Departmental Bulletin Paper 詩の生成 : 「コブレンツの思い出」から「不安な死者たち」へ
La genese d'une poesie : du <<Souvenir de Coblence >> aux <<Morts induiet>>

中島, 淑恵

64pp.305 - 319 , 2016-02-19 , 富山大学人文学部
ISSN:03865975
NCID:AN00175930
Description
これまで筆者は,フランス国立図書館所蔵のルネ・ヴィヴィアン(本名ポーリーヌ・メアリ・ターン)の少女時代の草稿1)の精査を通して,普仏戦争の激戦地コブレンツを訪れた一夏の体験が,散文の印象記から韻文の詩に変容する過程を観察してきた。とはいえ,それらはすべて,未発表に終わったヴィヴィアン少女時代の草稿の中に見出されたものであって,真の意味で「作品」とみなせるものであるかどうかについては判断を控えてきた。しかし,これら草稿の精査によって浮かび上がってきた「コブレンツの思い出」という,「作品」としては未発表の詩と様々な共通点を持つ作品が,ヴィヴィアンの処女作『習作と前奏曲(Études et Préludes)』に収められていることが逆に照射されるという結果をもたらした。それが小論で精査しようとしている「不安な死者たち « Morts inquiets »」である。この詩は,大多数が恋愛詩である『習作と前奏曲』の中にあって,唯一恋愛を直接的なテーマとぜず戦争をテーマとした詩であり,筆者がかねてよりその異質性に注目してきたものである。この詩そのものの分析からは,従来その異質性が説明できなかったのであるが,「コブレンツの思い出」を出発点としてさらに彫琢を加えられた詩作品だと考えると,その特徴がよく理解できるように思われる。小論ではまず,『習作と前奏曲』において,この詩がどのように異質であるかについて論じた上で,この詩の分析を行い,それが「コブレンツの思い出」からどのような特徴を継承し,あるいはどのような点において異なるのかを精査してみたい。そのうえでさらに,ヴィヴィアンの死後発表されたもうひとつの「不安な死者たち」について考察の射程を広げてみることによって,「作品」というものがどのように生成して変容して行くのかについて,ささやかな論考を試みたいと考えている。
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