会議発表論文 海底地震計波形におけるナガスクジラ鳴音の特徴と音源定位についての考察
Study on the characteristics of fin whale vocalization on waveform of Ocean Bottom Seismometer and its localization

岩瀬, 良一  ,  IWASE, Ryoichi

pp.1263 - 1264 , 2015-03-16 , 日本音響学会
ISSN:13403168
NII書誌ID(NCID):AN00351181
内容記述
筆者はこれまでに、北海道釧路・十勝沖の海底に設置されているケーブル型観測システム「海底地震総合観測システム」 (以下,「釧路・十勝沖システム」)において,ハイドロフォンだけでなく,同じ筐体に収納されている海底地震計によっても,ナガスクジラの鳴音が検出される例があり,この海底地震計3成分の波形のうち,鳴音部分についての水平2成分のパーティクルモーション,及びハイドロフォン波形における直達波と多重反射波の時間差(Time Difference of Multi-path arrival, 以下,TDOMA)を用い,音源定位即ちナガスクジラの存在位置の概略推定が可能であることを示した.さらに釧路・十勝沖システムだけではなく,東日本の太平洋側の海底に設置されたケーブル型海底地震計システム,即ち東京大学地震研究所の三陸沖,気象庁の房総沖及び(独)防災科学技術研究所の相模湾システムについても過去の地震波形のデータからナガスクジラ鳴音を数例検出した.これらは,海域における地震の常時観測のため日本周辺海域に多数設置されている海底地震計観測網が鯨類の鳴音検出に活用可能であることを示している.一方で,地震計により検出されるナガスクジラ鳴音は,地動の計測という特徴故にハイドロフォンに比べて概して受信(受波)レベルが低く,検出例が少ない等の問題がある.また先行研究には,地震計の水平成分だけでなく,音源の鉛直方向の入射角を推定し,これをもとに音源定位を試みた例がある.そこでこの方法の適用可能性を含め,海底地震計波形におけるナガスクジラ鳴音の特徴について,より詳細な調査並びに考察を行った. 今回は2004年12月10日13:44から14:59(時刻はいずれも日本標準時)の間に釧路・十勝沖システムのOBS1観測点で検出されたナガスクジラ鳴音の地震波形データを調査対象とした. この期間のうちOBS1のハイドロフォン波形上で多重反射波の読み取りが可能なデータ62個について,通過帯域10 Hzから25 Hzのバンドパス・フィルタをかけた地震計波形上の鳴音の直達波の水平成分のパーティクルモーションから鳴音の入射方位を求めた.次にハイドロフォン波形上の鳴音の直達波と多重反射波を用いたTDOMAから音源の水平距離を求めた.こうして得られた入射方位と水平距離から音源(ナガスクジラ)定位を行った.なお,水中音速は1500 m/s,水深はOBS1の水深2329 mの一様平面からなる海底面とした.また入射方位は地震計波形3成分のデータから鳴音の直達波部分を含む1秒間を切り出し,主成分分析により得られた第一成分(固有値のうちの最大値)に対応する固有ベクトルを信号の振動方向とし,その水平成分を入射方位とした.水平成分だけでは入射方位に2方向の任意性(今回の場合OBS1の東側・西側のいずれか)が存在するが,これについては固有ベクトル(振動方向)の鉛直成分から判断される入射方位に基づいた. この結果,13:44から13:59までの間に観測された鳴音は,10個中の9個がOBS1の西側に位置する先端観測ステーションの近傍に定位され,それ以降は14:59までの全ての鳴音がOBS1の東側に定位された.しかしながら,対象期間中の鳴音の到達時刻は,ハイドロフォン波形上ではいずれもOBS1の方が先端観測ステーションより先であり,特に先端観測ステーション近傍に定位された音源については,OBS1の約3秒後に先端観測ステーションに到達しており,得られた定位結果と矛盾する.そこで,これらの鳴音の入射方位もOBS1の東側からとすれば,その他の一連の定位結果の延長上に位置し,同一個体が移動しながら発した鳴音として矛盾なく説明できる. パーティクルモーションは,水中音波が海底面で変換された縦波(P波)と横波(SV波)の合成波の振動を示しており,鉛直断面に関しては,その振動方向は海底への見かけの射出角を示すことになる.そこで,この見かけの入射角とTDOMAによる水平距離及び水深から見積もられる音波の入射角との対応を調べた.その結果,入射角が約60度以下では比較的良い対応が見られるが,灰色点が分布する約60度以上の範囲では対応が崩れ,60度付近が入射臨界角であると推定される.即ちこれ以上の入射角に対しては,地震計の振動方向のみからの定位は困難となる.
日本音響学会2015年春季研究発表会(2015年3月16日~18日, 中央大学後楽園キャンパス)
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http://www.jamstec.go.jp/jdb/ronbun/Ks00042716.pdf

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