学術雑誌論文 エジプト企業のイノベーションと生産性の規定要因 : 世界銀行企業データの分析より

王, 皓莹  ,  廖, 舒忻  ,  丁, 建平  ,  濱岡, 豊

59 ( 2 )  , pp.51 - 73 , 2016-6 , 慶應義塾大学出版会
ISSN:0544571X
内容記述
資料
本研究は, 人的資本, 女性の社会進出, 賄賂, 輸出, イノベーションという観点から途上国を対象として行われてきた研究を中心に概観し, 仮説を設定した。設定した仮説群を世銀のエジプトにおける企業パネルデータを用いて検定した。人的資本に関して, 従業員の平均教育年数, トップマネジメントの学歴については生産性やイノベーションの発生に対して, 一部を除いて有意とならなかった。一方で, トップマネジメントの業界における経験, 従業員へのR&D教育の実施はそれぞれ生産性やイノベーションの発生に寄与していた。このことは, 入社前の学歴よりも, 入社の後の経験や教育によって, 生産性やイノベーションの成果を向上できることを意味する。女性の社会進出に関して設定した仮説はすべて棄却された。これは, 調査対象がメーカー中心であり, 「フルタイム従業員」に占める女性の割合が7.8%, トップが女性の企業も5.5%と, その割合が低いためではないかと考えられる。賄賂に関しては, 「賄賂金額が売上に占める割合(0.6%)」は高くはないが, 「政府とのビジネスのうち, 12%程度の取引で支払われていた」のように行われていた。賄賂には競争よりは, 政治・政策などの不確実性が影響し, さらに賄賂と企業のイノベーションには負の相関があることが示された。7項目のイノベーションのうち, 「新製品20.2%」「新しいマーケティング手法18.0%」は比較的高いのに対して, 「新しいロジスティックス8.6%」などは低くなっていた。これらを確認的因子分析することによって, 「製品&製造プロセス・イノベーション」「ビジネス&マーケティング・イノベーション」の2つの因子を抽出できた。これらイノベーションの発生に関しては, R&D活動, 情報化などの促進要因とあわせて, 世銀データの特徴である, 経営環境の不確実性, 資源の制約など阻害要因についても仮説を設定した。これらは負の相関を想定したが, 「外部資金へのアクセスの困難さ」「(政治・規制などの)不確実性因子」「停電の割合」は, それとは逆に正で有意となった。これは, 外部資金を調達したり, 不確実性に直面したときにより能動的に働きかける企業ほど, イノベーションや生産性を高くできるためではないかと考えられる。先進国の場合, イノベーティブな製品を輸出するというパスが重視されるが, 途上国の場合は, これとは逆に, 輸出するために輸出先の水準に製品を改良するという逆の視点が提供されていた。実証結果も, このことを支持した。

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