学術雑誌論文 女性の結婚・出産・就業の制約要因と諸対策の効果検証 : 家計パネル調査によるワーク・ライフ・バランス分析

樋口, 美雄  ,  坂本, 和靖  ,  萩原, 里紗

58 ( 6 )  , pp.29 - 57 , 2016-2 , 慶應義塾大学出版会
ISSN:0544571X
内容記述
論文挿表
本稿では, 女性の結婚や出産, 就業行動に対して, 経済的制約, 時間的制約がどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的に, 個人を追跡した各種のパネルデータを使って分析を行った。その結果, 以下のことがわかった。(1)大卒で親と同居している女性の婚姻率は高く, さらには時間当たり賃金率の高い就業者のほうが婚姻率は高く, 正社員に限定すると, 通勤時間の短い女性のほうが結婚していることがわかった。(2)結婚後の継続就業率を見ると, 夫の所得が低く, 本人の時間当たり賃金率が高く学歴の高い女性のほうが継続就業率は高く, また育休の取りやすい企業に勤めている人のほうが, 結婚後においても継続就業率は高い。(3)出産については, もともと休日における夫の家事・育児時間の長い世帯において子どもを出産している女性は多い。(4)出産後の継続就業率を見ると, 夫の所得の高い世帯において妻の継続就業率は低く, 本人の時間当たり賃金率の高いほうが妻の継続就業率は高い。また正規労働者に限定すると労働時間が長かった者の継続就業率は低く, 通勤時間が長いとますます継続就業率は低くなっている。そして育児休業制度の利用しやすい企業, さらには幼児数に対し保育所定員の多い地域では, 継続就業率は高くなっている。(5)出産を機に企業を辞めた女性の再就職率を分析した結果では, 夫の家事・育児時間が長い世帯のほうが妻は早く再就職しており, 短大・高専卒者や夫の年収の高い世帯のほうが妻の再就職率は低いことが確認された。さらに女性の出生コーホートごとの違いに着目し分析すると, 上述したような経済的要因や時間的制約要因, さらにはそれらを支援する各種施策に変化がないとしても, 若いコーホートのほうが婚姻率は有意に下がる傾向が見てとれ, 結婚後の継続就業率は逆に高まる傾向にある。ただし, 出生について見ると, 30代前半からの出生率の上昇を反映し, 他の要因が同じであるとすると, 若いコーホートのほうが出生率は高まる傾向が確認される一方, 出産後の継続就業率は正規の場合, 有意に上昇する傾向があるのに対し, 非正規では逆に低下する動きが確認された。今後, コーホート間の違いがなぜ発生しているか, 結婚や出産, 就業の希望に与える変化要因, 特に学校教育や家庭環境, 社会環境との関わりについて検討していく必要がある。

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