Journal Article 雇用制度の産業間比較 : 雇用制度の違いは存在するか?

八代, 充史

58 ( 5 )  , pp.35 - 46 , 2015-12 , 慶應義塾大学出版会
ISSN:0544571X
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論文
日本の雇用制度の将来像については, これまで多くの研究が行われているが, その多くは総体として日本的雇用制度の存続の可否を論じていた。しかし今後必要なのは, こうした総論もさることながら, 産業毎に雇用制度のありようを論じた各論である。本報告では, 自動車産業の聴き取り調査の結果であり, 従業員層の中でも特に事務系ホワイトカラーを対象としている。自動車産業は, 伝統的に日本的雇用制度が優位性を持つとされる産業であるが, 業界産業全体が激しい国際競争にさらされており, また純粋な日本企業から外資系と資本提携している企業, 資本提携を解消した企業など様々で, 金融業と比較するうえで相応しい業種であると言えるだろう。事例調査の結果, 昇進管理と賞与制度の業績連動部分が資本国籍要因と関連が強く, 外資の出資比率の高いE社では早ければ20歳代で部長に昇進している。他方日系は課長昇進の最短は35~36歳, 賞与の個人業績連動部分はそれほど大きくないことが窺われる。「元外資」であるD社は, 昇進年齢については「純日系」よりは若干早いが賞与の個人業績連動部分は明らかに日系よりも大きく, 日系と外資の中間に位置すると考えられる。他方業種要因に関しては, 金融業と自動車産業で明確な差は見られない。他方雇用制度内部の制度的補完性に関しては, 新規学卒採用が中心である日系では昇進格差や賞与の個人業績による格差は大きくない。これに対して新卒依存度の低いD社では両者とも高くなっており, 雇用の入り口が内部の管理と密接に関係していることが窺われる。尤もC社は労働力の給源は殆ど新規学卒者だが, 賞与の個人連動部分は大きくなっている。

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