Thesis or Dissertation 元素組成に基づいたタイプ7普通コンドライトの形成過程

吉岡, 拓真

pp.1 - 78 , 2016-03-25
Description
【序論】初期太陽系にて形成されたとされるコンドライト阻石は岩石学的にタイプ1からタイプ6まで分類でき,その中でも最も一般的なコンドライトである普通コンドライトは熱変成作用の程度によってタイプ3から6に分類される.さらにタイプ6以上に熱変成作用を受けて再結晶したと思われるような阻石の発見により,タイプ7が追加された.このタイプ7普通コンドライトは,これまでは岩石・鉱物学的に特徴付けられてきたが,化学組成による研究は僅かしかない.そのため,タイプ7普通コンドライトが経験したような強い熱変成が化学組成へ及ぼす影響は未だ明確ではない.タイプ7普通コンドライトと同様にタイプ6以上の熱変成を経験した阻石として,母天体上での衝突溶融を経験したコンドライトや,コンドライトに近い化学組成をもつ始原的エコンドライトがある.しかしながら,これまで化学組成の観点においてタイプ7普通コンドライトとこれらの阻石の比較は行われていない.本研究では2つのH7コンドライト(Y-790960,A-880844)と2つのLL7コンドライト(Y-74160,A-880933)の元素組成を求め,強い熱変成による化学組成への影響と各阻石の形成過程を考察した.【実験】阻石試料の断片(約170~320mg)を粉末状にし,その一部を分取して分析を行った.実験手法として,機器中性子放射化分析法(INAA),誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES),誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いた.INAAは京都大学原子炉実験所にて異なる2つの時間で中性子照射を行い,JB-1を比較標準試料として各元素を定量した.ただし,Ni,Se,Au,Irに関してはAllende阻石を用いた.ICP-AESでは主要元素とPの定量を内標準検量線法にて行った.ただし,Pの定量には非スペクトル干渉を補正するためにマトリックスマッチング法を用いた.ICP-MSでは希土類元素とTh,Uを内標準検量線法によって定量した.Smについては同位体希釈法でも定量し,実験操作における試料損失を補正した.白金族元素の測定ではNiS fire assayによる前濃縮を行い,Rhを内標準検量線法で,Rh以外の元素を同位体希釈法で定量した.【結果・考察】4つのタイプ7普通コンドライトにおいて40元素(Na,Mg,Al,P,K,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Zn,As,Se,Ru,Rh,Pd,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Os,Ir,Pt,Au,Th,U)の定量値を得ることができた.そのうちの11元素は2つの分析法によって定量値を得た.TiとYbを除いて,CaとIrは10%以内,その他の元素は5%以内で2つ分析法による定量値は一致した.これらのタイプ7普通コンドライトは概ねタイプ3~6の普通コンドライトと同様の元素組成を示した.本研究で定量値を得ることができた元素のうち,最も凝縮温度が低いSeとZnは,2つのH7コンドライトでは典型的なHコンドライトと同程度の含有量を示した.2つのLLコンドライトではZnの減少は見られなかったが,SeはLLコンドライトの平均値[1]に対して,Y-74160では49%,A-880933では65%の減少が確認された.さらにY-74160は典型的なLLコンドライトと比較して,親鉄元素の含有量が著しく低かった.CIコンドライトで規格化したY-74160の強親鉄性元素存在度パターンは,固体一液体分配係数に対して滑らかに減少した.この元素分別はバッチ溶融を想定したFeNi-FeS共晶による部分溶融モデル計算によって再現することができた.モデル計算の結果,Y-74160では金属・硫化物相の部分溶融が起こり,液相と固相が完全に分離せずに,一部の液相と固相が混ざり合ったまま再び固化したことが示唆された.CIコンドライトで規格化した希土類元素存在度パターンでは,4つのタイプ7普通コンドライトにてEuの負の異常が確認された.2つのH7コンドライトとA-880933については,斜長石の減少によってこの異常は説明できた.しかし,Y-74160には希土類元素だけでなく,NaやAl(斜長石の主要元素)を含む不適合親石元素が普通コンドライトの平均値[1]と比べて約1.5倍濃縮されていたことから,Euの異常は斜長石の減少だけでは説明できなかった.Ca/Al比に対するSm/Eu比から,4つのタイプ7普通コンドライト,典型的な普通コンドライト[2],衝突溶融を経験したLLコンドライト[3,4]におけるEu異常の変化を輝石/斜長石比の増減で表すことができた.このことはY-74160における珪酸塩鉱物の選択的増加を示唆する.しかし,このような希土類元素存在度パターンは1つの要因によるものではなく,熱変成作用によるリン酸塩鉱物への希土類元素の濃縮など様々な要因によるものであると考えられる.また,本研究におけるY-74160の定量値は微量元素だけでなく,主要元素においてもそれぞれの先行研究[3,5]との間にばらつきがあり,高い不均一性をもつ試料であることが示唆される.
首都大学東京, 2016-03-25, 修士(理学)
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