学位論文 認知工学に基づく方位図形のデザイン構成要素に関する研究

金, 珉珠

2015-09-24
内容記述
グローバル化・情報化の進展に伴い日本からの海外旅行者や海外からの訪日外客数も急激に増えた.生活やまち中での移動のためにはさまざまな情報が必要である.移動のための情報を得る有用な手段の一つとして地図や案内標識がある.言葉の壁やなじみのない地域で移動する海外からの旅行者にとって,地図や案内標識などの情報媒体から街の移動情報を取得することは必至である.これらの案内図は,一般的に広く利用することを目的に描かれたものであるが,地図に表記している方位や方向に関する記号から得る空間に関する位置情報の理解度は人により異なると考えられる.従って,地図情報の伝達考える際には,これまで空間認知研究で注目されていた環境の違いや個人の能力差だけでなく,案内図や地図上に用いられる記号の表現方法にも注目する必要がある. ピクトグラムやサインのデザインに対する視認性評価にはアンケートやSD法が用いられ,美しさや,好ましさなどの印象評価が行われてきた.サインデザインの印象をアンケート調査とSD法で評価し,視覚伝達における有効なサインのデザインをするには,快適でまとまりのある印象を与え,認知されやすくする必要のあることが明らかになっている.また,駅構内の公共サインのデザインの現況をヒアリング調査し,公共サインシステムを計画する場合には,情報伝達機能だけでなく駅内環境として視覚的効果も考慮することが望ましいとの指摘がある.これらで用いられた評価方法では,案内標識デザインや図形から受ける印象や好感度といった心理効果を推定することができるが,定量的に検証することは難しい.また,図形を認知するために重視する情報や図形要素などについて検討を加えることも困難である.さらに,これまでに行われたサインシステムに関する研究は,主にピクトグラムやサインの提示条件に関するものが多く,方位図形のわかりやすさを対象として表示する情報内容の検討は不足している.実際に設置された方位図形の向きの方針は,彼らが見る方向に合わせる以外に目案がないため,芸術性を添えた方位図形や方位と関係ない装飾を加えた複雑な方位図形が数多く見られる.それらの表示情報量は大きく異なるため,元の機能である方位を誤って認識する場合も見られる. 本研究は直感的にわかりやすい方位図形をデザインするための要素を明らかにすることが目的である.まず,文献やフィールド調査より現行の方位図形を収集し,方位図形の設計において考慮すべきデザイン構成要素の抽出を行った.方位図形は形態要素と文字情報要素で成り立っていた.形態要素は方位図形の全体的形を決める要素で,「白黒色」「多色」「面」「直線」「曲線」「斜線」「円」「三角形」「四角形」「対称的」「非対称的」の11種類に分類することができた.文字情報要素は方位を示す具体的な表記で,東(E)・西(W)・南(S)・北(N), 北東(NE)・南東(SE)・北西(SW)・南西(NW)などの文字やマークであった.次に,わかりやすい方位図形を明らかにするための主観評価実験を行った.主観的評価実験では,デザイン構成要素を基に描いた4タイプの方位図形を用い,一対比較法で各図形に対するわかりやすさを分析した.その結果,4タイプを統合的に見ると,いずれのタイプでも北の方向を意味する文字Nが図形に含まれることにより,分かりやすくなる傾向があった.しかし,方位図形のタイプによっては,見る側の理解を助けるデザイン要素のあり方は異なっていた.具体的には,指針が北だけを示す場合,文字Nだけを表示した方がわかりやすいと回答されたが,指針数が4方向を示す図形では東西南北を表示した方が,わかりやすいと回答を得た.つまり方位数に応じてデザイン要素と文字を適切に組み合わせることが望まれる.また,過度な単純化はむしろわかりやすさを低下させ方位に必要な情報を表記することが求められる. しかし,主観的評価実験では方位図形の方位を視認するときに図のどこをどの位の時間見ているのかは明らかにされていなかった.そこで,方位図形を見る際どのように視線が移動してどこをどの程度見ているのかを計測し,わかりやすさの要因について検討した.具体的には,方位図形を見ている間の視線の動きを眼球運動測定装置で測定し,各方位図形に対する方位の認識に要する時間を求めた.その結果,4つのタイプの方位図形の条件において方位を示す矢が減少するに伴い反応時間が速くなることが明らかになった.さらにいずれの方位図形でも北(N)の文字情報がある方の反応時間が速くなった.また,視線移動解析では,図形を全体よりも図形の角,文字が有る部分,交叉点などに注視点が集まる傾向が得られた.北(N)の文字が表示している部分の注視時間がもっとも長かった.方位図形に文字情報の北(N)だけが描かれている方が東西南北の4方向を表示している図形よりの注視点範囲は狭く,文字の書いていない方位図形に対する視線位置が分散することが明らかになった. わかりやすい方位図形をデザインするために考慮すべき要素は,方位の情報を確認することができる北を示す文字Nが有る場合や図形の上下が非対称的である場合であることがわかった.また,方位図形の理解度を高めるあるいは適切な表現にするためには,それぞれの方位数に応じて造形的要素と文字を組み合わせて,視覚的情報を容易に提供することが必要であると考えられる.
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http://repository.lib.kit.ac.jp/repo/repository/10212/2297/D1-0774_y1.pdf

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