Thesis or Dissertation DCBA実験における飛跡再構成アルゴリズムの開発とシミュレーションによる検出器性能評価

柿崎, 正貴

pp.1 - 104 , 2016-03-25
Description
ニュートリノは電荷0,スピン1/2 のレプトンに属する素粒子である。標準模型では電子、μ粒子、τ粒子の3 つの荷電レプトンフレーバーに対応するニュートリノとその反粒子を加えて、全6種類存在する。近年ニュートリノが質量を持つことを示すニュートリノ振動現象が実験的に確立し、標準模型を超える物理が発見された。ニュートリノ振動実験では3種類のニュートリノの質量固有値の質量二乗差の絶対値のみを測定することができ、ニュートリノ質量の測定には別の方法が必要となっている。一方で、スピン1/2 のフェルミオンで粒子・反粒子が同じ粒子はマヨラナ粒子と呼ばれ、理論的にその存在が予言されており、ニュートリノは唯一のマヨラナ粒子候補とされている。ニュートリノのマヨラナ性を検証する方法としてニュートリノレス二重β崩壊の探索がある。通常の二重β崩壊では、原子核中の2つの中性子から2つの電子と2つのニュートリノを放出するが、一方の中性子から放出されたニュートリノをもう一方の中性子が吸収し、2つの電子のみ放出する過程(0νββ と呼ばれる)が発見されれば、ニュートリノと反ニュ-トリノが同一のものである証明になり、ニュートリノがマヨラナ性を持つことが証明される。もし発見された場合、さらに0νββ の半減期を測定することによってニュートリノの有効質量を測定することができる。我々が行うDCBA実験は、一様磁場中で螺旋運動するβ線の飛跡検出から4元運動量を算出するDCBA検出器を用いた二重β崩壊実験であり、ニュートリノのマヨラナ性検証と0νββ 半減期の精密測定によるニュートリノ有効質量測定を目的としている。DCBA検出器では電子の飛跡を3次元再構成することにより、β線の完全な運動学的情報を取得することが出来る。この方法は数ある二重β崩壊実験の中でDCBA実験だけが持つユニークな特徴である。現在はテスト機であるDCBA-T2.5検出器が稼働中で、飛跡検出手法の検証及び検出器の問題点発見と改善を行っている。二重β崩壊核種の^<100>Moを用いた測定が行われており、測定時間5.77 × 10^6 秒に対して二重β崩壊の候補となるイベントは230 ± 17 イベントと見積られた。DCBAにおける飛跡再構成はすべて手作業で行っている。そのため時間と人的労力がかかり、尚且つエネルギー算出の際に解析者の違いから系統誤差が生じてしまう等の問題がある。故に解析手法の改善は検出器の性能を見定めるために早急に解決すべき課題である。また解析結果では二重β崩壊事象候補は230 ± 17 イベントと見積られたが、本来DCBAで期待されるイベント数は、二重β崩壊実験NEMO3において測定された^<100>Mo の半減期T^<2ν>_<1/2> = (7.41 ± 0.02(stat.) ± 0.43 (syst.)) × 10^<18> yr を用いると35 ± 1 イベントと予想される。これはDCBA で取得したイベントの中には未知の背景事象が多く含まれることを示唆しており、今後はシミュレーションによってこれらの背景事象の発生頻度を見積ると共に、検出器の検出効率に関しても詳細に見積りを行う必要がある。本研究の目的は、解析の効率化・ヒューマンバイアスの回避を目的とする飛跡再構成プログラムの開発およびその性能評価と、シミュレーションによる検出効率の見積もりである。まず、β線によって読み出しワイヤーに生じる電気信号や、読み出し回路を経由しFADC波形データとして保存されるまでの一連の流れをシミュレーションすることによって実際の検出器で出力される飛跡データを再現し、検出器の性能評価を行う為の環境を構築した。次に、飛跡再構成を精度良く行うためのアルゴリズムを開発し、飛跡データから電子の4元運動量算出までを行う自動解析プログラムを作成した。これによってデータ解析にかかる時間と人的労力を大幅に削減するとともに、効率的に性能評価を行える環境を構築した。最終的にシミュレーションによって作成した飛跡データと自動解析プログラムを用いて現在稼働中のDCBA-T2.5 検出器についての性能評価を行った。二重β崩壊事象に対する検出効率は磁束密度0.8kGauss において4.64%、磁束密度0.6kGauss において5.75% と見積られ、また、飛跡再構成時のエネルギー分解能の見積りを行った結果、^<100>Mo のQ値= 3.034MeV におけるエネルギー分解能は磁束密度0.8kGauss においてσ/E = 6.94 ± 0.05%、磁束密度0.6kGauss において σ/E = 8.75 ± 0.06% と見積られた。そしてDCBA-T2.5 検出器では磁束密度1.3kGauss におけるエネルギー分解能σ/E = 5.51 ± 0.09%が0νββ探索におけるエネルギー分解能の最良値であると見積られた。
首都大学東京, 2016-03-25, 修士(理学)
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