Thesis or Dissertation カイラル摂動論による核子-K^+ 中間子散乱と核媒質中におけるカイラル対称性の部分的回復

青木, 健児

pp.1 - 60 , 2016-03-25
Description
カイラル対称性の自発的破れは相転移現象であるので温度・密度など環境を変化させるとカイラル対称性が回復すると考えられている。カイラル対称性が自発的に破れている時、クォーク凝縮< q^^-q > は有限の値を持ち、カイラル対称性が自発的に破れた相にいるか否かのオーダーパラメーターとなる。超高温において、クォークとグルーオンがハドロンの閉じ込めから解放されてバラバラに存在する事が実験的に示されている(Quark Gluon Plasma,QGP)。しかし、これは高エネルギーにおける動的な反応であるのでQGPが本当にカイラル対称性の完全回復(< q^^-q >= 0) の帰結であるかは明らかではない。カイラル対称性が自発的に破れる機構を現象論的に理解するためには、環境を変える事により、クォーク凝縮< q^^-q >の絶対値が減少する事を示せば良い。そこで、原子核のような有限密度系にハドロンを埋め込み、カイラル対称性が回復に向かう際のハドロン物理量の振る舞いを調べ、そこから真空の情報を引き出そうとする研究が行われている。すでに、深く束縛されたπ中間子の分光実験からカイラル対称性が部分的に回復する事を示唆するようなデータが得られている。しかしながら、その他の中間子-原子核系でカイラル対称性が回復する影響がどのように見えるかは自明ではない。本論文ではπ中間子には含まれなかったストレンジネスを含むK^+中間子を用いてカイラル対称性の部分的に回復に起因すると考えられる核媒質中のハドロンの性質を調べた。Nambu-Goldstone ボソンの1つであるK^+中間子は核子と低エネルギーにおいて弱い斥力で相互作用する事が知られている。また、ストレンジネスS = +1 である事からS = -1 の K^^- と異なり強く結合する共鳴状態が存在しない。そのためK^+は核媒質中におけるハドロンの性質を調べる際のクリーンなプローブとして注目されてきた。K^+_-原子核散乱を考えたとき、K^+と核子は低エネルギーで弱く相互作用する事から単純なt_<freeρ> 近似が成り立つと予想される。しかし、この近似は破綻している事が実験的に知られている。本論文ではこの近似が破綻する理由を波動関数のくりこみの観点から説明した。まず、K^+N→K^+N 散乱をカイラル摂動論に基づきnext-to-leading order (NLO) まで計算した。その際、NLO に含まれる低エネルギー定数(low energy constant,LEC) をx^2 法を用いてI = 1 とI = 0 の全散乱断面積のデータとフィットし最適値を採用した。求めた低エネルギー定数の最適値を用いて散乱長、位相差、微分散乱断面積を計算した。最後にK^+ と核媒質の相互作用を与える自己エネルギーを計算し媒質効果の一部は波動関数のくりこみから説明できる事を示した。
首都大学東京, 2016-03-25, 修士(理学)
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