RE = La, Ce, Nd)および元素置換試料は、各原料を組成比に基づき秤量し、混合、ペレット化した試料を石英管中に真空封入し焼成した多結晶体である。得られた試料に対し磁化率測定や電気抵抗率測定、X線回折などを行い、元素置換による結晶構造および物性の変化を評価した。第三章では合成したREO_<1-x>F_xBiS_2(RE: La, Ce, Nd)および元素置換試料の実験結果および考察について述べている。まず、それぞれの試料の測定結果を示し、考察したうえで、超伝導特性と結晶構造の相関を調べた。初めに、最適な合成条件を求めるためNdO_<1-x>F_xBiS_2のF濃度および焼成温度を変化させて合成したところ、F濃度50%、焼成温度800℃の時にT_cが5.4Kと最も高くなることが分かった。また、F濃度を増やすにつれてc軸に一軸的な格子圧縮が生じ、c軸とa軸の比(c/a)がT_cに関与していることが分かった。次に、F濃度を50%に固定したREO_<0.5>F_<0.5>BiS_2(RE: La, Ce, Nd)において、超伝導層を価数が同じでイオン半径の異なる元素で置換することで化学圧力を印加し、結晶構造と超伝導特性の相関を調べた。その結果Sを同族のSeで置換することによって、Nd試料ではT_cの減少とともに不純物が現れることが分かった。一方、Ce試料ではSe濃度30%の時T_c = 2.7K、La試料では50%の時T_c = 3.8Kと異なるSe濃度においてT_cが最も高くなった。これらの実験結果から、SとSeの置換効果は、イオン半径の差とブロック層のサイズと相関し、超伝導特性も影響を受けることが分かった。また、合成した超伝導体の結晶構造をより詳細に調べるため、リートベルト解析を行ったところ、Seは特定のSサイト(超伝導面内のCh1サイト)に選択的に置換されていることがわかった。これらの実験結果より、BiS_2系超伝導体の転移温度の向上には最適なF濃度と、局所的な結晶構造の最適化が重要であることがわかった。第四章では、本研究で得られたBiS_2系超伝導体の超伝導特性と結晶構造の相関についてまとめ、キャリア移動度やキャリア密度が転移温度の変化に関わっていることなど、現時点で考えられるシナリオをいくつか提案した。また今後の研究課題を提示した。
首都大学東京, 2016-03-25, 修士(工学)
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