紀要論文 Narrator Interventions in Philostratus’ Apollonius
ピロストラトス『テュアナのアポッローニオス』における語り手の物語介入について

Katsumata, Yasuhiro  ,  勝又, 泰洋

1pp.79 - 90 , 2017-05-31 , ギリシア・ローマ神話学研究会 , The Society for Greek and Roman Mythology , ギリシア ローマ シンワガク ケンキュウカイ
ISSN:24333964
NII書誌ID(NCID):AA1279576X 
内容記述
本論文の目的は、ピロストラトス(後170~249 頃)の虚構の伝記『テュアナのアポッローニオス』における一人称の語り手が、自らの物語のなかに「私」として介入する仕方とその機能を明らかにすることである。『アポッローニオス』は、ピュータゴラース派の哲学者アポッローニオスの世界旅行の様子を描いた作品である。本作序論部において、語り手は、自らの物語が、アポッローニオスの旅行に随伴した男ダミスによって作成された文書の「書き換え」(μεταγράψαι)バージョンである旨、読み手に説明をする(1. 3)。研究者たちは、このメタナラティブ的枠組を、当時流行した「文書捏造」(英語で‘pseudo-documentarism’と呼ばれ、実際には存在しない文書がでっち上げられ、作品はその文書の記述に基づく、とする創作テクニックのこと)のひとつととらえ、これが本作品の虚構性にかんして重要な意味を有していることを指摘する。筆者もこの見方に異論はないものの、これのみで探究を切り上げてしまっては、本作にまだまだ多く張り巡らされているはずの複雑な仕掛けを見逃すことになってしまうと考えている。そこで本論文では、上でも触れた本作のキーである動詞μεταγράφω(「書き換える」)の具体相を把握するという意図のもと、その「書き換え」の仕事に従事する語り手「私」が、物語中で自らをどのように登場させているのか探っていく。筆者の分類法にしたがえば、語り手による物語介入のタイミングには三つの種類がある。すなわち、①「ダミス文書」以外の情報源に言及するとき、②自らの語りの手続きにコメントを加えるとき、③特定の主題について自分の意見を述べるとき、である。本論文の主たる作業は、以上のごとく三種類存在する語り手の物語介入の具体例をひとつひとつ丁寧に見ていくことである。そこから浮かび上がる語り手の像は決して単純なも135のではないが、少なくとも言えるのは、語り手は、「ダミス文書」の大人しい筆写人ではなく、方々で出しゃばるずうずうしい編集人だ、ということである。これが、μεταγράφω という語によってあらわされた事柄のひとつであると結論づけたい。
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http://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/66984/sgk_01_079.pdf

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