Technical Report 家族的経営の力 : 経営と技能伝承のビジネスシステムとその制度的叡智

柴田, 淳郎  ,  曽根, 秀一

(No. J-54)  , pp.1 - 16 , 2015-08 , Center for Risk Research (CRR), Shiga University
Description
本稿は、伝統産業における経営及び技能伝承のビジネスシステムレベルでの比較研究を通じて、家族的経営の意義を探求することにある。伝統産業では、代々家業を家族で継承する同族企業が多い。本稿で採りあげる神社仏閣の建築・改修を主たる事業とする寺社建築産業及び仏壇の製造・販売を主たる事業とする彦根仏壇産業も同様である。しかしながら、なぜ伝統産業では、創業者一族が経営を支配する同族企業が代を重ね長寿企業として現代まで存続が許されているのだろうか? 私がある講演会に参加した際、主催者の長浜の企業家は、「地域でのビジネス・リーダーの選別は中々困難である。なぜなら、能力のある奴は家格がない。家格がある奴は能力がない。」という印象的な台詞を言った。地域でビジネスを行う場合、能力を備えているだけでは十分ではない。能力と家格を併せ持つことが必要とされるということだ。ハーバード大学名誉教授であるランデスはその著書において「ファミリー企業にとって戦略的に最大の利点は、その血統にある。」と主張しているように、血統はひとつの経営資源であり、代々家業を継承している同族企業は、その年月に見合った知識と技能、信頼と資本が蓄積されているのである(ランデス,2006)。 本稿で採りあげる長寿を達成した同族企業も血統に基づき知識や信頼が継承されると共に、年月を超えて、技術や技能を伝承していく合理的なビジネスシステムが兼ね備わっていた。その結果、長期に渡る企業の継続性を担保してきたわけである。本稿では、このような企業の制度的叡智を特に家族的経営の力として理解し、伝統産業のビジネスシステムという視角から家族的経営の意義を明らかにしていきたい。

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