Thesis or Dissertation 磁気アルキメデス効果を用いた有価資源回収の基礎研究

松浦, 優也

pp.1 - 68 , 2016-03-25
Description
本論文では近年発見された磁気アルキメデス効果という電磁気的な新しい物理現象を用いた、都市鉱山等からの有価資源回収に関する基礎研究について論じる。第一章は序論である。現在、大きく分けて2つの方法で有価資源の回収がなされている。一つは高熱を用いる乾式製錬、もう一つは水溶液を用いる湿式精錬である。それらは高エネルギーを要すること、薬剤の使用や時間が多くかかること等の問題を抱えている。本研究で用いる磁気アルキメデス効果とは、大きな常磁性をもつ媒質中に物質を分散させ、そこに磁場と磁場勾配をかけることで、物質と媒質の磁化率と密度の差により、物質がある決まった位置に浮上静止するというものである。この特徴をうまく利用すれば、様々な混合物から該当物質のみを選択的に分離・回収できる可能性がある。そこで本研究では、この磁気アルキメデス効果を用いて、省エネルギーで素早く様々な混合物から有価資源を選択的に回収することを検討する。第二章では、磁気アルキメデス効果の原理について述べている。大きな常磁性をもつ媒質中に粒子を分散させ磁場勾配をかけると、粒子には4つの力が働く。粒子に働く鉛直下方向の力は、粒子に働く重力と粒子に働く磁気力の2つである。また、アルキメデスの原理により粒子には鉛直上方向の浮力が2つ働く。その力は粒子が押しのけている媒質に働く重力と磁気力の2つと同じ大きさである。ここで鉛直上方向の力が下方向の力を上回ることにより粒子の浮上条件の式が求まる。さらに、浮上した粒子は上方向と下方向の力がつりあう位置に静止する。また、鉛直方向の力の働きを無視した水平方向の磁気アルキメデス効果の原理についても述べている。第三章では、実験方法と磁気浮上シミュレーション計算手法について述べている。実験で用いる常磁性媒質として、大きな常磁性をもち水に溶けやすい特性を持つ塩化マンガン(II)四水和物の水溶液を選んだ。実験で用いる超伝導マグネットの磁束密度勾配分布と被分離物質や媒質の物性値、第二章で求めた浮上条件式を用いて、被分離物質の浮上位置を理論的に計算した。また、被分離物質が浮上位置に依存するパラメータは密度と磁化率であるが、それらを変化させたときの浮上位置の変化をグラフにした。二つの物質の密度が同じでも磁化率にして4.0×10^<-5>の差があれば、浮上位置にして6mmの差をつけて分離浮上させることが可能である。一方、二つの物質の磁化率が同じでも密度にして1.Og/cm^3の差があれば、浮上位置にして6mmの差をつけて分離浮上させることが可能であり、磁化のわずかな差により、他の技術にはない分離の可能性が示唆された。第四章では、浮上実験について述べている。塩化マンガン(II)水溶液と被分離物質をメスシリンダーに入れ、磁場をかけた超伝導マグネットのボア内にメスシリンダーを挿入しCCDカメラと直角反射プリズムを使って中の様子を観察した。被分離物質は、金、塩化銀、酸化パラジウム、銅、パラジウム、プラチナの6種の金属と、固体有価資源が含まれた廃液を焼成した粉末や電子基板を粉砕したものについて実験を行った。金、塩化銀、酸化パラジウム、銅はそれぞれ違う位置に浮上静止し、パラジウムとプラチナは浮上しなかった。廃液の焼成粉、電子基板粉はさまざまな位置に粒子が浮上したが、電子基板粉では金と同じ位置にのみ浮く黄色っぽい物質を確認した。この物質は金である可能性が非常に高いと思われる。第五章では分離実験結果の考察について述べている。浮上した金属も浮上しなかった金属も理論による計算とほぼ一致した位置に浮上していることが確認できた。また浮上しなかったプラチナとパラジウムを分離するためには、マグネット内への磁性体の挿入により磁束密度勾配をさらに増大させ、プラチナのみを浮上させることなどが考えられた。第六章では高勾配磁気アルキメデス効果による磁気分離性能の向上について述べている。超伝導マグネットボア内への鉄磁性体の挿入によるボア内の磁束密度勾配の変化を磁界シミュレーションソフトにより計算し、プラチナを浮上分離させるのに適した磁性体の配置を考案した。磁性体なしの際のB・dB/dzの最大値は-434.5 T^2/mであるが、シリンダーの周りに薄い鉄を巻くことやシリンダーの下に鉄の円柱を置くことで、B・dB/dzの最大値をプラチナが浮上するのに必要な-1800 T^2/m以上に上昇させることが示された。また、プラチナと他の実験した被分離物質との浮上位置の分解能を10mm以上にすることができた。また、磁性体自体にかかる磁気力を計算し、実際の高勾配磁気アルキメデス効果に応用可能な分離評価システムの形状を検討した。第七章では分離回収システムの検討結果について述べている。ピペットによる吸引や膜の挿入による分離回収、吸水性ポリマーを用いた媒質凝固による分離回収、また、シリンダーに弁をつけることでの連続分離回収システムについての可能性も記している。第八章は本研究の総括であり、実験結果と考察を纏め、さらに磁気アルキメデス効果による有価資源回収の今後の展望について述べている。(1)金属の浮上実験結果より、理論予測通りにパラジウムとプラチナを除いた金属の混合物から磁気アルキメデス効果によって対象の金属のみを選択的に回収できることがわかった。(2)電子基板粉の実験結果より、電子基板の微粉末から金のみを選択的に回収できる可能性が得られた。(3)磁界シミュレーション結果より、マグネット内部に磁性体を挿入することで磁束密度勾配をさらに増大させ、通常の磁気アルキメデス効果では分離できない物質をも分離できる可能性が得られた。
首都大学東京, 2016-03-25, 修士(工学)
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