Thesis or Dissertation Origin of the enhancement of tunneling probability

Hanada, Yasutaka

pp.1 - 125 , 2015-03-25
Description
Chaos-assisted tunneling and resonance-assisted tunneling have been proposed and well recognized as mechanisms to explain the enhancement of tunneling probability in nonintegrable systems. In both mechanisms, quantum resonance plays a key role. In this thesis, we revise and reconsider of quantum tunneling in nonintegrable systems in particular to explore the origin of enhancement of the tunneling probability by studying quantum maps whose corresponding classical phase space is nearly integrable. For this purpose, we introduce renormalized inte-grable Hamiltonians and examine the nature of eigenfunctions under such bases. We found that, in addition to the enhancement due to quantum resonances, the persistent enhancement appears as a result of nontrivial broad couplings of a reference state with states whose supports lie around the unstable fixed points and associated separatrix in classical phase space. We also clarified that the successive switching of dominant contributors, which is linked to the fundamental frequency of the external driving force, gives rise to the staircase structure of the tunneling probably typically observed in tunneling splitting. On the basis of these investigations, we claimed that essential differences exist in the nature of tunneling between completely integrable and nonintegrable systems.
本学位論文では,非可積分系における定常状態の波動関数にみられるトンネル確率増大の起源について考察する.トンネル効果が現れる典型的な問題として,1次元の二重井戸ポテンシャルに束縛された運動を考える.ポテンシャルの極大点より低いエネルギーを持った古典粒子はポテンシャル障壁によって等エネルギー面が分離されるため,左右の井戸を自由に行き来することはできない.一方,よく知られるように量子力学に従う波束はトンネル効果によって左右の井戸を行き来することが許される.これをエネルギー固有状態の描像でみると,トンネル効果は異なる対称性を持った固有状態のエネルギーが分裂するという形となって現れる.逆に,左右の井戸間を量子波束が行き来するときのトンネル確率は,このエネルギー分裂(以下ではトンネル分裂と呼ぶ)の大きさを持って評価することができる.一般に,1次元二重井戸系をはじめとする完全可積系の古典運動は高々準周期的であるが,完全可積分系に摂動が加わるとカオス的運動が生じ準周期運動領域とカオス的運動領域が混合した位相空間が現れることが知られている.このような混合位相空間を持つ非可積分系のトンネル分裂が完全可積分系のそれと比較して劇的に増大し,かつ,トンネル確率のプランク定数依存性には完全可積分系ではみることができない特徴的な構造が現れる.代表的な非可積分系のトンネル分裂に関する先行研究として,Chaos-assisted tunneling (CAT) 及び Resonance-assisted tunneling (RAT) と呼ばれるものがある.CATはカオス的運動領域,RATは古典非線形共鳴を介して異なる状態間の結合を与えられ,その仲介こそがトンネル確率増大の起源であるとされている.特にRATは非可積分系におけるトンネル分裂のプランク定数依存性を様々な系で再現し,非可積分系にみられるトンネル分裂の特徴的構造やトンネル確率増大を説明する有力な理論として広く認知されている.トンネル分裂のプランク定数依存性を様々な系で再現し,非可積分系にみられるトンネル分裂の特徴的構造やトンネル確率増大を説明する有力な理論として広く認知されている.先行研究,特にRATの理論は次の2点を仮定している.(1)準位間の遷移過程が準位共鳴で与えられ,それがトンネル確率増大の起源であること,および(2)非線形共鳴を介した励起状態への遷移過程にはカオス的運動やセパラトリックス外部の影響を無視できる,という2点である.本論文では,これらの仮定の正当性に着目することで,非可積分系のトンネル確率増大の起源が先行研究の主張で説明されるものとは本質的に異なるものであることを主張する.まず,トンネル分裂のプランク定数依存性に現れる特徴的構造に対して,準位共鳴とトンネル確率増大の機構が分離可能であることを作業仮説として,正当性を検証する.そのための準備として,吸収ポテンシャルのトンネル効果への影響を調べる.吸収ポテンシャルはトンネル確率を定義する際しばしば用いられるものであるが,不適切な吸収ポテンシャルを用いると意図しない波動の伝播を誘起し,トンネル効果に対して破壊的作用を生じる可能性がある.本論文ではまず,吸収ポテンシャルが引き起こす意図しない波動の伝播がどのようにして生じるか議論した後,トンネル効果の研究に適切な吸収ポテンシャルの方法を検討する.次に上記で議論した局所吸収ポテンシャルを用いて,共鳴準位を選択的に取り除き,準位共鳴に伴うトンネル分裂に見られるスパイクと,トンネル確率増大の機構が分離可能であることを立証する.局所吸収ポテンシャルの導入により,トンネル分裂のプランク定数依存性にみられるスパイクは消失するものの,トンネル確率増大の要因として,指数関数的減衰と,プラトー構造を周期的に繰り返す階段状の骨格構造が残ることを確認した.トンネル確率増大の原因はRATが想定する前提(1)の準位共鳴とは独立であり,スパイクは階段構造を修飾する形で現れていることを明らかにした.次に,階段状の骨格構造の起源について考察する.よく知られるように,完全可積分系のトンネル効果では虚時間に沿って走る複素古典軌道,いわゆる,インスタントン軌道がトンネル効果を支配し,階段状の構造が現れることはない.そこで,非可積分系と可積分系の差が最小になるように繰り込み可積分近似した上で,トンネル効果のインスタントン過程とそれ以外の非インスタントン過程を分離した.ここで,繰り込み可積分近似の構成にはBaker-Campbell-Hausdorff展開を用いた.可積分近似の繰り込みを行うことで,プランク定数が比較的大きく量子性が強い領域では実効的にインスタントン過程がトンネル分裂を支配し,一方で,プランク定数が小さい領域では,インスタントン成分からそれ以外の成分へと支配成分の交代が起こることが明らかになった.本論文ではこの支配成分の交代をインスタントン-非インスタントン転移と呼び,トンネル確率増大の基本機構として位置づけた.また,トンネル効果の支配成分の交代はセパラトリックスの内部から外部への転移を示しており,この結果は,トンネル結合がセパラトリックス内部のみで完結するとしたRAT理論の仮定(2)と相反するものである.さらにプランク定数を小さくすると階段構造が再度現れるが,その出現にもインスタントン-非インスタントン転移と共通の機構が働いていることがわかった.本論文で解析した系は周期外力の加わった非自励系であり,外力の振動数から決まるエネルギースケールを基本単位としてトンネル分裂の階段構造に周期性が現れる.トンネル分裂のプランク定数依存性に現れる階段構造の周期性は,この周期構造に付随したトンネル成分の交代過程に他ならない.先行研究とは異なる観点で解析を進めた結果,非可積分系のトンネル確率増大が,従来より想定されてきたものとは本質的に異なる機構に起源をもつ可能性が出てきた.その点を巡る今後の課題として重要な点を最後に指摘する.カオスは非可積分系の象徴的存在であるが,古典力学上の概念であり,量子力学上で顕わに定義することはできない.カオスが量子力学にどのように顕在化するかという問いには古典力学を基にした近似理論,いわゆるWKB理論,もしくは半古典論を通じてのみ答えることが可能となる.実際,純量子効果であるトンネル効果でさえ半古典論を用いることで記述されることは可積分系,非可積分系問わず立証されている.それに対して,繰り込み可積分近似を用いて準周期軌道間のトンネル過程を考えた結果,従来の最低次のWKB理論では適用できない状況があることが明らかとなった.さらにはこの遷移過程が階段構造の出現や非可積分系のトンネル確率増大の機構と密接な関係にあることもわかった.準周期軌道間のトンネル過程は完全可積分系では生じえないため,このトンネル過程は非可積分系のトンネル効果の素過程として最も基本的であり,今後の研究の展開が強く望まれる.
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