Thesis or Dissertation SAWフィルタを用いたインバータにおけるゲート信号多重化の検証

鈴木, 陽文

pp.1 - 72 , 2016-03-25
Description
近年、高電圧用途の電力変換回路の開発が活発に行われており、高耐圧化とスイッチングリプル低減の両立が可能な、数十から数百個のスイッチングデバイスから構成されるマルチレベルインバータが報告されている。このインバータは、多数のスイッチングデバイスを制御するために多くの信号配線を必要とし、コストと故障率の増加が懸念される。また、インバータの絶縁回路としてフォトカプラが多く使用されているが、スイッチングデバイスを制御するゲート駆動回路の複雑化を生じている。一方、次世代ワイドギャップ半導体は、200 ℃ を超える高い温度環境で動作することができるため、電力配線の短線化により、電力損失や電磁妨害(EMI)を低減することが可能である。しかし、制御回路はSiベースの半導体によって作られるため、動作温度は125 ℃ 以下に制限される。それゆえ、高温動作が可能なワイドギャップ半導体から離して設置しなければならない。したがって、高温動作、電気的絶縁と高い信頼性を備えた新たな伝送システムが求められている。以上の要求に伴い、本論文では、周波数多重通信に基づく新たなゲート駆動回路に適した、表面弾性波(Surface Acoustic Wave,以下SAW)フィルタを設計し、動作検証することを目的とする。SAWフィルタは圧電基板上に櫛型電極を形成することで、電気信号を弾性波として伝搬させ周波数領域でのバンドパス特性が得られる圧電デバイスであり、通信などの分野において幅広く使用されている。SAWフィルタは高温下での動作が可能であり、さらに絶縁性能を有している。また、安価かつ小型であり、信頼性が高いことから、ゲート駆動回路への応用に適している。本提案システムでは、信号配線を1 本に簡素化することを目的とし、各スイッチングデバイスに対応する受信回路として、SAWフィルタを用いることでゲート信号の周波数多重化を行った。スイッチングデバイスを制御回路から分離し、制御信号のみを伝送することができるため、次世代ワイドギャップ半導体の特徴も活かすことができる。加えて、絶縁回路を省略できることから、ゲート駆動回路の単純化も期待できる。本論文では、まず、提案システムに最適なSAWフィルタの設計を行い、SAWフィルタの挿入損失や時間応答波形の特性を実験的に評価した。次に、耐圧試験を行うことで絶縁性能も確認した。さらに、インバータシステムを構築し、提案システムの有効性を検証した。本論文は全5章で構成されている。第1章は序論である。今後発展が期待されるマルチレベルインバータの必要要件と、本提案システムで用いるSAWフィルタが適している理由を述べ、本研究の位置づけおよび論文の構成を示す。第2章はSAWフィルタを用いたインバータ用周波数多重通信システムの構成について述べる。ゲート信号の多重化方法および送受信機の構成について説明する。第3章はSAWフィルタの設計について述べる。最初に本論文で使用する圧電基板と電極構造を説明する。次に、様々な仕様のSAWフィルタを製作し、実験的に挿入損失や時間応答波形を比較することで基礎特性を得た。また、耐圧試験を行い、絶縁性能に関わるパラメータである伝搬路長についての検討を行った。さらに、ハーフブリッジインバータ用に選定したSAWフィルタの評価を行い、遅延時間に関する課題点を洗い出した。以上の結果を踏まえ、新たに最適設計を行ったSAWフィルタを作成し、特性の評価を行った。第4章はインバータの動作検証について述べる。本提提案システムを用いたインバータを構築し、動作特性の評価を行った。遅延時間とSAWフィルタの耐圧が目標値を満たすことを確認し、提案システムの有効性を示した。第5章は結論である。実験結果をまとめ、本提案システムの有効性を確認し、今後の展望を示す。
首都大学東京, 2016-03-25, 修士(工学)
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