Thesis or Dissertation Ti添加MOD法GdBa_2Cu_3O_y超伝導薄膜の臨界電流密度特性

久保, 勇人

pp.1 - 80 , 2016-03-25
Description
本研究論文は次世代の超伝導応用で期待されている銅酸化物超伝導体GdBa_2Cu_3O_y (Gd123)を固相反応法及び有機金属堆積法(MOD法)によって作製し、Tiを添加することで磁場中の臨界電流密度特性の向上を試みた研究について論じる。第1章は本研究の序論である。銅酸化物超伝導体は液体窒素温度(-196℃)以上で超伝導を発現するため、各種超伝導応用分野で期待されている。特に、RE(希土類)123系銅酸化物超伝導体は高温中での上部臨界磁場が高いことから、次世代の超伝導線材として多くの研究が行われている。しかし、従来の蒸着法による作製方法は高真空装置やレーザを必要とするため作製コストが非常に高いことなど、工業化するに当たり解決すべき課題がある。また、応用する上で更なる磁場中臨界電流密度特性の向上が求められている。本研究では上述した蒸着法とは異なり、低コストで比較的簡易な作製方法である有機金属堆積法(MOD法)を用い、RE123系銅酸化物超伝導薄膜(REBa_2Cu_3O_y)を作製し、更に人工ピンニングセンタを導入することで磁場中の臨界電流密度特性の向上を試みた。REBa_2Cu_3O_yの中でも磁場特性が高く、RE_<1+x>Ba_<2-x>Cu_3O_yのような固溶体を生成しないGdBa_2Cu_3O_yを研究対象とした。また、RE123系銅酸化物超伝導体のピンニングセンタとして有効とされるBaMO_3(M=Zr, Hf)のMと同族であるTiに着目し、それを添加することで、磁場中臨界電流密度特性の向上を図った。第2章では試料の作製方法に関して記述している。MOD法薄膜にTiを添加することで薄膜の結晶成長を妨げる可能性があるため、まず固相反応法でTi添加Gd123バルク多結晶体を作製した。バルク体試料はGd_2O_3, BaCO_3, CuOを化学量論比で秤量し、TiO_2を添加物として加え、乳鉢で良く混合した後、仮焼成、本焼成、酸素アニールの熱処理を行うことで作製した。そして、バルク体の特性評価(5章で記述)を踏まえてMOD法により、薄膜作製を行った。MOD法とは、有機金属混合溶液を基板に均一に塗布し、熱処理を行うことで、簡便にエピタキシャル成長した3軸配向薄膜を常圧下で成膜出来る薄膜作製方法である。この作製方法では、高真空装置やレーザを用いないため、低コストかつ比較的簡易に試料を作製することが可能である。MOD法で主に利用されているトリフルオロ酢酸(TFA)は熱処理過程でフッ化水素の突沸により、クラックを生じることがあるため、本研究ではフッ素を含まない2-エチルヘキサン酸の金属塩溶液を使用した。第3章では試料の特性評価方法について記述している。作製された試料は、SQUID磁化測定装置、X線回折装置(XRD)、SPring-8、走査型電子顕微鏡(SEM)、光学顕微鏡、電気抵抗率測定装置を用いて評価された。SQUIDでは、磁化の温度依存性と磁化の磁場依存性を測定した。磁化の温度依存性から超伝導転移温度を見積もった。磁化の磁場依存性からは直流磁化法とビーンモデルを用いて、臨界電流密度の磁場・温度依存性を解析した。また、バルク体では粒間と粒内にそれぞれ異なった電流が流れるため、残留磁化法用いて評価した。X線回折装置及びSPring-8の結果から結晶配向性や結晶軸長の変化を調べ、SEM、光学顕微鏡の結果から表面観察及び元素マッピングを調査した。第4章では、バルク体試料の特性評価を述べ、それについて考察している。XRD結果よりBaTiO_3のピークは確認されなかった。更にSPring-8の測定より、Ti添加試料では斜方晶であったGd123が正方晶に近づくことが確認された。Gd123は斜方晶で超伝導を示し、正方晶に近づくにつれて超伝導状態が弱くなる。このため、SPring-8の結果からTi添加によりlow-T_c相が生成されたと考えられる。また、TiはCuO_2層のCuと置換された可能性が高いことが過去の論文から示されている。残留磁化法の粒間・粒内電流密度解析により、Tiを添加することで粒間電流密度特性は4.2 KにおいてJ_c=1180 A/cm^2からJ_c=5630 A/cm^2へと向上した。この結果は、粒間に存在した弱結合を改善したからだと考えられる。SEMの表面観察により、粒間の表面が滑らかになることが確認された。また、粒内電流密度特性もTi添加により4.2 KにおいてJ_c=2.99 MA/cm^2からJ_c=5.37 MA/cm^2へと向上した。第5章では、薄膜試料の特性評価を述べ、それについて考察している。Ti添加によって磁場中J_cが大幅に向上した。77.3 K, 1 Tにおいて無添加試料ではJ_c=0.08 MA/cm^2であるが、Ti 1mol%添加試料はJ_c=0.11 MA/cm^2となった。更に、40 K, 1 Tにおいて無添加試料のJ_c=0.27 MA/cm^2に対してTi 1mol%添加試料のJ_c=0.75 MA/cm^2と3倍以上もの磁場中J_cが得られた。しかし、Tiの過剰添加をすることでJ_cが低下した。本研究において、Tiの最適添加量は1mol%となった。第6章では、薄膜試料に対するピンニング機構の解析について論じている。Tiを添加することでlow T_c層が生成され、低温領域で運動エネルギー相互作用が強くピンニング機構に関係することが確認できた。それにより、Tiと置換した相が温度誘起型ピンニングセンタとして有効に働いていることが考えられる。low T_c層がピンとして作用するピンニング特性と実験結果が定性的に一致した。これにより、Tiを含んだlow T_cピンニングセンタが生成され、低温において有効なピンになることが考えられる。第7章では、総括を述べている。この章では、特性評価とピンニング機構の解析を踏まえて、Ti添加Gd123試料に関する結論を述べている。
首都大学東京, 2016-03-25, 修士(工学)
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