Thesis or Dissertation 非標準的物質効果のあるニュートリノ振動確率の振る舞い

栁田, 秀明

pp.1 - 45 , 2016-03-25
Description
1930年β崩壊への保存則の要請からW. Pauli は「ニュートリノ仮説」を提案した.その後1955年のF. Reines とC. L. Cowanらの実験により実在が確かめられたのが素粒子ニュートリノνである.「素粒子」とは自然界の最も基本的な構成単位のことで,素粒子物理学はそれらの多彩な運動によって森羅万象が導かれるという概念を再現しようというものである.素粒子標準模型[1] は素粒子の基本的な相互作用を記述するもっとも正確な理論であり,2012年7月[2] からすでに標準模型に必要とされるすべての素粒子が出揃っている.だがしかし標準模型は素粒子のより込み入った記述に対して十分な説明能力があるわけではない.とくに質量起源に関する謎は尽きず,ニュートリノ振動の発見はニュートリノも質量をもつことを示している[3].ニュートリノ質量の起源は標準模型の枠内からは説明することができない.このように標準模型の枠組みから外れた現象を説明する理論を標準模型を超えた物理(Beyond the Standard Model,BSM) といい,その獲得が今日の素粒子研究において新たに目指されている.とくにニュートリノ振動はBSMの1現象として,精力的に研究されている.ニュートリノは3 種類(ν_e,ν_μ,ν_τ) あり,我々はそれらをフレーバーと呼ぶもので区別している.ニュートリノ振動は,マクロな距離を伝播したニュートリノがそのフレーバーを遷移させる確率的現象である.ニュートリノ振動はフレーバー混合を表す混合角θ_<12>,θ_<23>, θ_<13>,CP位相δ_<CP> ,そして質量階層性を表す質量二乗差Δm^2_<21>; Δm^2_31という量で特徴づけることができる.すでにDouble Chooz やDaya Bay,RENO によって3つ目の混合角θ_<13>まで測定され[4],残るCP位相δ_<CP> の測定と質量階層性問題の解決も将来の加速器実験の中に計画されている.ニュートリノ振動実験は今後も改良され,更なる精密測定を実現すると期待されている.ニュートリノ振動の発見に大きく貢献したSuper-Kamiokandeも現在大幅なアップデート計画が進められている.BSMの兆候をいち早く示したニュートリノ振動の研究は今後,標準模型とのズレを測定して新物理を探求することができるようになっていく.本研究では,ニュートリノ振動とその物質効果について,その振動確率の振る舞いを調べた.ニュートリノには標準的に弱い相互作用しかはたらかないが,マクロなスケールで物質中を伝搬するとその相互作用の効果がニュートリノ振動に影響する.この効果を一般に物質効果と呼ぶ[5].とくに非一様な密度をもつ媒質中の物質効果はニュートリノ振動と共鳴[6] したり,媒質の急激な密度変化によって非断熱的な寄与[7] が生じたりする場合がある.太陽中の密度は中心から外側へ指数減少しているし,地球はマントルとコアの密度差が大きく凸型の分布をもつ.本研究ではこの物質効果を非標準的相互作用にまで拡張し,大気ニュートリノ振動確率の振る舞いについて議論している.非標準的相互作用に対する制限は今のところ強くなく[8],新たなBSM への可能性を否定できない.また,地球をコア-マントルの2 層をもつ凸型の密度分布としてモデル化すると,各層の密度不定性について議論することができる.地球質量を一定に保ったままコアの密度に±10% まで変化させたところ,スペクトルが互いにズレてニュートリノ振動確率のピークが低エネルギー側へシフトする.また非標準的相互作用をわずかに導入した場合にも,振動確率は同様の挙動をしていることがわかった.本研究ではこの類似点について考察した.
首都大学東京, 2016-03-25, 修士(理学)
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