紀要論文 近年の「エコ住宅」地域普及動向に関する一考察―推進組織体制の観点から―
A Study on Recent Trends toward the Regional Popularization of "Eco-house" : From the Viewpoint of the Propelling Organizational System

塚本, 善弘  ,  TSUKAMOTO, Yoshihiro

96pp.115 - 134 , 2015-06-01 , 岩手大学人文社会科学部
ISSN:0385-4183
NII書誌ID(NCID):AN00000256
内容記述
 2011年3月の東日本大震災以降,電力供給への懸念が高まり,家庭での省エネルギー対策や太陽光発電システムに代表される再生可能エネルギー利用・省エネルギー(エコ)設備・機器等の導入必要性が盛んに叫ばれ,家庭生活レベルでも以前に比べ,省エネルギー・節電意識は高まっていると言われる1)。 しかし,震災前からエネルギー消費増に伴い増加傾向にあった温室効果ガス排出量―2010年度時点で,大半を占める二酸化炭素(CO2)が1990年比4.2%増―は,12年度にCO2が同11.5%増となるなど,減少する兆しが見られず,特に家庭部門のCO2排出量(10年度時点の同34.8%増が、2年度は同59.7%増)の伸びが顕著となっている(環境省編,2012:155,同,2014:154)。これは,日常生活を送る中で,各家庭で比較的容易に出来る小まめな省エネ・節電行動・対策は震災後に浸透してきたものの,導入(初期)費用の高さがネックとなり,エコ設備・機器導入が円滑に進んでいないことや,家庭からのエネルギー消費大幅減に資する高断熱・高気密の「エコ(省エネ)住宅」の普及が,未だ不十分なままであることを表していよう。 確かに05年当時,国内5,300万戸余りの住宅のうち,国の「次世代省エネルギー基準」(1999年基準)を満たしているのは僅か3%しか無いと指摘され(無断熱が38%;槌屋,2013:23),住宅のエコ化が地球温暖化対策にあたっての重要課題となってきた。09~11年度にかけての「住宅版エコポイント」制度実施や住宅性能表示制度の充実・普及,13年10月の「改正省エネ法」施行に伴う住宅の「改正省エネルギー基準」(2013年基準)の2020年義務化(実質的には99年基準の新築住宅への適合義務付け)をはじめ,省エネ性能の高い住宅の建築促進が国レベルの住宅政策としても図られ,11年度時点で,新築住宅に占める99年基準適合率が5~6割まで上昇する(国による住宅エコポイント発行戸数による推計値)など,00年代後半~10年代前半にかけ,新築を中心に「エコ住宅」は増加傾向にある(国土交通省住宅局住宅生産課,2012,松井,2014:39など)。しかし,断熱・気密性能が高く99年基準に適合している住宅の割合は,住宅研究者の間でも長年,“ブラックボックス”と化し,自治体を含む行政機関が示してきたデータも正確性を欠くと言われてきた2)。実際,筆者が13年度後半~14年度にかけ行ってきたインタビュー調査の中でも,国内各地の「エコ住宅」普及関係者の間から,地域全体的な新築住宅に占める99年基準適合率が近年でも,上記の国推計値以下となっているのではないかとの見解が聞かれた地域や,“99年基準は最低限の性能であり,それを上回る高性能な「エコ住宅」の普及が必要”3),“住宅の「省エネ性能」=光熱費の削減のことと考えてる消費者が少なくない”といった意見も多数聞かれ4),「エコ住宅」普及は必ずしも順調に進んでおらず,中古(既存)住宅の改修(リフォーム)を含む住まいのエコ化が,国内の温暖化対策促進のネックになったままと言える。 こうした「エコ住宅」の地域への普及にあたっては,主に08~10年度にかけての本州・寒冷地(県)での調査結果を踏まえ,本誌第87号,及び第89号所収論文(塚本,2010,同,2011)で論じたように,共通の課題として,①住まい手である一般市民・消費者への普及啓発(情報提供・意識啓発),②地場,中小建築業者・設計者(地域ビルダー)の育成・技術力(施工・設計能力)向上,③割高な建築・導入費用の負担軽減が挙げられ―以前から「エコ住宅」普及の最大の障害として,住まい手にとってのコスト負担の多さが強調されてきたが,それ以外にも大きな課題があることが明確に―,各地の行政機関や環境NPO,住宅建築関連事業者団体等が,00年代半ば,ないし後半頃から,「エコ住宅」に対し人びとが抱く興味・利害関心の多様性に配慮した,普及への様々な取り組み・施策(事業)に着手し,“見える化”手法も重視しながら行ってきた。特に先進的な取り組み・施策が実施されている地域では,地方行政や環境NPO,住宅関連事業者・団体,(主に地元の)大学専門研究者等の関係主体間の連携・協働体制に基づく取り組みが見られていた。しかし,寒冷地以外の地域も含めた(既に高性能「エコ住宅」が普及している北海道を除く国内各地での)11年度(大震災)以降の動向を検討すると,上記課題は決して解消されておらず,関係主体間連携を基にした地域的取り組みは,むしろ“停滞”しているとさえ言える状況にある。 本稿では,こうした「エコ住宅」地域普及に向けた近年の動向のうち,前稿(塚本,2011)で扱えなかった地域や11年度以降の実情を中心に,主に各地での普及に向けた推進組織体制の観点から,“停滞”の背景と今後のあり方を考察することにしたい5)。なお,上記・「エコ住宅」普及への主要3課題の解決を目指した具体的方策,各地での近年の取り組み内容の詳細については,紙幅等の関係上,別稿で分析する予定である。
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