紀要論文 イギリスにおけるアカデミック技術者の歴史的形成についての基礎的研究(4): ケンブリッジ大学の場合
Basic Research into the Historical Formation of Academic Engineers in Britain(4) : The Case of the University of Cambridge

広瀬, 信

内容記述
明治以降,技術者が高等教育機関で養成されてきた日本ではなかなか理解されないが,技術者が工学教育機関の設立以前に自生的に形成されたイギリスでは,実地訓練による技術者養成の伝統が形成されたことが特徴で,そのことが,少なくとも初期において,工学教育機関の発展を制約した。イギリスの場合,実地技術者の方が,経済的にも,威信の上でも優位にあり,工学教育機関の側に優秀なアカデミック技術者(工学教員)を確保することが困難であったことも工学教育機関の初期の発展の制約要因の一つであった。また,アカデミック技術者が,学閥を率いる技術者のリーダーとして,技術者専門職内においても,工学研究においても,技術者の後継者養成においても,中心的役割を果たしていたフランス,ドイツ,日本などとは異なり,イギリスでは大学・高等教育機関とは別に,技術者の専門職団体が,技術者の専門職としての地位の確立においても,工学研究においても,技術者の後継者養成においても中心的役割を果たしてきたことも特徴である。技術者の資格認定においても,技術者専門職団体が主導権を持ち,技術者として認められるためには3年間(後に2年間)程度の実地訓練が不可欠であったため,工学教育機関のみで技術者を再生産することが困難であった。アカデミック技術者であっても同じように実地訓練を求められたため,工学教育機関のみでアカデミック技術者を再生産することは困難であったとみられる。このようなイギリスで,アカデミック技術者がどのように形成されていったのかについての実証的研究はこれまで行われていない。本研究では,イギリスのアカデミック技術者がどのように形成されていったのかを明らかにするための基礎的研究として,どのような経歴(教育・訓練を含む)の者がアカデミック技術者に採用されたのか,またどのような教育・訓練を通じてアカデミック技術者として養成されたのかについての経歴研究を行う。具体的には,いくつかの重要な工学教育機関を選んで,その工学教員の経歴研究を行う。まず最初に教授の経歴を順次検討し,次に教授以外の教員で経歴の分かる者について検討する。教授については,伝記情報をある程度入手できたが,教授以外の教員の情報はより限定されている。技術者専門職団体の(準)会員に選出されている者については,(準)会員選出時の審査資料が重要な情報源となった。また,(準)会員選出後は,会員名簿の情報も利用できる場合は利用した。しかし,技術者専門職団体の(準)会員に選出されていない場合は情報を得られない場合が多かったため,その実態は解明できていない。対象時期は,工学教育機関(コース)の設立時から第2次世界大戦頃までとした。本稿では研究(4)として,1870年代に工学教育を開始したケンブリッジ大学(University of Cambridge)の工学教員(土木系と機械系)を対象とする。なお,ケンブリッジ大学の場合の独自の伝記情報源として,1900年頃までの卒業生のデータベースが利用できた。
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