学術雑誌論文 アリストテレスの経済思想再考
The Aristotelian Theory of Economic Justice Revisited

伊藤, 邦武

67 ( 2 )  , pp.134 - 146 , 2016-04-22 , 岩波書店
ISSN:00229733
NII書誌ID(NCID):AA11823043
内容記述
アリストテレスの経済思想を,その代表的なテキストである『ニコマコス倫理学』と『政治論』の議論から検討する.彼の「交換的正義」の議論は次のように要約される.さまざまな商品には,それ自身の使用価値が内属しているが,この価値は互いに非通約的である.商品は他方,交換価値にかんして通約的となるが,この価値の基準となるのはそれらの「必要性」である.この必要性を量的に比較するための媒体となるために,貨幣が約束によって成立している――.この説にかんして問題になるのは「必要」という概念の意味と,それを媒介する貨幣が「約束」にもとづいて成立するということの意味である.前者の必要概念についてはこれまでの解釈において主として三つの理解が提出されており,近年ではこれを「その財を分配する者の社会における地位に従った必要」とする理解が有力となっている.しかし,後者の「約束」の意味についは必ずしも共有された解釈がない.本論ではこの意味の理解のために,後のヒュームがその道徳論で提起した「合意」論を活用するべきだと論じる.
Aristotle develops his theoryof economic justice in Nicomachean Ethics and Politics. The theoryis interesting because his discussion of economic justice is connected to his larger concern about the relationship between the commensurable and incommensurable. Commodities are mutually incommensurable from the viewpoint of their use value but commensurable from that of exchange value. Theyare reduced to be mutuallycommensurable on the basis of "need (chreia)". The medium of this quantitative comparison is money, which is introduced by "convention (hypothesis)". There have been various interpretations concerning the meaning of "need", but little discussion about the meaning of "convention". I propose in this paper that Hume's analysis of convention in The Treatise of Human Nature could be profitably made use of for understanding the Aristotelian idea of convention.

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