テクニカルレポート リスク下における不作為バイアスと新興国展開の停滞 : 日本企業の経営層と現場の情報断絶

藤田, 法子

17-24pp.1 - 23 , 2017-07 , Graduate School of Economics and Osaka School of International Public Policy (OSIPP) Osaka University
内容記述
本稿は、日本企業の新興国市場戦略における課題について、コクヨのグローバル展開の事例と日本企業に対するアンケートやインタビュー調査などから、新たな視点を提供することを目的とする。先進国経済の低成長傾向や少子高齢化に伴う日本市場の長期的な縮小均衡などの懸念から、新興国市場への期待が高まり、特にリーマンショック以降は新興国中間層への関心が高まった。しかし、日本企業の新興国中間層への取り組みは苦戦しており、経営資源の観点から本国市場と連続性が高いと期待される富裕層戦略へと回帰している。この背景には、いわゆる「新興国のジレンマ」や現地市場を正しく認識することの難しさに加え、特にリスクが強く意識される場合には、経営判断において不作為バイアスが働いていることがあると考えられる。経営者と現場担当者との間で市場に対する認識ギャップが拡大し、資源配分の意思決定が阻害されることにより、試行錯誤を通じた新たな市場の認知とそれへの対応という創発の循環に入ることが困難になっている可能性がある。新興国市場での取り組みは、新興国市場の現状と将来の可能性に対する正しい認識と、現地適用まで実験・探索・失敗を繰り返しながら実地経験という知識を蓄積することが必要である。これら現場の知識を十分に汲み上げた経営判断を行うためには、意思決定論的観点からバイアス解消を意識した体制づくりが重要であることを指摘する。

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