テクニカルレポート 医療法人の事業報告書等を活用した「医療経済実態」把握の有用性 : 既存の公的類似調査の適切な補完

荒井, 耕

2017-08 , Graduate School of Commerce and Management, Hitotsubashi University
内容記述
医療法人が各都道府県等に毎期提出している財務諸表を含む事業報告書等を活用して医療経済の実態を把握することにより、中央社会保険医療協議会による『医療経済実態調査』などの既存の公的類似調査を適切に補完することが可能であることを明らかにした。『医療経済実態調査』は、現在、その実態把握の精度を高めることが課題となっているほか、いくつかの限界も抱えており、その調査を補完する方法が期待されている。 具体的には、事業報告書等を活用して損益実態を把握することにより、少なくとも以下の各点において、既存調査を適切に補完できることを示した。 ① 財団・社団持分無し・社団持分有りという法人区分(3群間に有意差有り)や、社会医療法人・出資額限度法人・特定医療法人・その他法人という法人区分(4群間に有意差有り)の別に、損益実態を明らかにできる。 ② 都道府県別(本来業務事業利益率には有意差有り)の損益実態を明らかにできる。 ③ (1)病院のみ経営、(2)病院と診療所を経営、(3)病院と老健を経営、(4)病院と診療所と老健を経営、のいわば多角経営類型を異にする法人別(4類型間に有意差有り)に損益実態を明らかにできる。また、これら4類型の附帯業務実施の有無別(一部有意差有り)の損益実態も明らかにできる。加えて、多角経営4類型ごとに、規模別や地域別や病床種類類型別の損益実態(類型ごとに異なることが判明)も明らかにできる。 ④ 規模別や地域別や病床種類類型別の損益実態を、既存調査よりも格段に多い客体数(かつ基本的に回答バイアス無しに)で明らかにできる。 ⑤ 診療報酬改定の厳密な影響評価に不可欠な、3月末決算法人に限定した損益実態(限定の有無により大きな差が出うることが判明)を明らかにできる。 ⑥ 複数回の改定を跨る中長期的な観点からの診療報酬政策の評価に不可欠な、中長期の経年的な損益実態の推移を明らかにできる。 ⑦ 経営的持続可能性の考慮に際して重要な、経営体としての法人単位での損益実態を明らかにできる。 ⑧ 精神科病院についても、医療法人群を独立区分として損益実態を明らかにできる。 本稿により、地域医療の中心的な担い手である医療法人の経営的持続可能性(損益実態)をきめ細やかに考慮した診療報酬政策を実現する上での財務情報基盤の整備が進むことが期待される。
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http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/28758/1/070cmWP_146.pdf

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