Technical Report ゼロ金利下における日本の信用創造

塩路, 悦朗

2015-09 , Institute of Economic Research, Hitotsubashi University
Description
本研究は名目金利が下限に達した下での日本の銀行行動、特に貸出行動を実証的に分析する。日本は他国に先駆けて、金利に引き下げ余地がない下でマネタリーベースの量を拡大する政策を採用してきた。しかしそれに反応してマネーストックが増加した形跡はほとんど見られない。すなわち信用創造過程は弱体化し、貨幣乗数(限界的な意味での)は消失したかに見える。このことはマクロ経済学の標準的理論とも整合的である。しかしながら、議論の余地はあるものの、これらの政策は生産や物価などに一定の効果を及ぼしてきたと見られる。その源泉は何だろうか。本研究は貨幣乗数が実は完全にゼロになってしまったわけではなく、マネタリーベースの大量供給がわずかながらマネーストックの増加に寄与してきた可能性を追求する。本研究では個別銀行の財務諸表を基にパネルデータを構築し、「前期末時点でより多くの超過準備を抱えていた銀行ほど、今期中に貸出を増加させる傾向があるか」を検証する。その結果、ゼロ金利のもとでそのような傾向が平均的に観察されることが示される。さらに検討してみると、この傾向に関しては銀行間で異質性が認められた。すなわち、超過準備に貸出が反応する傾向は不良債権を多く抱えている銀行ほど強く、また業態によっても差異が認められる。よって、近年のマネタリーベースの急激な増加は銀行部門全体を通してと言うよりも、その一部を通じて信用創造過程に流れ出している可能性が示唆される。
Full-Text

http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/27494/1/dp15-8.pdf

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