学位論文 Ti-Ta-Sn合金の生体材料としての適合性に関する研究

三木, 将仁

内容記述
主指導教員 : 森田眞史
第1章 序 論 11.1 金属系生体材料に求められる特性 11.2 金属系生体材料に用いられる主な材料 51.2.1 SUS316L 51.2.2 Co-Cr 合金 51.2.3 Ti-6Al-4V 合金 51.2.4 Ni-Ti 合金 61.2.5 Pt 合金 61.3 Ti-Ta-Sn 合金の機械的特性の生体材料としての有用性 61.3.1 材料の機械特性に及ぼす熱処理の影響評価試験 61.3.2 画像診断への影響評価試験 91.4 本研究の目的 171.5 本論文の構成 18第2章 Ti-Ta-Sn 合金のアノード分極試験による耐食性評価 202.1 諸 言 202.2 実験方法 222.2.1 試料 222.2.2 分極試験方法 252.3 実験結果 292.4 考察 332.5 結言 37第3章 培養細胞を用いたTi-Ta-Sn 合金の生体親和性の評価 403.1 諸 言 403.2 実験方法 413.2.1 滅菌方法 413.2.2 使用した細胞 443.2.3 測定方法 443.2.4 擬似体液中における金属イオン溶出量 493.2.5 金属腐食溶液による細胞毒性試験 503.2.6 細胞初期付着試験および増殖試験 523.2.7 コロニー形成試験(直接接触法) 543.3 実験結果および考察 553.3.1 LDH 測定実験時の最適な細胞濃度 553.3.2 疑似体液中による金属イオン溶出量 563.3.3 金属腐食溶液による細胞毒性試験 583.3.4 細胞初期付着試験および増殖試験 613.3.5 コロニー形成試験 643.4 結言 65第4章 成熟家兎大腿骨に埋埴したTi-Ta-Sn 合金の非脱灰標本による骨親和性評価 684.1 諸 言 684.2 実験方法 694.2.1 実験試料 694.2.2 骨標識方法 714.2.3 非脱灰標本の作製方法 744.2.4 骨石灰化速度の算出方法 754.2.5 骨代謝能の評価 764.3 実験結果および考察 774.3.1 骨非脱灰組織の顕微鏡観察について 774.3.2 金属イオンの取込みについて 844.3.3 金属材料の骨刺激性(代謝反応に与える影響) 864.4 結言 88第5章 Ti-Ta-Sn 合金のガイドワイヤーとしての角度・トルク伝達特性 915.1 諸 言 915.2 実験方法 925.2.1 供試材料 925.2.2 模擬血管回路 935.2.3 3 点曲げ試験 945.2.4 回転角度追従性とトルク伝達性 945.3 実験結果および考察 965.3.1 3 点曲げ試験 965.3.2 回転角度追従性 975.3.3 トルク伝達性 1005.4 結言 105第6章 結 論 107謝 辞 112著者論文目録 113
 Ti およびTi 合金は軽量,高強度,非磁性,耐食性,低アレルギー性など優れた特性を有しているため,生体材料としては,主に力学的な強度および延性が要求される部位や,骨との長期間の密着が想定される部位への応用がなされている.しかし,現在主に金属系生体材料として使用されているTi-6Al-4V は,生体に対して毒性を示すとされるV やAl を含むため,同合金の生体に対する安全性が危惧されている.また,Ni-Ti は,形状記憶効果や超弾性,低ヤング率などの機械的性質を有することから,ステントやガイドワイヤー,歯列矯正ワイヤーなどに使用されている.しかし, Ni 含有量が高く,アレルギー反応を起こすことが懸念されている.そのため,Ni フリーの金属系生体材料の開発が求められている.すでに欧米ではNi を含有しないことが,商品化する際の強みとなっている. 我々が新たに開発したTi-Ta-Sn 合金は,Ni,V,Al フリーのβ型チタン形状記憶合金である.変態温度が423 K と高く,常温では超弾性を示さないが,熱処理の適正化により高強度,低ヤング率,高弾性ひずみ限界を得ることができる.また,非磁性であり,X 線視認性にも優れている. 本研究は,Ti-Ta-Sn 合金の金属系生体材料としての有用性を確認することを目的に,耐食性,細胞親和性,骨親和性,優れた機械的特性を利用したガイドワイヤー芯材としての評価を行った. 耐食性については,Ti-Ta-Sn 合金の原子比率や熱処理の有無,細線加工およびコイル加工による耐食性への影響を調べるために,リン酸緩衝生理食塩水PBS(-)中における電気化学的腐食挙動をアノード分極試験により評価した.その結果,Ti-Ta-Sn 合金の自然浸漬電位は,Pt-W よりは卑なものの,Ni-Ti 等他の生体材料よりは貴な値であった.また,過不動態溶解開始電位はTi-Ta-Sn 合金が最も貴な値であり,Ti-Ta-Sn 合金は不動態膜破壊後もすぐに再不動態化することが確認できた.原子比率の違いおよび熱処理の有無による分極曲線では,大きな差異は確認されなかった.また,細線化およびコイル加工による耐食性の低下は確認されなかった.これらのことから,Ti-Ta-Sn 合金は,体内環境を模擬したPBS(-)溶液中での耐食性に優れていることが確認された. 金属系生体材料として使用されているSUS316L やCo-Cr-Mo 合金,Ti 合金は,表面が酸化皮膜で覆われているため,酸化皮膜が破壊されなければ腐食は生じない.しかし,機械的な損傷である摺動部の摩耗や,フレッティング疲労による摩耗粉の発生,酸化皮膜の破壊,また,マクロファージの産生した活性酸素による腐食など生体内では様々な現象が起き金属イオンが溶出する.そこで,金属系生体材料の構成元素の金属粉末を用いて,疑似体液中における金属イオン溶出試験と生体内で金属材料から金属イオンが大量に溶出した際の細胞への影響をin vitro 試験により評価した.また,細胞が金属表面で増殖するための第一段階は,細胞初期付着であり,細胞増殖速度は,細胞が金属表面に定着後どの様な増殖をするのかという,生体適合性を評価する上で重要なパラメーターである.さらに,金属表面に付着した細胞は,増殖してコロニーを形成する.コロニー形成状況は,インプラント表面での細胞増殖の状態を現すため,これらについても,細胞を用いたin vitro 試験を実施した.その結果,Ti-Ta-Sn 合金は細胞レベルでの生体適合性が高いことが確認された. また,骨親和性については,Ti-Ta-Sn 合金の骨親和性を評価するために,日本白色家兎大腿骨の非脱灰標本を作製して,金属プレートの埋埴期間および材料の違いによる骨組織反応について評価した.その結果,Ti-Ta-Sn 合金とNi-Ti 共に埋埴初期の1 ヶ月では,プレート周囲に結合組織の膜が形成されていたが,3,6 ヶ月では結合組織の膜は消失し,プレートと骨が直接接触していた.金属イオンの溶出は,Ti-Ta-Sn 合金とNi-Ti 共にEDX では確認されなかった.これらのことから,Ti-Ta-Sn 合金は骨との結合性に優れていることが確認された. さらに,ガイドワイヤーとしての有用性を確認するために,模擬血管での回転角度追従性とトルク伝達性をステンレス鋼・Ni-Ti 製の市販品ガイドワイヤーとTi-Ta-Sn 合金を芯材ベースで比較した.その結果,Ti-Ta-Sn 合金は回転角度追従性が市販品ガイドワイヤー芯材よりも高く,損失トルクが最も小さいことが確認された. 本研究で得られた知見は,新たに開発したTi-Ta-Sn 合金の金属系生体材料としての可能性を示す,基礎的役割を果たすと考えられる.
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http://sucra.saitama-u.ac.jp/modules/xoonips/download.php?id=GD0000762

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