学位論文 チェコスロヴァキアのグラフィックデザインに関する研究?映画ポスターとマッチラベルを中心に

中川, 可奈子

2016-03-25
内容記述
本論の目的は、社会主義時代のチェコスロヴァキアで、公共の場に掲示されていた映画ポスターと、すべての国民の日常生活で身近にあったマッチラベルのデザイン分析から、チェコスロヴァキアのグラフィックデザインの特徴と社会的役割を明らかにすることである。 第1章では、社会主義下におけるグラフィックデザインの発展について、その社会的要因と時代背景に触れて言及した。 第2章「チェコスロヴァキアのグラフィックデザイン」では、チェコスロヴァキアで特に独自性のある、「ブックデザイン」「絵本」「映画ポスター」「マッチラベル」のデザイン制作が、社会主義時代から資本主義体制に変わることで、どのように変化したかを、これまでの先行研究をもとに、主な事例を挙げて考察した。 第3章「チェコスロヴァキアの映画ポスターのデザイン分析」では、映画ポスターの制作環境や社会背景による影響を明らかにし、映画ポスターを手がけた主要なアーティスト12名のプロフィールと、映画ポスターの表現、手法について述べた上で、映画ポスター以外の作家活動を調査した。それを受けて、チェコスロヴァキアの映画ポスターデザインと映画の内容の関係について調査し、映画の製作国が作ったオリジナルの映画ポスターと比較することで、チェコスロヴァキアの映画ポスターのデザインの特徴を捉えた。さらに、1960年代チェコスロヴァキア映画ポスターのデザインがどのような技法で表現されていたか、1960年代に活躍した主要な作家12名が1958年~1970年に制作した計544点の映画ポスターを分類し、技法の割合を分析した上で、独自の発展を見せたコラージュ技法について、構成要素となった素材から、映画ポスターのデザインの特徴を明らかにした。 第4章「チェコスロヴァキアのマッチラベルのデザイン分析」では、チェコスロヴァキアのマッチラベルの蒐集活動における、時代、テーマごとの分類方法や、マッチラベルの発展に貢献したデザイナーと蒐集家について言及し、マッチラベルの全体像を捉えた。それを受けて、第二次世界大戦後から1992年までに発行されたマッチラベルデータを整理し、マッチラベルについて、国の政策や公衆衛生、国営企業の広告、自然、芸術、文化などのテーマの分類、シリーズ展開の方法、さらに、特に1960年代のラベルの色彩、印刷技術について、デザイン分析をおこない、マッチラベルのデザインの特徴を明らかにした。 第5章「結論」では、映画ポスターとマッチラベルのデザイン分析をもとに、チェコスロヴァキアのグラフィックデザインの特徴と社会的役割を考察した。1960年代の映画ポスターは、作家達が映画を自由に表現しており、これは、映画ポスターのデザインに、高い芸術性や伝統、作家の意思を取り入れるといった国の方針をアーティストが理解を示して押し進めた結果であると結論づけた。一方、ソ連の支配下におけるチェコスロヴァキアのマッチラベルは、共産主義をアピールするものでもあったが、暮らしの知恵や豊かな伝統文化、次の世代を担う子供達の教育をテーマにしたラベルが多く見られた。特に1960年代に発行されたマッチラベルは、芸術性の高いデザインや、素朴な図柄、豊富なシリーズ展開、色彩と印刷に対する細かな工夫によって、生活必需品、国家の社会主義的な宣伝媒体としての機能を超えて、国民のライフワークや娯楽となる蒐集活動の対象となった。そして、映画ポスターとマッチラベルのデザイン分析において、アーティストのものづくりに対する姿勢や考え方と、日常生活におけるデザインの芸術性が国民の美的教育の効果につながる可能性を明らかにした。
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