Thesis or Dissertation 二重ベータ崩壊実験DCBAのための三次元飛跡検出器の製作と試験

伊東, 孝行

pp.1 - 108 , 2015-03-25
Description
ニュートリノは中性微子と呼ばれる素粒子である。近年、このニュートリノが別のフレーバータイプに変化するニュートリノ振動現象が確認され、ニュートリノは質量を有することが確実となった。しかし、そこで得られた実験結果はニュートリノの質量スケールが素粒子標準模型の他の素粒子の質量スケールよりも極端に小さいことを示していた。その理由を説明する「シーソー機構」と呼ばれる理論では、ニュートリノは「マヨラナ粒子」であることを要求している。ニュートリノがマヨラナ粒子であることを証明する唯一の方法がニュートリノレス二重ベータ崩壊事象の発見である。もし、このような過程が実験的に確認されればニュートリノの有効質量の特定や宇宙が物質優勢であることを説明することにも繋がるので、世界中で研究が行われている。日本ではDCBA, CANDLES, KAMLAND-Zen が二重ベータ崩壊実験を行っており、本論文のテーマはDCBA(Drift Chamber Beta-ray Analyzer)実験である。DCBA実験は高エネルギー加速器研究機構(通称:KEK)内の富士実験棟においてデータ収集を行っている。本実験はドリフトチェンバーを用いた二重ベータ崩壊実験である。2本のベータ線の運動量を三次元的に再構成することで事象判別を行う。この方法での利点は、ベータ線の粒子識別が可能であることと2本のベータ線のエネルギー和分布の他にそれぞれのベータ線のエネルギー分布と2本のベータ線の角度相関分布を提供できることである。データ収集を行う一方で、次世代測定器の開発も同時に進めている。次世代機となるDCBA-T3測定器はエネルギー分解能の向上のために、磁場を0.8kGから2.0kGに強化する。これにより、ベータ線の螺旋軌道半径は1/2に縮小し、ガス分子によるベータ線の多重散乱が少なくなるため、エネルギーの測定精度は向上すると考えている。一方で、データ点数の減少を補うためにドリフトチェンバーのワイヤーピッチを6mmから3mmに微細化する。さらに、イベントレートを増加させるために面積を現在の4倍に拡大する。そのため、読み出しチャンネル数は1チェンバー当たり4倍になり、新たなDAQシステムの構築を必要とする。現在、このDAQシステムの一部である32ch Preamp & FADCボードとドリフトチェンバーの開発を進めている。現在の開発状況では、ドリフトチェンバーと信号読み出し機器が1台ずつ完成しているが、個々の動作確認が完了していない。本研究では完成しているドリフトチェンバーと信号読み出し機器の動作確認を行った。ドリフトチェンバーの動作確認では設定電圧の決定とシンチレーターとの同期をとって宇宙線の計数率を測定した。測定の結果、チェンバーの気密性が十分でなく、空気の流入により、チェンバーのドリフト領域がアノードワイヤー近傍に限られていたと考えられる実験結果を得た。信号読み出し機器の動作確認では増幅率の測定とノイズレベルの確認を行った。増幅率の結果から宇宙線の信号出力は7ADCカウントと見積もられ、二重ベータ崩壊を想定した0.3MeV~2.2MeVのベータ線の信号出力は11~7ADCカウントと見積もられた。ノイズレベルは1ADCカウント(≈7.8mV)であるため、現在の信号読み出し機器でも取得可能であると言えるが、DCBA-T2.5と比較してノイズレベルは1/2に向上し、信号量は1/8になると予想されるため、S/N比は全体で1/4に悪化すると予想される。従って、信号の検出が困難になると予想されるため、T3で使用するプリアンプやFADCの仕様について再検討する必要があると結論づけた。
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