Thesis or Dissertation ダーツ投げ運動学習における運動の意識的制御と練習スケジュールの関連性

宮田, 徹

pp.1 - 60 , 2015-03-25
Description
スポーツやリハビリテーションなど実践場面では、適切な動作を目指すため、運動自体に意識を向けて運動すること(運動の意識的制御)を促し、それにより運動学習を促進させようとする介入を用いることが多い。これに対し、多くの先行研究では、運動の意識的制御はむしろ運動学習を阻害するという知見が多い (Wulf,2007;Masters1992)。このような運動学習の意識に関する見解が実践と実験研究で異なる理由のーつとして、練習スケジュール(例えば、多様性練習と一定練習)の違いによる可能性が考えられる。スポーツなどの実践場面では、一定の距離・速度・力量(運動パラメーター)による同一動作の繰り返しの練習、すなわち一定練習のみを行うことはほとんどなく、運動パラメーターが変化に富む実践環境を考慮した練習である多様性練習が実施されることが多い。一方、運動の意識的制御を取り扱った研究では、多くの場合、実験操作の単純化のため一定練習を用いている。一般的に多様性練習は一定練習より多くの運動パラメーターの調節を必要とし、それが高い運動学習効果を生み出すと考えられている (Schmidt,1975)。運動パラメーターの調節という観点では、運動の意識的制御が高い状態では試行錯誤しながら運動していること (Masters,1992;Zhu,2011) から、運動パラメーターの調節を頻繁に行っている可能性が高い。そのため、練習スケジュールと運動の意識的制御には少なからず関連性があるものと思われる。本研究は、運動の意識的制御の運動学習効果への影響を検討するため、運動学習効果が異なるとされる一定練習・多様性練習を実験課題として用いることとした。運動の意識的制御は、一定練習では阻害要因、多様性練習では促進要因と仮定し、以下の3つの実験から検討を試みた。実験1では、質問紙「運動における注意の再投資スケール(Movement Specific Reinvestment Scale(MSRS)、Masters,2005)」により運動の意識的制御の傾向(個人特性)を評価し、運動の意識的制御傾向と練習スケジュールの違いが運動学習に与える影響を検討した。その結果、一定練習群ではMSRS(個人特性)と運動学習効果に有意な相関は無く、多様性練習群ではMSRSと一日後変化率(事前テストに対する一日後保持テストの変化率)に有意な相関があることがわかり、ダーツ運動学習において個人特性と練習スケジュールの関連性が一部示唆された。実験2では、運動の意識的制御を促すため、好ましいダーツ動作を紙面・口頭で教示し、個人特性と練習スケジュールの運動学習効果への影響がその介入によりどのように変化するかを検討した。実験の結果、教示の介入により、実験1に比べダーツ実験中の運動の意識的制御指標とした内省報告数は有意に増大したものの、ダーツ後のMSRSは増大しなかった。ダーツ誤差において、実験1と同様に一定練習群ではMSRSと運動学習効果に有意な相関は無く、多様性練習群ではMSRSと一日後変化率に有意な相関があった。これら実験1、2の結果から、多様性練習群における運動学習は、運動の意識的制御傾向が強い者は促進的に、弱い者は阻害的に作用する可能性が示唆された。実験3では、運動の意識的制御に関する教示効果と練習スケジュールの交互作用の検討のため、教示(有り・無し)×練習スケジュール(一定・多様性)の4群を設定した実験を行った。その結果、多様性練習条件、教示あり条件でそれぞれダーツ後のMSRSが上昇し、運動の意識的制御が促進されたと考えられた。練習によるパフォーマンスの向上に関して、教示の有無によって差があり、教示あり条件では教示なし条件より有意にダーツ誤差が改善していた。練習効果の保持に関して、多様性練習では直後テストと各保持テスト間に有意差が無く練習の効果が保持されていたが、一定練習では直後テストと10分後保持テスト、1日後保持テストそれぞれの間に有意差があり、練習期に獲得された練習効果が保持されていなかった。また、各群の比較を行ったところ、多様性・教示あり群では、1日後保持テストの成績が他の群より高く、練習効果が1日後でも保持されていたものと推察された。実験3における結果から、多様性練習条件ならびに教示条件によって運動の意識的制御が促され、特に多様性・教示あり群で運動学習効果が高かった。これは実験1、2における学習効果とMSRS個人特性の関連性に関する結果とも矛盾しない。実験1、2では、多様性練習におけるMSRS高値者、すなわち運動の意識的制御傾向の強い者の運動学習効果が高かったことから、多様性練習と運動の意識的制御の関連性が示されている。実験3では教示によって運動の意識的制御を強く促した結果、多様性・教示あり群において運動学習効果が他の条件より有意に高い結果が得られた。これら3つの実験結果より、多様性練習において、運動の意識的制御によって運動学習効果を促進することが示唆された。
Full-Text

https://tokyo-metro-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=4370&item_no=1&attribute_id=18&file_no=1

Number of accesses :  

Other information