Thesis or Dissertation 遺伝学とプロテオミクスアプローチの融合によるSUMO標的型ユビキチンリガーゼRNF4の基質探索

藤井, 稔彦

pp.1 - 66 , 2015-03-25
Description
ユビキチンは真核生物全体に高く保存されているタンパク質である。タンパク質のユビキチン化は翻訳後修飾の一つであり、タンパク質の運命を決める重要な役割を担っている。ユビキチン修飾にはユビキチンが標的タンパク質に1つ結合するモノユビキチン化や数珠状に連なり結合するポリユビキチン化が存在し、細胞周期調節やDNA修復など多くの生命現象に関わることが知られている。また、ユビキチン修飾はゲノムメンテナンスにおける重要性が明らかとなっている。しかし、その詳細な分子メカニズムはほとんどわかっていない。RNF4(ring finger protein 4)はSUMO(Small Ubiquitin-related Modifier)と結合する配列SIM(SUMO interacting motif)と基質にユビキチンを結合させるRINGドメインを持ち、SUMO化タンパク質を認識するユビキチン化酵素である。また、ユビキチンの48番目のリジンを介したポリユビキチン鎖を形成し、標的タンパク質のプロテアソーム分解を促進することが知られている。当研究室ではニワトリBリンパ球細胞DT40を用いて、RNF4欠損細胞を作製した。RNF4欠損細胞では、分裂を繰り返すごとに徐々に増殖速度が遅くなり、さらに染色体の欠失がみられた(Hirota et al. 2014 Genes Cells)。染色体欠失の原因は姉妹染色体の不分離であり、スピンドル形成チェックポイントに異常があることが明らかになった。また、ほ乳類において、RNF4はDNA二重鎖切断部位へ修復因子であるRPA、Rad51をリクルートすることからDNA修復の初期ステップで働くことが報告されている(Galanty et al. 2012 Genes &Development; Yin et al.2012 Genes &Development)。つまり、RNF4はゲノムメンテナンスの役割を担っている。しかし、ユビキチン化酵素RNF4の標的タンパク質はほぼ未解明の状態にある。そこで、本研究では、このようなユビキチンを介したゲノムメンテナンスの複雑性を理解するため、RNF4によってユビキチン化を受ける標的タンパク質の網羅的同定を行った。この目的のため、DT40を用いて、野生型細胞とRNF4欠損細胞を比較する遺伝学的手法と網羅的にタンパク質を同定できる質量分析を融合させることにより、網羅的にユビキチン修飾に差のある標的タンパク質を同定することができるSILAC(stable isotope labeling using amino acids in cell culture)を行った。野生型細胞とRNF4欠損細胞を¹²C(light)または¹³C(heavy)でラベルされた培地で培養し、細胞を等量混合し、変性条件下でタンパク質を回収し、トリプシン消化を行い、ペプチド断片にした後、ユビキチン化されたペプチドを免疫沈降法により回収し、それらを質量分析にかけた。質量分析の結果から得られたrawデータをインフォーマティクスソフトであるMaxQuantにより解析した。サンプルとして野生型細胞をHeavy、RNF4欠損細胞をLightでラベルしたものを一組と野生型細胞をLight、RNF4欠損細胞をheavyでラベルしたものをもう一組用いた。安定同位体のラベルをスイッチした二回の実験で再現したデータを採用した。その結果、RNF4欠損細胞においてヒストンH1、ヒストンH2A、ヒストンH3といったヒストンタンパク質のユビキチン修飾の低下がみられた。さらに、既知であるSUMOのユビキチン修飾の低下も同様にみられた。従って、RNF4がユビキチン化する標的タンパク質の候補としてヒストンタンパク質が同定された。RNF4がヒストンタンパク質へどのような影響を与えるか調べるため、野生型細胞とRNF4欠損細胞へFLAGタグをタンパク質のC末端へ相同組換えにより導入し、ウエスタンブロットにより比較した。その結果、野生型細胞はRNF4欠損細胞と比べ、ヒストンH2AのバリアントであるH2A.Zのタンパク量が減弱していることがみられた。さらに、タンパク質合成阻害剤であるシクロへキシミド処理を行ったところ、培養時間に従って野生型細胞のH2A.Zのタンパク量が減少した。一方、RNF4欠損細胞のH2A.Zのタンパク量の減少はみられなかった。従って、RNF4はH2A.Zの分解を担っていることが示唆された。本研究により、RNF4の標的タンパク質の候補を同定した。この結果により、RNF4が担うゲノムメンテナンスの分子機構についてさらなる理解が進められることが期待される。
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