紀要論文 ソ連の家計消費と不足問題
Soviet Consumer Problems Reconsidered

志田, 仁完  ,  Shida, Yoshisada

50pp.123 - 135 , 2015-11-30 , 神奈川大学経営学部
NII書誌ID(NCID):AN10153220
内容記述
本稿では第二次世界大戦以降の時期におけるソ連の家計消費の長期動態を概観し,「絶対的な欠乏」から「相対的な不足」とも表現しうる消費問題の変化を検討している.消費水準の上昇に伴い,消費の貨幣的成長,量・質両面における消費者の要求の増大,消費の対象範囲拡大やニーズの多様化といった「消費の高度化」のプロセスが進展した.計画経済システムは消費者自身の意思決定を計画化と国家管理の直接の対象とすることはできない.家計が保有する貨幣の処分方法は家計の裁量の下にある.そのため計画体制にとって,消費者の需要を反映した消費財の供給を計画化すること自体が困難な課題となる.この条件の下で進展していった消費の高度化は不可避的に消費計画化を一層困難なものにした.消費の高度化が,計画対象品目の範囲や種別の増大,そして常に変化する消費者需要への柔軟な対応を計画経済システムに要求するからである.また,消費問題は所得水準の上昇によってだけでは解決困難な問題でもあった.所得の追加的な増大は消費者の裁量と選択の幅を拡大させ,消費の高度化をさらに進展させる.その結果,消費の計画的な制御は一層の困難なものとなるからである.しかし,経済停滞や生産効率の低下に苦しむソ連政府のとった経済政策の1つは,賃金メカニズムを改善し,賃金がもつ労働インセンティブへの刺激効果を強化し,生産性を上昇させ経済成長を促そうというものであった.所得の増大それ自体は家計の厚生を上昇させる.一方で,家計の消費需要に十分に対応した財の供給が伴わない限り,追加的な所得は財の購入資金として利用できない.この場合,賃金政策はかえって労働意欲を削ぐという負のフィードバックをもたらすことになる.以上のような経済循環を考慮すれば,不足は家計にのみ影響する問題ではなく,ソ連経済システムの持続可能性に対しても負の影響を及ぼす重要な問題として捉えられる.
研究論文
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http://klibredb.lib.kanagawa-u.ac.jp/dspace/bitstream/10487/13352/1/50-08.pdf

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