学位論文 アルツハイマー病とレビー小体型認知症における拡散テンソル構造的ネットワーク解析を用いた脳内ネットワークに関する研究

鶴田, 航平

pp.1 - 95 , 2016-03-25
内容記述
アルツハイマー病(Alzheimer's Disease: AD)とレビー小体型認知症(Dementia With Lewy Bodies: DLB)は認知症状を示す代表的な神経変性疾患である.両疾患の臨床症状は重複することもあり,混合病理症例も頻発するため,臨床上これらの疾患の鑑別が問題となることも多い.ADとDLBの画像診断法として,MRIによる灰白質体積の減少による脳萎縮程度の評価が挙げられる.一方で,水分子の挙動を画像化する拡散強調像(Diffusion-Weighted Imaging: DWI)の発展系である拡散テンソル画像(Diffusion Tensor Imaging: DTI)を用いて,テンソル解析することで脳白質の神経束を描出する拡散テンソルトラクトグラフィ(Diffusion Tensor Tractography: DTT)という技術がある.近年,MRIにおいて,DTIや機能的MRI(functional MRI: fMRI)をグラフ理論と組み合わせることで,脳の領域間における解剖学的な結合や機能的な結合,いわゆる“脳内のネットワーク”の構造の特性を定量的評価することができ,脳領域間の連絡や脳全体における情報伝達の効率などの脳内ネットワークの様々な側面を表現することが可能となっている.このグラフ理論解析は統合失調症やてんかん,多発性硬化症など多様な精神疾患や神経変性疾患について研究が盛んに行われているが,ADとDLBにおいて,DTIを用いてグラフ理論解析し,それらの鑑別を試みたという報告はまだ存在しない.本研究は,首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会(承認番号15056)および順天堂大学医学部附属順天堂医院病院倫理委員会(承認番号471)の承認を受けて実施している.対象は,神経内科医師によってADと診断された患者15名と,DLBと診断された患者7名である.この22名に対し,DTIとT1強調像を取得し,グラフ理論解析をすることにより算出されたネットワーク指標(Characteristic Path Length: CPL, Global Efficiency: GE, Local Efficiency: LE, Clustering Coefficient: CC, Small-World property: SW)についてADとDLB間で比較・検討した.結果は,ADに比較して,DLBでは,GE(p = 0.0098)およびSW(p = 0.005)の有意な低下を示した.CPL,LE,CCについて有意差は認められなかった.これはDLBと比べ,ADでスモールワールド性がより保たれ,脳全体の情報交換処理効率が高いことを意味する.したがって,本研究では,DTIにグラフ理論というアプローチを加えることで,従来の拡散MRI解析にはなかったGEやSWといった脳内ネットワークに有意な差があることを示すことができた.よって,DTIを用いたグラフ理論解析では,ADとDLB間の脳内ネットワークの変容の差異を反映し,ADとDLBの鑑別診断において有用であると考える.
首都大学東京, 2016-03-25, 修士(放射線学)
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