Thesis or Dissertation 行動問題を示す発達障害児をもつ保護者と教師との効果的な連携方法の検討

岡本, 邦広  ,  オカモト, クニヒロ  ,  Okamoto, Kunihiro

2016-08-18
Description
 本論文は、第1章から第7章までで構成された。第1章では、発達障害児における行動問題への行動論的アプローチの現状と課題を示した。第2章では、行動問題を示す発達障害児をもつ保護者と教師の連携方法を概観した。学校場面で行動問題を示す発達障害児に対する指導・支援研究では、教師が外部専門家や保護者と連携をとって実態把握から評価まで行うものが多く見られた。しかし、保護者と教師の効果的な連携方法の過程は明らかにされなかった。本論文における連携を、「異なる立場のもの同士が、行動問題を示す発達障害児に対する共通の目標(行動問題の低減や適応行動の増加)をもって、問題解決(目標達成)を目指すために必要な相互作用を行うこと」と定義する。教師と保護者の考え方による相違が指摘されており、効果的な連携が行われない場合、結果として発達障害児の行動問題の重篤化が予想される。教師と保護者の連携方法が明らかにされれば、発達障害児の行動問題を最小限に止め、発達障害児のQOL向上にも貢献することが考えられる。さらに連携の際には、個別の指導計画など視覚的なツールの活用が有効と示唆された。第3章では、本研究の目的を示した。本研究の主要な目的の1つは、行動問題を示す発達障害児をもつ保護者と教師の効果的な連携方法を検討することであった。また、主要な目的の2つ目は、それらの連携の効果を挙げるための視覚的なツールを作成し、その効果を検討することであった。  第4章は、研究1-1と研究1-2から構成された。研究1-1では、対象児は学校場面と家庭場面で同様な行動問題を示し、教師と保護者の対象児に対するニーズはほぼ同様と考えられる事例が検討された。学校で日常的に行っている連携方法、すなわち、保護者に対しては連絡帳、電話、定期的な懇談会、対象児に対しては実態把握に基づいた指導・支援の展開により、保護者と教師の効果的な連携が可能か否かを検討した。その結果、対象児の行動問題は学校場面だけではなく家庭場面においても低減した。さらに、両場面で適応行動が見られ、保護者からは指導・支援に対する高い評価が得られた。この結果から、教師と保護者の対象児へのニーズがほぼ同様の事例では、対象児の実態把握に基づいた指導・支援を行い、教師と保護者による定期的な連携が重要であると示唆された。研究1-2では、教師と保護者の対象児に対するニーズが異なる事例として検討された。対象児の実態把握をした上で、保護者のニーズを反映させた指導・支援を行った。さらに、個別の指導計画をもとにした協議を定期的に行った。その結果、対象児の学校場面における行動問題は低減し、学校場面だけではなく家庭場面でも適応行動が見られた。この結果から、教師と保護者の対象児へのニーズが異なる事例では、対象児の実態把握に基づいた指導・支援に保護者のニーズを反映させることと、教師と保護者が個別の指導計画を活用して定期的に協議を行うことが重要であると示唆された。これらの研究から、教師と保護者が効果的な連携を行うために、(1)対象児の実態把握を行った上で保護者のニーズを指導・支援に反映させ、(2)定期的に個別の指導計画をもとにした協議が重要であると示唆された。しかしながら検討課題として、支援者と保護者のニーズが一致した事例で、指導場面では標的活動が自発しても家庭場面には般化しない場合が挙げられた。この事例から、連携の際には保護者の負担やストレスなどの観点から検討し、学校場面だけではなく家庭場面における対応を考慮する必要性が考えられた。また、教師と保護者の協議が重要なポイントと考えられた。 そのため、第5章(研究2)では、家庭場面で実施された研究論文をもとにメタ分析を行い、協議を効果的に進めたり、客観性を高めたりするための観点を検討した。その結果、標的行動と支援手続きを決定する際の協議が、家庭文脈に適合した支援を提供するためのポイントになることが示唆された。標的行動を選定する際には、「緊急性」「保護者のストレス」「本人への危険性」「他者への危険性」「頻度」「従 事時間」の6観点から判断することが重要とされた。また、支援手続きを決定する際には、支援者が支援手続きの「メリット」「デメリット」「予想される結果」を保護者に提示し、保護者は支援手続きの「取り組みやすさ」「効果」「ライフスタイル」「価値観」「継続性」の5観点から判断することが重要とされた。  第6章は、研究3、研究4及び研究5で構成された。研究3では、研究2で得られた知見をもとに、連携の際に必要と思われる「協議ツール」を作成した。大学の相談機関に来所して、小学校特別支援学級に在籍し行動問題を示す自閉症児の保護者と「協議ツール」を適用して、その効果を検討した。その結果、対象児の行動問題は低減して、家庭文脈に適合した支援が提供された。また、「協議ツール」の効果が示唆された。研究4では、特別支援学校小学部に在籍し、行動問題を示す自閉症児をもつ保護者と教師が、日常的に教師と保護者間で活用している連絡帳に「協議ツール」を挟んで連携を行うことにより、対象児の行動問題が低減し家庭文脈に適合した支援が提供できるか否かを検討した。さらに、家庭文脈に適合した支援を提供できた後、「協議ツール」を使用せずに、定期的な記録のみ、あるいは、記録なしでも保護者による支援行動が維持するか否かを検討した。その結果、対象児の家庭場面における行動問題は低減し、家庭場面に適合した支援が提供され、家庭文脈に適合した支援後は記録の有無に関わらず、保護者による支援行動は維持した。研究5では、研究2~研究4で得られた知見をもとに、マニュアルブックとして、「協議ツール」を解説した連携方法の手続きを冊子にまとめた。特別支援学校に在籍する発達障害児3名のそれぞれの保護者3名と担任教師の3名がマニュアルブックに沿った連携を行い、その効果を検討した。その結果、対象児の3名中2名の行動問題は低減し、家庭文脈に適合した支援が提供された。対象児の3名中1名では、支援計画立案時に行動問題はすでに低減しており、それ以降の支援は提供されなかった。この結果から、担任教師の2名は機能的アセスメントに基づいた支援を提供できたこと、家庭文脈に適合した支援が可能か否かは教師と保護者の強化随伴性に依存することが示唆された。今後の課題として、負担のない記録方法やマニュアルブックに加筆する内容検討の必要性が示唆された。  第7章では総合考察を行い、本研究の成果として、保護者と教師の効果的な連携方法、「協議ツール」が開発されたことを挙げた。また、保護者と教師の「協議ツール」を活用した連携方法の過程について言及を行った。さらに、「協議ツール」を活用した連携時の留意点を述べ、今後の課題と展望として、対象児と保護者の実態の相違による効果的な連携方法、他機関間における「協議ツール」の活用、適応行動の増加を目指した連携方法の視点から検討を行った。
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