Departmental Bulletin Paper 今日の経済学と戦士ヨブの潔白な誓い─義人ヨブとヨブの悔い改めおよび今日の経済学─

久保田, 義弘

(12)  , pp.1 - 41 , 2017-12-15 , 札幌学院大学総合研究所 = Research Institute of Sapporo Gakuin University
ISSN:1884-8974
Description
 本稿の第1節から第5節において,義人ヨブの潔白な誓いの含意を,『聖書』の『ヨブ記』のヨブの言葉,およびヨブと三友人の問答あるいは返答から明らかにする。さらに,本稿第7節では,ヨブ自身が無知であることを知り,自身の罪を懺悔し,自分を捨て,神に自身をまかせることによって,神は,ヨブが全き人として受け入れたことを確認し,三友人との問答ではヨブが正しい事を神について述べていることを確認する。その結果,神はヨブの祈りを受け入れる。さらに,本稿の第6節において,今日の経済学の消費者の倫理や行動がヨブの12項目の潔白な誓いと必ずしも不整合ではないことを示す。 第一に戦士ヨブならびにエラスムスが悪徳として日常生活で忌避することを説いている好色問題を今日の経済学において表現する。好色は個人的には効用を高めるが,他方では,個人的な好色費用ならびに好色の社会的費用を生みだし,むしろ個人の効用を低くする可能性があることを示す。第二に貪欲の問題を考察する。これは,今日の経済学では,富(あるいは財産)が個人の効用水準を引き上げるかどうかの問題である。効用水準に飽和点が存在するならば,富の増加はむしろ効用水準を引き下げるかも知れないことを示す。さらに,これに関連して,富が友達を増やし,個人の効用水準を引き上げると言う見解について考察する。ここではこの見解について疑問を提示する。第三に奴隷の権利を無視することに関わる問題を取り上げる。ここでは,奴隷は労働力として位置づけ,奴隷の権利を聞き入れることは,労働者の待遇の問題に帰着する。 第四に貧者に対する無情の問題あるいは客人への非情の問題について考察する。この問題は,食物に事欠くとき,あるいは貧者(孤児,あるいは客人)に住む家がなく,泊まる宿がなく,着るものがないときに,主食のご飯やパンを与え,その貧者(孤児あるいは客人)に雨露をしのげるように家屋,着るものを,および食事を提供することは,一種の移転(所得移転)の問題である。移転を行う人には,何の見返りもなく,財やサービスを他の市民に提供することになるが,これは今日の市民社会の現象になっている。社会保障に関連した支出・収入の問題として今日の経済学では扱われる。 第五に敵に対する憎しみの問題について検討する。これは利他主義と今日の経済学でも取り上げられる課題である。個人の効用水準が他人の効用水準に影響される問題である。他人の効用水準が上昇すると,その個人の効用水準も引き上げられることになる。第六に畠の濫用問題を考察する。これは土地の生産性の維持・向上の問題であり,今日の経済学では生産関数において扱われる問題である。 なお,ヨブの誓いの第八の迷信問題は科学(社会科学)と宗教の闘争問題として考察する。また,その第十の罪の隠蔽問題と第二の虚偽問題は,交渉問題や神学問題として考察されることになるが,別の機会に取り上げるが適切であろう。
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